秘密を教える2
「ランス君、魔法はどうやって上げるの?」
「それを使って慣れたら上がります。魔力の扱いがうまければ、ドンドン上がっていくでしょうね。その魔法の使い方を正確に理解していればいいので。1つの属性魔法をひたすらあげるのもいいでしょうし、複数の属性魔法をあげるのもいいでしょう。使って慣れるしかないと思っています」
「生活魔法はどうやってあげたの?使ったことがあるけど、レベルが上がるようには思えないわ」
「普通の魔法はスキルの補正があるので、その違和を感じられればレベルは簡単に上がるのです。生活魔法はその補正がありません。なので、自分で試行錯誤しながら魔力の量や制御、変質するイメージまでをどうすればいいか見つけていかないといけない。それに普通の魔法と違って属性がまとまっているので、一気に属性魔法をあげる感覚になります。なので、属性魔法のあげる感覚で練習しても上がりませんし、4属性の全てが、ある一定になると上がるような感じがしています。僕もレベル7で止まっていますので、もしかしたら上位魔法系か光と闇も取り入れないといけないのかなと。今までは4属性でよかったので、それだけで上がると予想しているのです」
「1つしか使わないと永遠に上がらないってことね。それでかも」
「生活で使いそうなのは火と水が中心になると思うので、他の属性も使うというのがあまりないと思いますので、しかたないですよ。あと生活魔法には秘密の効力があるのですよ。これはグリじいが生活魔法をあげて発見したことなのですけれど、なんと普通の魔法のレベルがプラスされて上がるのです。隠しスキルのような効果があるのです」
そこにいた全員が驚きの声を上げる。
「それはどういうことだね。普通の魔法のレベルにプラスされて上がるというのは?そんなことは聞いたことがない」
「そうでしょうね。グリじいも僕の教育がてら見極めていましたから。隠居してから気がついたのでしょう。生活魔法Lv.3と火属性魔法Lv.3なら威力は火属性魔法Lv.6になります」
「では、魔法の威力がレベル10以上、出せるということか?」
「そうです。レベル上限は10なので理論上は20までの威力が出せることになります。どのくらいの威力になるのかはわかりませんけれど」
新しく知った事実に大人達は言葉を失っているが、お嬢様は立ち上がってこちらに近づいていく。
「妖精には触ってもよろしくて?」
「ダメです」
「なんでですの?このように珍しい存在に触れられないなど、我慢できませんわ」
「お嬢様、妖精とはいえ実体があるのです。下手に触られるとけがをしてしまいます。例えるならオークにお嬢様が触られるような状態と変わりません。オークのように野蛮ではないしょう、ですが力や大きさの差はどうにもなりません。あと妖精が無理矢理と感じたときは呪われますのでご注意ください。呪いは解けるのかは存じかねます」
不満げな様子で見ている。
「なぜ貴方には妖精が近づいてくるのよ」
「普段はいませんよ。今は女王がいるからでしょう。いつもは見えなくなっているはずですから、わからないのです」
「妖精は聖なる森の奥深く、迷いの空間を抜けた先で暮らしていると聞いたのだけど、どうやって来るのよ」
「妖精用の通路があって、そこを通ることで行き来するようです。僕はグリじいのところにいたので聖なる森と呼ばれていた場所に住んでいましたけれど、妖精は普通にいましたよ。人はいませんでしたけれど」
「娘よ、我らは天使に連なる者。天界より、もっとも現世に近い者。天界に最も近い場所で暮らしておれば、天界に近い者と調和するのもまた自然なことよ」
お嬢様は何を考えているのかわからない。ろくでもないことだろう。
「では、聖なる森の奥深くにいれば、妖精達と仲良くなれるのですね。連れて行きなさい」
「連れて行くには僕のように認められてか、グリじいのように微細な魔力をたどってたどり着くか、偶然迷い込むか。認められてはないので、微細な魔力をたどれる者を雇うか。ただし、食料は自給自足。街へ買い物とかはほぼ出来ないので、人の世と隔絶されることでしか、そこにはいられません。そして、何年そこで過ごせば妖精と仲良くなれるのかはわかりません。グリじいが出入りするときは、絶対にやり合いたくない魔物がいるそうなので、討伐できれば行きやすくなるのではないでしょうか?」
「どんな魔物なのよ。騎士団や魔法使いがいればどんな魔物だって大丈夫よ」
「クーシーという大きな犬ですけれどね。緑色の長い毛で目も毛で隠れていて、頭のいい子なのですけれど、むやみに近づく者へ呪いをかけてしまうのとある程度の戦える力がないと突破できないかな。大きい犬なのでなめられるとすぐベトベトになってしまうので困るのですよね」
お嬢様は何やら考え込む。
「クーシーだと?SS級指定魔獣だぞ。俺らなんてすぐに殺されちまう」
「ええ?じゃれついて可愛い子ですよ。そんな物騒な魔獣と一緒にしないでくださいよ」
「天使の祝福などがないと襲うように躾けてあるのよ。ましてランスは妖精王も持っているのに、あの子が襲うはずないでしょう。遊び相手がいなかったからあの子が凄く嬉しそうだったのは認めるけど、ランス以外は全力で追い返すでしょうね。今、天使系の祝福ってランス以外に与えられていないから、じゃれつくとかしないわよ」
「そうだったの?休みの日に一緒に森の中を探検していたのに。他の人には無理だったのは残念だな。追いかけっことか、呪いの掛け合いとか、力比べとかで遊んでたのに」
「ちょ、ちょっと、なんて遊びしているのよ。死んだらどうするのよ」
女王は目の前に慌てて飛んでくる。何か悪いことしていた?
「それはそれで構わないけど。おかげで呪術と呪解が上がったしね」
「あなたね、死んだら普通、生き返れないのよ?わかっているの?」
「妖精王女殿、その手の説教は逆効果じゃから落ち着いてくれんか?」
「ですけど、フェンリル殿。言って聞かせないとずっとこのままですよ?意識を変えないことにはダメでしょう。注意だけはしますよ」
「う、うむ」
気圧されている。ウィットが押されていてちょっと面白い。ズワルトが口を開ける。
「いい修行にはなったのでよかろう。クーシーもやっていいのかどうか迷っていた部分はあったんじゃが、我がなんとかするからよいといったのだ。クーシーも一緒に上がっていたから、ちょうどよかったのではないか?」
「スコル殿、あまり強すぎるとグリゴリイのような者が来られなくなります。故にある程度になっておりますのに」
「クーシーは人を選んで通す。強くなってもそれは変わらぬよ。門番の役目を全うしていると考えれば、よいことだと思うのじゃが」
「門番としては強い方がいいですけど。でも、あんまり危険な修行は反対です」
「大丈夫じゃ、消失しても元に戻す自信はある」
「そういうことではなくて」
自信満々のズワルトに女王はうなだれてしまう。ズワルトのおかげで修行がはかどったね。けがとか骨折とか腕が飛ぶとかあったな。
「クーシーが聖なる森の番人だったとは。その奥にはグリゴリイ殿が住む聖なる森があるのか」
「クーシーを突破できませんの?」
「おそらく、王国騎士団で向かっても、全滅か敗走かですね。教会の聖騎士団の精鋭ならもしやと思いますが、個人の願いでどうこうできる者たちではないです。我々もB級の魔物を退治できる程度で、SS級の前では無駄に死ぬだけだな。なので無理です」
そう説明してるのにこちらを見ている。
「貴方ならなんとか出来るのでしょう?」
「出来るか、出来ないかでいいますと出来ます。ただし、神々の加護のいずれかを持ち合わせていることが最低条件です。ないのなら僕に頼むのは諦めてください。貴族様ならこんな平民が持っているものはお持ちでしょう?」
「それは神がお与えになるのであって、教会であってもどうにもならないのに、それを私に持てと?」
「持てとはいっていません。持っていないのなら出来ないといっているだけです。ここにいる代行達が持っているというのならいいですが、お持ちにならないのなら諦めてください。条件はそれだけですから。お金ではないのです」
悔しそうにイスに戻っていく。取れるか聞かれても知らないけどね。
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