村での生活開始!

 朝日で目が覚める。大麦・小麦の袋から実の状態を確かめる。脱穀したまま、詰めたのだね。大麦は皮を取るだけでいい。小麦は粉にしないといけないな。小麦の袋に水を入れておく。大麦から道具を作ろう。搗く道具だと、下は石がいいか。その前に家の横に、作業が出来る場所を作っていこう。村の方を確認、人はいないな。空間倉庫から木を取り出すと、素早く組み立てていく。ふふふ、グリじいに生活魔法の練習で木の削り出しから家の組み立てまでを試験として出されたから、別の作業場を建てることが出来る。といっても、難しいのじゃなくて切れ込みを入れて、それを積み重ねるだけ。多少の隙間風が入る。住むわけじゃないから手抜き。それから石の切り出し、木の切り出しもついでにしておく。それから、あれをこうしてああしてごにょごにょ。

 よし出来た。水車式の搗きと挽き器だ。挽きが難しかった。さてと、水車を水で動かしていく。自分で動かすから、動けなくなるけど。水瓶みたいなので、水をためればいいのかも。川は見えているけど水を引くには遠いから、木で入れ物を追加で作って、水漏れは多少するけどいいだろう。動いているからいいね。小屋の中で動いている様子を確認する。次は篩の荒いヤツと細かいヤツを作るのだ。木を用意して細く削り出していく。力加減が難しい。外にいるんだけど、風の影響があるのか、わずかにずれてしまう。小屋に入って作業する。細い木を何本も作る作業は大変だ。細い木を網目に組み上げて、荒いのと細かいのを作っていく。木を曲げて円にするのは時間がかかるから、くり抜いた。それに作った網目をとめていく。細かい作業の連続で、集中力を使う。木の曲げる作業と止めを慎重にやる。折れたらやり直し、目の均等を取らないといけなくて、それに時間がかかる。


 ワオーーン

 ウルフの遠吠えが聞こえる。外に出ると、暗くなっている。夜目のスキルが発動するので視界は暗い程度。見えるので問題はない。夢中になってやっていたようで、すでに夜だった。暗くても作業が出来るのは便利なんだけど、夜になってもわからないのが問題だな。何もやっていないとちゃんとわかるけど、作業とかしているとわからなくなる。扉を土で固めて家に戻る。戸締りは大事だ。森に近いからウルフとか魔獣の類いが入り込んでいたら戦うことになる。魔法は使えないから、生活魔法だけで倒せるのかな?練習はしているけど。


 カリカリ


 目が覚める。ネズミの音じゃない。外から複数の音、ウルフ達が様子を見に来たか。しばらくして、音がやんだ。行ったか?木窓から外の様子をうかがう。開けてはロックして、2カ所を数回繰り返す。家の周囲にはいなくなったので、一安心。


 朝になって、家の周辺を見回りに出かける。引っかかれた痕が新しくある。足跡が森から家を通って村へと続いて、まだ村にいる?帰った足跡がないから別の場所から戻ったのかも。今は大丈夫そう。装備をして、村の様子を見に行く。家畜が殺されたと嘆く声がする。人が殺されたわけではないようだったので、帰ろう。魔獣が来るような危険な場所ではないので、鍬や鎌でも追い払うことぐらいはできる。村人が集まれば戦えるはずなんだから。数は戦力になる。1人だから、危険になっても助けてくれる人はいない。今までいなかった人間がいるんだから、不審がられるのも鬱陶しいと思われるのもしかたのないことだ。村に無理に溶け込むことはない。前は厄介者だとされていたから、なるべくなら近づきたくない。

 安全を確かめたところで昨日の続きだ。小麦と大麦を食べられるようにしよう。昨日奮戦した篩がうまくいってくれるといいけど。まずは皮やゴミを取り除かないといけない。搗いた物を篩に入れて外に持っていく。振りながら風を当てて軽い皮などを飛ばしていく。このとき風向きに注意しないと、粉や小さな破片をまともにかぶることになる。1度かぶってしまった。ブハッとこぼしそうになるのを我慢して、なんとか耐えた。皮がはげたら大麦は料理に使える。いきなり袋分はやり過ぎたかも。次は小麦だ。茶色い粉になっているから、そこから大きなゴミを取り除けば小麦粉の完成だ。篩でシャカシャカと目を通していく。これでパンが焼ける。オーブンなんて村になかったような。そもそもあったとしても貸してくれない。家の暖炉の横にでも作ろう。生活魔法でささっと作ってしまう。パンの種をどこからか入手しないと作れない。誰か分けて欲しい。雑貨屋で分けてもらえばいいか。

 今からだと狩りも出来ないな。出来た小麦粉に水を加えて、練っていく。練っていった塊をオーブンでやや薄めにして焼く。火が通るまでに肉入りスープを作っていく。調味料が手に入ったのはいい。塩をかけて味を調えていく。

 様子を見ながら出来具合を確認する。薄めに焼いた硬いはずのパンをスープにつけて食べる。歯ごたえと香ばしい実の感じが味を損なわせている。皮も入るからな。初めてなんだから十分。ぷりぷりプチプチした感じの大麦の感触でスープの感じが変わる。今日は十二分に食べてお腹いっぱい。割とうまく出来ていたので満足。今日はこれだけで終わってしまった。効率化をしないとすぐに時間がすぎていってしまう。あっという間だった。まだ明るいが何をするにしてもすぐに暗くなってしまうだろう。小麦粉の茶色い粉末を見ながら、白くするにはどうしたらいいのか考える。まずは小麦のよいわるいを分けなければならないな。次買ったときはそれをやってみよう。お腹いっぱいで眠気が寝よ。


 朝目覚めて、朝ご飯をまず作ろう。火と水の生活魔法でお湯をさっと作りスープを作る。今日は狩りに出かけよう。矢とかいる物はある。準備を怠っては危険が多くなる。油断するなと厳しく教えられている。家では気を抜いてもいいが外では決して気を抜くなと。戸締まりもきっちりしたから出発だ。

 まずは動物の痕跡探しからだ。糞とか足跡、爪痕などを見つけて、追いかけていく。不意に小動物と出くわすこともあればラッキーだ。ウサギとかでもいいんだけどね。素早いだけだから。この足跡は縦長に2本、後ろのあとがない。イノシシではない。草が芽吹いているので2、3日はたっている。足跡の方向へ探しにいこう。なんだろうか、腐ったようなにおいがする。木の陰からのぞき込む。けがを負ったのだろうか、足跡の主が腐ってハエがたかっている。はずれ。他の痕跡探しを頑張ろう。警戒しながら痕跡探しをする。山の道を気をつけながら歩いて行く。この辺は湿ってるな。よけいに気をつけなければ、苔や落ち葉などで足を滑らせてしまえばけがをしてしまう。助けの来ない、山の中でのケガは致命傷になりかねない。普通なら。グリじいのところで作ったローポーションが空間倉庫に入っている。多少の傷ならなんとかなる。ダメならズワルトになんとかしてもらう。滑ってドロドロになるのは面倒だ。クリーンというキレイにする生活魔法があるんだけど、すごい汚れでは落ちないのだ。泥に突っ込んで、泥まみれになってしまったとか。1度水をかぶって、ある程度洗い流さないとキレイにならない。普通の汚れならすぐにキレイになる便利な魔法である。

 何か痕跡を探して辺りを捜索する。毛が落ちている、これは狼?ウルフか?魔獣のウルフだとちゃんとした装備ではないので苦戦は必至。普通の魔法は使えないけど生活魔法でけん制程度は出来ると思うけど。

 村までウルフが来るなんてなかったのに、僕がいなかった間に変わったのかもしれない。ティワズが弱い魔獣は、あまり人里には来ないっていっていたんだけどな。来るなら上位個体っていう強いヤツがいるときだって。そこは調べておかないといけないかも。僕も危険になるからね。登りやすい木を見つけて木々を渡っていく。地上だとニオイで待ち伏せされると困る。なので枝から枝へと移動を繰り返していく。いないといいんだけど。ウルフがお腹すいて来ちゃった、ぐらいならいいけど。見下ろした先の獣道には踏みつけられた草があり、ごく最近の足跡だとわかる。これを追っていけばウルフか狼たちにたどり着くだろう。落ちないように気を引き締めて進む。

 何匹いるのかわからないけど、20匹ぐらいの集団だ。その中に他のより大きなヤツがいる。ハイウルフかな?周りのよりも確実に一回り大きい。1度戻って村の人に伝えなければいけない。大きな個体がいると集団での行動をするので危ないんだ。狼自体が集団行動をするけど、数匹の単位。10匹は大きい集団。ウルフになっても数匹なら一緒にいる。見つからないように木の上を渡り歩く。あんなのに追いかけられたら、ひとたまりもない。村の人たちがどうなのかは知らない。

 なんとか、森を抜けて下に降りる。あまり奥には入らないようにしよう。まだ食べものはあるから、無理をしないように動物たちを狩ろう。ここはどこかと考えながら、村の方角は山の並びから予想をつけて歩き出す。こっちの方向へいけばいい。草を手に取って振り回しながら進んでいく。進んでいくと自分の家が見えてきた。方向感覚は大丈夫そう。そのまま自分の家を通り過ぎて村の中に入っていく。村長の家は大きいからあの家だな。

「村長、村長」

 扉を叩く。動くような音がして、扉が開いた。

「どうした、食べ物でもせびりに来たのか?」

「昨日のウルフが気になって確認にいったんだけど、大きなヤツがいた。あと20匹ぐらい集まっていたから言いに来ただけ」

「な、なんじゃと。ハイウルフがいたのか」

「一回り大きかったから間違いないと思うけど。僕じゃ殺されるだけだから、確認だけしてきた」

「そうか」

 落ち込むように目を伏せた。僕はそのまま、そこを立ち去る。強い人が必要なんだけど、この村にはいない。よそに頼むしかないだろう。今日は獲物もないのでさっさと帰ろう。

 家に戻って戸締まりをする。今日は偵察しか出来なかった。毎回狩れる訳じゃないから保存用に肉を干していてよかった。何日間かは肉入りが食べられるだろうし、なくてもキノコや大麦や小麦粉がある。ハイウルフはウルフよりも強い。弓だけで戦うのは厳しい。ウルフに矢が当たって、接近されたらとてもじゃないけど、さばききれる自信はない。せめて前で戦える人がいれば、ナイフで戦いたくないし。半日以上山の木の上を渡っていたので疲れた。薪を出して火をおこす、イスに座って木が燃えるのを眺めている。疲労感と暖かい暖炉の温度が眠気を誘う。うとうとしながら薪をくべていく。


 ウルフの声がして窓から外をのぞき見る。まだ、みえないか。夜が黒くした空間の中、目をこらしてみる。昨日来たばかりだから満足していれば来ないはずなんだけど。2日連続。人に撃退される恐れがないのなら、家畜を襲えばいい餌になる。昨日と同じく、うちの家をガリガリとひっかく音がするが、気が済めば通り過ぎる。家の中にいれば安全。後ろ姿を窓から見送る。イヤな気配がして、瞬間、木窓を閉める。探索。通り過ぎたウルフ達と後方からハイウルフの集団がやってくる。やばい、やばい。突っ込まれでもしたらこの家だと耐えられないかも。丈夫には作ってあるけど、住める程度には十分だったため、気にしてなかった。油断した。気配を殺して息を殺す。夜に紛れ通り過ぎることだけを考えながら、じっとしている。

 カリカリ

 爪でひっかく音がして、衝撃音で家が揺れる。木がきしむ音が家の中に響く。やばい、もってくれ。ここで破られたらまずい。家にぶつかるような音ときしむ音が広がっては消える。気配と息は殺したまま、動かずにやり過ごす。いざとなったら、魔法を使うしかない。

 音が止まる。静かにしていたら、足音が家を通り過ぎた。ほっとして、力が抜ける。暖炉に木をくべて火を強くする。明日はまず家が壊れていないかを見る。ハイウルフのヤツ、家の中の人間を狙ったのか?それとも肉のニオイがわかったのかも。鼻がきくから空間倉庫にでも入れて置いたらいいのかも。1人暮らしだから見られることもない。片足分だけ置いておく。村の人が来たときに怪しまれないために置いておく。狩りをするたびに交換すればいいだろう。村の方に向かったけど、本気を出さないと狩れない相手と戦うことは約束と違う。自分の身を守ること以外で封印解除禁止。みんなと一緒に祝福を受けるまでは何があろうと隠すこと。そうでなければ、人の国で暮らすことは出来なくなると思えって。普通に暮らすためには動物を殺せるだけということにしないといけない。これは絶対だ。あと3年、この秘密を守り通さなければ人の国では暮らせない。グリじいには出て行く前にずっとそう言われたので、守らなければそうなるんだろうと心に刻む。遠吠えが聞こえる。明日は家の様子を見て、修理と補強をしよう。今日のところは過ぎ去ったので寝ておこう。ベットの草が汚い。時間がたって色が変わってしまった。ささっと掃除をして板だけにする。乾燥した藁とかにしたほうがよかったかも。変なニオイがしてたどると置いていた皮が腐っているので一緒に燃やす。薪をくべて部屋にクリーンをかける。変なニオイがしないか調べるために家の中を一周する。大丈夫だね、寝直そう。

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