第16話 川野辺高校②
駅前で成海と待ち合わせ、会場となっているラウムに到着すると後輩達が忙しそうにテーブルのレイアウト変更や料理の配膳を行っていた。
まだ開始には少し早かったみたいだ。
この辺りの手伝いをするというのも安く提供する条件なんだよな。
去年は僕と成海も大忙しだったし・・・1年経つのが何だか早いや。
「あ、鶴間先輩と渋沢先輩!お疲れっす。
準備もう少しかかるんですけど、奥の部屋が控室になっているんで準備出来るまで待ってていただけますか?他の先輩方も来てますんで」
「わかった。準ありがとな。結構大変そうだな」
「へへ。でもこういうの俺好きなんで大丈夫ですよ♪」
次期部長候補で1年生の堀内だ。
バスケが凄く上手い・・・というわけではないんだけど明るくて人望があって人をまとめるのには向いているタイプだ。
部長だからって上手である必要は必ずしもないからな。
ちなみに堀内の実家は駅前商店街の肉屋さんで、お父さんも川野辺高校の卒業生。
バスケ部のOBというわけではないんだけど商店街の組合長ということで長谷部先輩や成海のご両親とも顔なじみで今日の送別会でも食材とか支援してくれている。
僕も成海達と学校帰りにコロッケ買ったりしてお世話になったな。
「お、渋沢に鶴間。卒業おめでとう」
「あ、田辺先生。それに相良先生も来てくださったんですね。
こちらこそ今まで色々とお世話になりました」
控室に移動すると入り口付近で立ち話をしていた相良先生と田辺先生に声を掛けられた。普段はジャージ率が高い先生達だけど今日は卒業式からそのまま来たのか珍しいスーツ姿だ。ちゃんとした格好をしていると2人とも美人さんなんだよな。
特に田辺先生は僕や成海の両親の先輩のはずだから年上のはずなんだけど・・・美魔女ってやつか?
高校に入学してから相良先生は僕と成海のクラスの担任だった。
そして、田辺先生は学年主任。
それに2人はバスケ部の顧問兼コーチでもあったので本当にお世話になった。
叱られたり、怒られたり、怒鳴られたり・・・ん?褒められたことあったっけ?
とにかく厳しくもありがたい指導を色々と賜ったのは確かだ。
「それにしても鶴間君はよく川野辺大学合格できたわよね。2年の時の成績だったら完全にアウトだったし進路指導でも後押ししていいのか悩んだのよ」
「・・・心配させてすみません。でも3年になってから頑張りましたから」
確かに2年の時は追試をギリギリで回避出来たくらいだったし、あのままだったら川野辺大学なんて無理だったよな。
それ以前に何処の大学も危なかったし。。。
ほんと。頑張ったよな僕も。
「鶴間も頑張ってたけど家庭教師の教え方が良かったのかもしれないけどな」
「確かにそうかもしれませんね」
うん。僕も頑張ったけど家庭教師してくれた春香のお陰ってところも大きいな。
「ちなみにその家庭教師の先生も後で来るみたいだぞ」
「え?家庭教師の先生って春香?
昨日電話で話したときは何も言ってなかったけど」
今日の送別会に来るとは言ってなかったよな確か。
それに今日は弥生姉達と遊びに行くとか言ってたし。
「私がさっき電話して呼んでおいた」
そう言いながらニヤニヤ僕を見る田辺先生。
嫌な予感しかしないんですが。。。
「田辺先生が?え?何で?」
「その方が面白そうだし盛り上がりそうだからな♪
鶴間も高校を卒業したわけだし色々と2人の恋愛事情とか聞いておこうかと思ってな♪あ、馴れ初めは由良から聞いたからその後の話とかな」
「あ、楓先輩それいいですね。私も元担任として聞いておきたいです」
「・・・先生勘弁してくださいよ」
面白そうだしって。
先生達そう言う話好きそうだからな。。。
春香も断ればいいのに・・・でも先生のお誘いじゃ断れないか・・・
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「それじゃ!卒業するみんなの前途を祝して乾杯!!」
「「かんぱ~い!!」」
その後控室で他の部員たちと談笑していると会場の準備が出来たということで堀内が呼びに来た。
そして、綺麗に飾り付けられた店内で田辺先生の乾杯の一声から送別会が開始された。
当然のことながら未成年の僕たちが飲んでいるのはソフトドリンクだけど、先生方やコーチ、お祝いに来てくれたOB,OGの方々はアルコールを飲みながら語り合っている。
田辺先生とその旦那の健吾さん。
確か桐洋工業高校で先生やってるんだったっけ。あの人も見た目若いよな。
とても大学生の娘さんがいる様には見えないんだけど。
それからコーチのご両親も来てるな。今日のお酒も差し入れしてくれたはず。
それにラウムのマスターの長谷部先輩、商店街の小料理屋の清水夫婦。レストランフルールの栗田夫婦。
小春おばさんは仕事で来れないとか言ってたな。
皆学校の近くに住んでるってことで大会前には練習見に来てくれたりしたんだよな・・・お世話にはなったけど参加してるOB/OG多くないか?
僕たちのために集まってくれたはずだけど、何だか半分先輩方の同窓会みたいになってるし。
「睦月君、ちょっといいかな?」
「あ、春香。うん大丈夫だよ」
OBの方々や後輩達と話をしていると遅れて会場に到着した春香が話しかけてきた。到着早々田辺先生達に掴まり色々と質問攻めにあっていたようだ。
ようやく田辺先生達に解放されたみたいだけど気持ち少し疲れた表情をしている。
「ふぅ・・・何となく予想はしてたけど、色々聞かれちゃったよ」
「お疲れ様」
「もう。睦月君も来てくれればよかったのに」
「はは」
いや、僕も悪いとは思ったけどあの2人のお酒も入ってたし色々大変そうで・・・
「でも、今日で卒業だね。おめでとう」
「ありがとう。春からはまた春香と一緒に学校通えるね。
それに最近は受験勉強ばっかりだったから明日のデートも楽しみだ」
「うん♪一杯デートとかしようね。
それから・・・泊りの旅行とかも行けたら嬉しいかも」
「と 泊り!!うん。バイト頑張って旅費稼ぐから絶対行こうな!!」
「うん」
高校生活はこれで終わりだけど、僕と春香の未来はこれからだな。
大学生活。今から楽しみだ♪
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これにて本編終了です。
後はエピローグ的なものを少し書いて完結にする予定です。
10月中には何とか更新して止まってる方のお話を復活させたい。。。
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