エピローグ① おめでとう
「あ、睦月君。ネクタイ曲がってるよ」
「ありがと春香」
「ん?どうかしたの?」
「いや・・・その・・・今日の春香はいつもにも増して綺麗だなって」
「も もう。それを言うなら睦月君だってカッコいいよ♡」
とある五月の週末。
天気は快晴。
少し汗ばむくらいの暖かな陽気の中、僕達は川北にある結婚式場に来ていた。
珍しいフォーマルな服装に髪を整えた春香はいつもにも増して綺麗で・・・横に居る僕も思わず見惚れてしまう。
今更ながらに僕の事を選んでくれてありがとうって感じだ。
「ったく。俺達の前だってのにイチャイチャと・・・
付き合い始めの頃はすぐ顔を真っ赤にしてたのに身内の前で恥ずかしくないのかねぇ~。
ほんと姉ちゃんと睦月がこんなことになるとは思わなかったぜ」
「本当だよね。あの真面目だった春香がこんなにデレるとは。
睦月のどこがそんなに良いのやら」
成海と弥生姉だ。
2人も今日はフォーマルな格好をしている。
春香とのことは・・・まぁよくからかわれるんだけどあんまり気にしないようにしている。好き合ってるんだからいいじゃないか別に。
それに2人だって結構なもんだと思うけどね。
成海は相変わらず小山内さんに尻に敷かれてる感じだし。
弥生姉に至っては大学に入ってから付き合いだした彼氏さんにベタ惚れだ。
母さんがお世話になったテニス部の先輩の息子さんで、同い年ということもあり紹介されたらしいけど確かに男の僕から見てもカッコいい人なんだよね。
高校は海外留学していたらしくて英語はペラペラ。
イケメンで優しくてテニスも上手。そして地元の資産家の長男。
こんな良縁そうないよ。逃がさないようにね弥生姉!!
「ふふ。まぁいいんじゃない。2人とも幸せそうなんだし♪」
「菜月。。。まぁ確かにそうかもだけどさぁ」
「あ、そろそろ時間だよ!」
音楽に合わせて教会の入り口の扉が静かに開きタキシードを着た村田コーチと純白のウエディングドレスを着た五月姉が入ってきた。
「五月姉・・・綺麗」
「あぁ」
身内贔屓じゃないけど凄く綺麗だ。
それにコーチに微笑みかける笑顔が凄く幸せそうで・・・素敵だ。
大学でも結構いい成績だった五月姉。
卒業後は地元にある大手の製薬会社に就職していた。
お祖父さんとお祖母さんが研究員として働いていた製薬会社なんだけど五月姉は研究職ではなく広報部で会社のアピール等に日夜頑張っているようだ。
ちなみに五月姉は就職と同時に1人暮らしも始めて実家は出て行ってしまっていたけど、たまに顔を合わせると以前より優しくなったというか丸くなったという感じもしていた。
社会人の余裕?的なものかとも思ってたけどコーチのおかげなんだろうか?
「五月さ~ん。おめでとう~!!」
「五月~綺麗だよ~」
「一彦!!羨ましいぞこのヤロ~!!」
「コーチおめでとうございます!!」
同級生や同僚、バスケ部関係の人達だろうか?
何やら賑やかな集団が五月姉とコーチに祝福の言葉を投げ掛けている。
本当心から祝福してくれている感じだ。
2人共本当に知り合いが多いし、その人柄を慕っている後輩も多い様だ。
高校でも大学でも2人の事を悪く言ってる人っていなかったもんな。
むしろ五月姉の弟ってことで親切にしてくれる人の方が多かったし。
新郎新婦の入場の後、厳かな雰囲気で式は進められた。
途中、コーチが緊張のあまり誓いの言葉を噛んでしまうというハプニングはあったけど、逆に周りの緊張も解け素晴らしい式になったと思う。
そして、式の最後は教会の外に出てのブーケトス。
一旦控室に向かう新郎新婦を見送り、僕らは教会の外に出た。
外に出ると独身女子は我先にとブーケトスが行われる場所へと移動していった。
女性にっては大切なイベントだもんねこれ。
五月姉の友人が多く来ていることもあり、春香は少し遠慮して後ろの方に居る。
・・・弥生姉や菜月姉は先頭に陣取っているけど身内なんだから少し遠慮して欲しいところだ。
そんなことを思って成海と雑談をしていると、教会の控室の扉が開き五月姉とコーチが出てきた。
2人共式が終わって落ち着いたのかさっきより緊張がほぐれた顔をしている。
そして、司会の方の合図を受け後ろを向いた五月姉がブーケを投げた。
放物線を描きながら弥生姉をはじめ女性陣の頭上を飛び越え、予想以上に遠くまで飛んだブーケは・・・
「え?私?え?」
「いいなぁ~春香」
「まぁ春香なら仕方ないか」
五月姉が投げたブーケは遠慮して少し下がった位置に居た春香の手の中にあった。
まるで狙ったかの様に春香の目の前に落ちてきたんだよな。
っていうか五月姉絶対狙ってただろ。いや絶対後ろにも目があるだろ。
周りから拍手が起こる中、ブーケをとった春香も困惑気味だ。
「い いいのかな。これ私が貰って」
「いいんじゃないかな。それに・・・」
「それに?」
春香が僕を見つめてくる。
僕にとって一番大切な女性だ。
「その・・・まだ先の話かもしれないけど・・・僕たちも・・・ね」
「睦月君・・・うん」
あぁ~もう少し気の利いたセリフを言いたかったのに言葉がまとまらなかった。
肝心な時に僕は。
って五月姉もコーチもニヤニヤしないの!!
絶対後でからかわれるコースでしょこれ。
でも・・・気持ちに嘘はない。
僕だっていつかきっと。
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本編的にはこれで終了なのですが、別視点でもう1つエピローグを作っています。
明日31日に予約投稿済なので最後までよろしくお願いします。
本作も登場人物がそれなりに多かったので人物紹介は後でアップ予定です。
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