村での生活2

 自然に目が覚めてスープを作る。それを食べてから、一応窓から外を見て警戒する。見える範囲にはいない。探索を使ってもなにも引っかからない。外に出ると家の外周を回り、爪痕と体当たりされたあとを見つけた。爪痕はひっかいただけの痕なのでそのままでもいいか。体当たりされたところは、ヒビが入っている。まずいな、直すとなるとクギがいるぞ。石とかで破られないようにすることは出来るけど、あくまで応急だから。見られてもいいようにするのなら、木を立ててしまえばいいのか。ちょっと奥に入って木を切って、それを4等分して持っていく。それをヒビの入った場所に柵のように土へ突き刺して並べていく。今日は村に行かないつもりなので、弓とナイフを身につけて森へ。売るための肉を狩るために森の中に入っていく。追跡するための跡が見当たらない、正確にはウルフ達のせいでかき消されている。狩りをするのにも困った。自分がどうにかしなくてはいけないので、糧を得るときには困る。気が済んだらどこかに行くかもしれないけど、それまでに村の被害がどの程度になるのやら。探索を使って、動物を探し出す。山の中にいるけど、ウルフ達が追い立ててしまったのか、この近くにはいない。森の奥か山のほうにしかいない。遠出になるから悩んでしまう。森の中でうろうろしながら、食べ物は十分あるから何日かは大丈夫。動物も食べられたくないから逃げてしまうのは当たり前だ。ハイウルフは森の奥にいたから、別方向の山へ行こう。村に通じる川があるんだけど山から流れてきている。山に向かって行くなら川沿いに2日ほど歩いて行けばつく。生活魔法をうまく使えば1日以内につく。森には村の人は近づくことはあまりないけど、中に入って少ししてから使おう。気合いを入れて出発だ。

 森に更に分け入って少しだけ薄暗くなり、奥に進むほどに暗く木々が高くなっていく。ハイウルフの集団は広い範囲の獲物をかりとっているようで、近くの森では動物がいなくなっている。帰ってきて順調に落ち着いて生活出来るはずだったんだけどな。山に行けば人はいないだろうから、採集から狩りまでやりたい放題だ。ふふふふふふふふふふふ。気分が高揚して、森の中を走り出す。森での訓練を思い出しながら走って行く。目から入る風景にニオイ、肌に感じる空気、蹴る土の感触。感じる。気持ちよく走り続けていく。肺に一杯の空気を吸い込んで吐き出す。


 結構、走ってから風の生活魔法を使う。木の上部に飛び上がり蹴り飛ばして、木の上を走り抜ける。枝の間を飛び抜けていく。風でうまくコントロールする。枝に当たって落ちると大けがするので、気を抜けない。そのまま、山の麓まで木の上部を渡り歩いていく。探索。誰もいない。こんなところにまで来るのは物好きか採集依頼の冒険者ぐらいしか来ないはずだと思う。迷い込むことは考えないことにしよう。下に降りて採集できる薬草やキノコ、香草などもとっていく。山の近くだから自分の家の近くと採れるものが違うな。楽しくなってきて、採りまくる。さっきから手元が見えにくい。真っ暗だった。夜になってる。夜行性の魔物もいるから、土の生活魔法で簡易の部屋を作る。硬いけど、ある程度安全に寝られれば十分だから、壁に沿って土を更に圧縮して硬くして安全性を高める。静かな森の中で眠りに落ちる。


 起きると元に戻して採集の続きとウサギを見つけたので仕留めた。弓矢とクギとカギが買えればひとまず安心だ。なのでここにいる間は頑張って仕留めないといけない。採集をある程度すると次は探索を使って狩りをする。クマは弓矢ではさすがにきつい。

 風の生活魔法を刃状にしてクマの首と胴体が離れる。うまくいった。ナイフと水と火魔法で洗浄、内蔵の取り出しと血抜きをおこなう。血抜きは寝かせたまま、動脈に水を入れ込むという力業でおこなう。時間短縮になる。そのまま皮を剥いで食べられる部分を空間倉庫にしまう。土の中に皮や内臓を埋めておく。内臓も食べられるんだけど、ティワズに食べさせられて当たって寝込んだから食べたくない。大物をとったけど、雑貨屋では売れない。鹿までなら売れるだろうけど、クマを捕ってきたとなるとウルフ狩りに1人で行かされそう。村の人のことだからやれたらラッキーぐらいで僕の生死などは気にもしないだろう。ここで買い物が出来るだけの肉を集めておきたい。たまに木の上で川がある方向を確かめる。川をたどれば確実に村に着くので、見失わないようにしている。山を登っていくとこれまた採集ができるものが変わってくるので、楽しくなってしまう。高級ポーション用の薬草が生えてる。貴重なものなのでまた生えるように採っていく。

 狩りよりも採集が中心になってしまう。山を登りながら探索を使う。この辺りには魔物も動物もいないようなので採集だ。10分ぐらい歩いた場所にいるんだけど、いいポーションが作れると思うと採ってしまう。こんな辺境まで来なくてもあるところにはあるので、わざわざこんなところまで来る人はいない。

 不意にお腹が鳴った。夢中になって気がつかなったけど、肉も食べていなければスープも作っていない。木を切って、薪に使えそうな大きさに切り分けておく。それから岩に穴を空けてそこに放り込む。風と火で暖かい風を作って送り込む。多少焦げてもいいや、火傷するくらいの熱い風で一気に乾燥させる。薪が割れるような音がするが気にしない。燃えなければいい。焦げる匂いがしてちょっと風を止めて覗くと表面が茶色くなっているだけだったので続けていく。もっといい方法を考えないと時間がかかってしまう。水だけ取り出せれば、いいんだけど。帰ってからにしよう。かなりの高温だったので表面が黒く焼けている。このくらいやればいいかな?焦げた薪を石鍋の下にくべて火をつける。ちゃんと火がついた。お湯を入れて、具材を鍋の中に。薪をどんどんくべていく。火を大きくして沸騰状態で煮込んでいく。調味料で味を調えて、スープのできあがり。

「うん、おいしい」

 十分に食が進むおいしさである。食べるのを忘れるくらいに夢中になったのは久しぶりだ。初めてポーションを作って、次の採集の時に材料がわかるようになって嬉しくなって夢中になって採っていた。気がついたら夜になっていて、ティワズに引きずって連れて帰られて、グリじいにメチャクチャ怒られた。次からはしないと約束して、それ以降は夜の訓練以外、夜の森の中にいないように気をつけた。夜目がきくから集中しすぎるとわからなくなってしまうので、のめり込みすぎないように周囲にも気を張るようにしている。誰もいないから気にしなくなっているけど、気をつけないと。落ち着いて食事を済ませ、本来の狩りに精を出す。探索もスキルのうちなんだけど、狩りの手伝いで身につくことがあるので使っていいらしい。注意点は魔物は探索を使ったら、使ったその位置がわかるってこと。動物型は特に敏感なのでばれると思った方がいい。返り討ちに出来るのならいいけど、出来ないなら使わない方がいい。逆に探索を使ってもわからないのもいるらしい。森の中にいるのは大体反応するからひっかからないって言われても実感はない。人も来ない森の中にいたんだから、本当に反応しないのかわからない。

 夕暮れが周囲を赤くする。下を見ると森が広がっているので大分登ったとわかる。ご飯の用意を開始する。薪の準備、かまどを石を使って作り、料理開始。小麦粉薄焼きを作って、スープと一緒に食べる。温かい料理を作れて食べられることが嬉しい。教えてもらえる人もいなかったから、材料をもらってもそのままでしか使えなかった。いろいろなことを教えてもらえたことで料理や魔法、キノコや食材の見分け方から育て方までわかるようになった。材料も無駄なくつかえる。ところでここに何日いようか。3日をめどに一度帰ろう。来るまでに歩いて2日だから丸3日いれば確実にごまかせるはず。帰りはゆっくり帰ってみよう。長い分には問題ない。本当のところは村に苦手意識があって、あまり近づきたくないって思う。村の人のことだから殺されてもいい僕に討伐をさせ、あわよくば討伐にかかる費用を抑えようとするんじゃないのか?前はすぐに殺されるだけの子どもだったから、村人のストレスのはけ口になっていただけだった。殴られたり蹴られたり、骨が折れたこともあった。変な感じで治っていたけど、生き返ったときかな?わからないけどキレイになっている。あの村にはいい思い出がない。グリじいも何で戻したのかわからない。今は自由に採集と狩りを楽しもう。ここでは束縛する人は誰もいない。よーし、がんばろう。


 ここで3日ほど過ぎ、薬草は必要十分、狩りもはかどり、ウサギ、イノシシ、鹿などや鳥も狩れたので必要なものは買えると思っている。出来れば薬の販売をしてもうちょっとだけ稼げればと思っている。商人が村に来てくれれば相談も出来るのだけど。雑貨屋によるはずだ。その時がわかればだけど、商人の予定もあるはずなので本当に会えれば、直販できる。グリじいの話では鑑定できない商人は薬師の集まり、ギルドに持っていって鑑定してもらうっていっていた。専門の鑑定の人でないと善し悪しがわからず、傷薬ってだけでなく効能の上下が値段を左右する。銅貨十数枚の差は十分に出る。ギルドの人に見てもらえればいい物ってことはわかるはず。まずは商人と会うことが出来ないと無理か。雑貨屋に置いてもらえないか、聞いてみよう。値段がわからないのでぼったくられる可能性も。あの村だ、ある程度はしかたないと割り切って生活しよう。

 道中、採集や狩りもやりつつ戻っていく。強そうな動物なども出てこないし、クマもいない。魔物はいなくて、せいぜい狼がいたぐらい。一撃で仕留めてしまえるので、誰もいないのなら問題なく殺せる。村に帰ると使えないので、鹿の肉を出しておいて家まで帰ろう。もうちょっと先になる。川沿いに帰っていくと村に着くので、歩きにくい場所もあるけど帰って行ける。地図が見られるスキルもあるけど、これもスキルなのでダメらしい。見て、方向を決めて大雑把に進んでいく。どうしても迷ってしまったら、昼に川沿い歩くだけなので迷いようがない。どうしてもって時は使う。使わなくてもなんとか出来るぐらいの教えはもらっている。

「わおーん」

 ウルフか狼か遠吠えが聞こえる。警戒をしながら進んでいく。川沿いだから見つかりやすく、木があるところまで移動する。木々の間から川を確認するように進んでいく。近くにはいないようだが気を張ったまま、川沿いに進行していく。船で下れば楽なのかな?なるべく静かに歩いて、不用意に気を引かないように注意する。群れだとちょっと相手をしたくない。あ、灰色の毛が見える。木々の間に見え隠れするな。こちらに気がついているのだろうか?止まって様子をうかがう。そのまま通り過ぎるのを横目に眺めている。視界内に捉えつつ移動して、あの狼は何処に行こうというのだろうか?見つかったときは逃げよう。一定の距離を保ったまま追いかけていく。追いかけるのは初めてなので緊張する。なるべく静かに追いかけて物音を立てないように走る。木々を躱しながら狼の後をついて行く。魔力を感じられないので普通の動物なのは間違いはないはずだけど、目的地がわからないと。


 しばらく追いかけていったが、走る速度を落とさずに一心不乱にかけていく。ふと立ち止まる。

「わおーん」

 遠吠えをはじめた。終わるとすぐにかけだしていく。方向はぶれずに行ってるんだよね。だから、行きたい場所があるはずなんだ。木々の間からのぞく狼の姿を追いかけて森の中を走る。遠吠えをするときぐらいしか止まらず、ずっと走り続けている。そんなに急いでどこへ行くのだろう。

 本当に狼だろうか?こんなに走り続けるなんて。魔力を本当に感じられない。念のために鑑定をかけてみるけど、種族は狼だ。間違いはなかった。


 急に速度を落としてゆっくりと止まった。木に登って様子を見よう。何で止まっているんだろう。枝の下を眺める。時間が止まっているかのように静止している。下手に動かずに音を出さないようにする。上がってこないとは思うけど、狼だから。息を整えて様子を探ろう。むむ、動きがない。

 枝を踏む音がして、そちらを振りむくと複数のウルフとハイウルフがいた。こいつらに呼び寄せられてきたのか?ハイウルフが先頭になって近づいていく。目の前で遠吠えをすると狼はビクッと体を震わせる。魔力が狼のほうに流れていく。これはテイムの流れに似ている?テイムしたことないからわからないけど、教えてもらった感じだと主従の契約を交わすときに、魔力を通じると聞いた。そんな感じに見える、ウルフになっただって?鑑定をもう一度かける狼が魔力を持ってウルフになった。それでハイウルフはウルフを従えて群れになっていたのか。1つ学べた。ウルフ系はそうやって仲間を増やすんだな。上位種はそうやって群れを増やしていくんだな。でもこれで村を襲うウルフが増えたってことか。家畜を襲っていたようだけど、人間の家に突撃して壁を破らないといいけど、威力が高かったら薄い壁なら突破しそうだ。補強もせずに来たから荒らされてないといいな。木の柵はしてきたので応急処置でなんとか保ってて欲しい。集合しているハイウルフ達に気がつかれないよう、しばらくそのまま去って行くのを待つ。

 なかなかの時間がかかって、魔物達は移動を始めた。ゆっくり帰るつもりだったけど、結局あの狼を追いかけるために1日で帰ってきてしまった。あそこに3日いたので大丈夫。するすると降りて、周囲を警戒する。目視確認よし、警戒をしながら村に向かって帰っていく。村がどうなっているのか不明だけど、帰らないといけないから。祝福をしてもらうまで。

 森を抜けて家のほうへうまく出てきた。家は壊れていないようだ。杭も壊れてはいないな。ちょっと傾いているけど壁を守る役目は全うしてくれている。やっておいてよかった。なかったら、壁を壊されていた。ドアも壊されていない。ロックを解除して家の中に入っていく。入れるはずないけど、確認してはいる。ここも異常なし。

 これからは狩りのために家をちょくちょく空けよう。そうすれば村の人たちに何か言われたり、いじめられることも少ない。会わないからね。よし、この作戦で行こう。鹿とウサギの肉を出して、家の中に吊しておく。余分に出した肉を持って雑貨屋に入っていく。

「ばあちゃん、肉を買い取って欲しい。カギとクギが欲しいんだけど、これで交換できる?」

「あんた、無事だったのかい。何日かいなかったみたいだから、ウルフに食べられたのかと思っていたよ。みんなも魔獣がいるから探しに出られないし、やきもきしていたところだよ。どこに行っていたんだい?」

「ウルフに壁を壊されそうになったから、杭だけ打って、狩りのために山を上っていたんだ。クギとかカギとか欲しいけど、あとベットの布団とかも欲しい。何もないから困ってる」

「そうなのかい。この肉ならほれ、このカギとクギを持っていきな。布団までは無理だね。取り寄せになるから時間がいるよ。商人が来たらいっておく」

 鉄は高いからね。スキルで鍛冶や精錬が出来るとしても輸送が大変だしね。馬車では何日もかかる。相場がわからないのでなんともいえないけど。布団は取り寄せてから肉と交換でいいか。

「わかった。また、交換にくるよ。よろしくね」

 出るとさっさと家の方向へ歩いて行く。家の周りは畑にしてよかったと思うけど、農機具が一切ないのでどうしようもない。草刈りぐらいは生活魔法でどうにかなると思うけど。耕したりはクワがいるね。今は生活がきちんと出来るように、狩りを頑張ろう。それとウルフには気をつけよう。まだハイウルフがうろうろしているから近場で狩りは難しい。薬の調合にでも挑戦しよう。材料自体はハイポーションまで作れるんだけど、ローポーションまでしか作ってはいけない。それは守らないとね。やりたいことはあるけど、それに追いついていかない。まだまだ帰ってきてから日が浅いけど、どうしようもないぐらいの焦燥感にかられている。なぜだろう。

 家に帰り着くとカギをつける。倉庫錠なので通す穴を空けてそこに棒を通してロックする。これで扉の施錠が出来る。家の中に入り、薬を作ろう。石は前に作っていたときに壊れた時用の石ブロックを取りだしてすり鉢などを作っていく。ポーションならある程度作ることが出来る。薬は配合を間違えなければ、よりよく効く。主になる薬草が主な効果を担っているのでそれだけでも実は効く。更に効果を高めるなら調合すると考えるべきかな。配分を調整するのに鑑定を持っていることは非常にいいとグリじいはいっていた。本の通りにしたって産地とかで配合が変わるから鑑定が出来るなら使ってやるようにと。鑑定はばれにくいだろうし、逆に悪くしてもいけないから、鑑定によって調合の配分を決めるべきだと力説していた。ということで薬草に鑑定をかけて種類別に分けて、効力で調合量を決めていく。風邪に効くものや腰痛、滋養強壮などを作っていく。ローポーションは癒し草という魔力を帯びた薬草と普通の薬草を混ぜて作る。混ざる薬草が決まっているので、スキルを使わずに時間をかけて混ぜるしかない。あと魔草は薬の効果を上げることが出来るんだけど、癒し草とは調合スキルを使わないと混ざらないのでローポーション以上が作れない。魔力がケンカするってグリじいはいってた。それをうまく混ぜ合わせることが出来る調合スキルが出てもおかしくない、祝福をもらう日までは使ってはならない。ポーションってちょっと大きな傷がすぐ治るぐらいだから、傷薬程度の扱いなんだけどね。ローポーションはそれほど深くない傷に効く。ナイフで切られるぐらいかな。でも、すぐ治るので重宝されるのは間違いない。伝説のエリクサーというのがあるらしく、材料や製法はわかっているのだが材料の1つがヤバくて作れる人がいない。腕すら生やすというおかしな薬なのだ。とりあえず作っていいものを。最初は普通の薬に魔草を混ぜない。効かなかったら混ぜて様子を見ないといけない。強い薬は別の症状を引き起こすことがあるって、だから弱いものから試す。うまく効くように出来ればいいんだけどね。ポーション系が作れないからしかたない。

 まずはハーブ類の組み合わせを考えていく。グリじいに教えてもらった通りに作っていく。森の中で薬になる草木を見つけるたびに取っていたので、量と種類もそろってきた。乾燥は魔法でやろうか、それとも自然乾燥?今日作りたい少量を熱風で乾燥させていく。後は糸で柱に吊して自然に乾燥させていく。出来たものから、石の小瓶に入れて印をしておく。自分がわかるようにということだけどね。天井は薬草で一杯になった。

 あとは家の壁の修理をしないとハイウルフ達が壊してしまう。杭があるからそれを壊さないといけないけど、ちょっと傾いたらすり抜けてしまう。あくまで応急処置。木を切り出してそのまま運んでいく。板を何枚か切り出して、壁に合わせて調整していく。クギは石で打ち付けて、ヒビの入った壁が真新しい生木の壁になった。色は全然違うけど修理は完璧だ。思ったよりもうまくいったので満足だ。畑もしたいけど、クワをどうやって作ろうか考えてみる。自分で加工できるのは木と石。鉄とかはせめてインゴットや塊なら、なんとか出来るかも知れない。溶かせばいいからね。今ある材料の石と木でなんとか出来ないだろうか?石を平たくして長方形状にして先を土に刺さるようにやや尖らせる。これをどうやって木とつなげていこうかな。紐を作ってくくるのが一番簡単か。使えそうな草を探して周りを探す。その辺に生えているはずなんだけど、あったあった。ポキッと折るとうまく離れなくて根ごとついてくる。普通に切って集める。葉っぱを落として、表皮を剥がしてよっていく。手が草汁臭くなるのは仕方ない。石と木を組み合わせて、クワを作ってしまう。紐だからどれだけの強度があるかわからない。振った感じを確かめつつ、無理な力をかけないようにしないとすぐに壊してしまう。草紐をよるのが面倒くさい。今日はここまでにして、水で軽く手を洗ってクリーンをかける。使い勝手を確かめるために魔法で軽く草を払う。振りかぶって地面に突き刺す。掘り起こそうとしたら音を立てて紐が切れた。草では強度が足りなかった。草の根が強くて、これではダメだった。きちんとしたものを買うしかないな。草の根を断ち切ることが出来なければ畑にすることは出来ない。狩りで食べ繋いでいくことは出来ているから、今のところは満足することにしておこう。

 今日はしたいことが終わったので、家の中に入って料理に取りかかる。あ、パンの種を聞くのを忘れた。ちょっとだけでも膨らめばいいのに、今日も硬いパンだ。暖炉に石鍋と石板をのせる。鉄じゃないからいきなり割れることがあるので温度をなるべくゆっくり上げていく。火なので小さな火から時間をかけてくべていく。石鍋に水を入れておく、石板には小麦粉の練ったものを丸くしてのせておく。煙は外に抜けていくので上の方が焼けづらい。ひっくり返しながら焼いていけばいいのか。いつものを作って食べていく。保存食も作っておかないといけないかな。村の人の目をごまかすために。

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