第15話 川野辺高校①
先程、高校の卒業式が終わった。
僕が川野辺高校に入学して3年が過ぎたんだよな。
何だか本当にあっという間だった気もするし凄く長かった気もする。
入学早々に春香姉に想いを告げて付き合い始め、戸惑いながらも楽しい時間を過ごした1年。
春香が卒業してしまった翌年は、ちょっと寂しい気持ちにもなったけど夏の大会の後バスケ部でキャプテンに指名され成海やチームメイトのみんなと全国目指して頑張り冬と夏の2大会連続での全国出場も果たした。
まぁ全国制覇は出来なかったけど高校3年間で僕の身長もだいぶ伸びて選手としても精神的にも自分なりに成長は出来たと思っている。
勉強の方は部活を頑張り過ぎてかなり成績が落ち込んだんだけど、春香姉が家庭教師(ちゃんと母さんがバイト代は払ってた)をしてくれたこともあり、3年になってからは持ち直して志望校に合格することも出来た。
志望校はもちろん川野辺大学。
4月からはまた春香と同じ学校に通える。
もっとも僕は春香と学部も学年も違うし、何より春香の方が先に卒業してしまうわけだけど、、、まぁこればっかりは仕方がない。
僕としては春香と会える時間が増えること自体が嬉しい。
ちなみに3年前は何を目指すかとか将来とか何も考えて無かったんだけど、今は父さんみたいなSEを目指して色々とプログラムの勉強をしている。
2年の夏に少しバイトをさせてもらったんだけど、父さんや有坂のおじさんが色々と教えてくれたこともありプログラムに凄く嵌っちゃったんだよね。
だから進学については父さんの卒業した大学や専門学校というのも選択肢の1つではあったんだけど、川野辺大も最近は設備も充実してきていたこともあり最終的には川野辺大学を受験することに決めた。
だから・・・決して春香姉が居るからとか言う不純な動機ではない。
「どうした睦月?真面目な顔して」
「ん?何でもない。高校生活色々あったなって思い返してたんだよ」
「まぁそうだな。ほ~んと色々あったよな」
最後のホームルームを終え校舎を出るところで成海に話しかけられた。
高校に入ってからの成海との日常。
成海とは腐れ縁で小さい頃からよく一緒に遊んだりしていたけど、住んでいる地区が違かったので同じ学校に通ったのはこの川野辺高校が初めてだった。
プライベート含めお互い知らなかったような面も見れたし(僕の知らないところで小山内さんみたいな可愛い彼女が居ることも分かったし)、バスケ部でもチームメイトとしてライバルとしてお互い成長できたと思っている。
ただ・・・春からは別々の道に進むんだよな。
成海も進学はするけど弥生姉達と同じく川北大に進学する。
あの大学も最近はバスケの強豪校になっているので大学に入ったら今度はな成海ともライバルだ。
「大学でもバスケやんだろ?」
「もちろん♪」
「チームメイトじゃなくなるのは寂しいけど・・・負けないからな」
「そりゃ俺のセリフだろ。
あ、俺この後は麗美とちょっと約束あるから先に帰るな」
「あれ?今日は来るんだよな」
今日はこの後、バスケ部の後輩たちが駅前の喫茶店ラウムを貸し切って送別会を開いてくれるはずなんだけど。
「おぅ6時にラウムだよな?
それにしても後輩たちが送別会開いてくれるとか俺ってどれだけ人望あるんだろな♪」
「いや、別にお前の為だけじゃないし・・・」
成海は俺の為とか言ってたけど、普通にバスケ部の送別会だ(去年もやったし)
ちなみに貸切というと何だか凄いけど、マスターの長谷部さんがバスケ部のOBで娘さんも女子バスに在籍していると言いうこともあり去年も格安で貸切にしてくれたんだよね。
おまけに料理も美味しいし、かなりサービスしてくれてるんだよな(多分赤字だよな)・・・考えたら何だかお腹が空いてきたかも。
「じゃ、またあとでな」
「おぅ!」
時間に遅れているのか少し慌てて帰っていく成海を見送り僕も校門に向かっていると後ろから声を掛けられた。
「あ、あの鶴間先輩!!」
「ん?あぁ一条か。どうした?」
1年後輩でバスケ部のマネージャをしてくれている一条美佐だ。
運動神経は今一つだけど明るくて人懐っこい感じの中々可愛い後輩。
本当バスケ部のために頑張ってくれたよな。
成海や小山内さんの幼馴染らしいけど、お母さんも川野辺高校の卒業生で、文芸部だったって前に言ってた。
てっきり文芸部に入るのかと思ってたけど高校ではバスケ部のマネージャになってくれて成海達も驚いてたっけ。
「ちょ ちょっとお時間良いですか?」
「あぁ。今日は後帰るだけだし」
何だか緊張した面持ちで声を掛けられた。
何だかいつもと雰囲気違うな。
無言のまま及川の後をついていくと3年間通い詰めたバスケ部の部室に到着した。
寄ろうかなって思ってた場所だったから丁度良かったけど何の用事だろ?
「あ、あの・・・」
「ん?」
「鶴間先輩!ずっと・・・好きでした!!」
「!!!」
え?え?好きって僕を?
告白とかされたの初めてなんだけど・・・い、いや違うそれよりも僕、一条の事をそういう目で見た事なかったし。え?え?
突然の告白に色々な思いが交錯して慌てていると一条が少しおどけた様子で話しかけてきた。
「・・・そんなに驚いた顔しないでくださいよ。これでも頑張ったんですから♪」
「え?あ、うん。でも僕には・・・その・・・」
「春香先輩ですよね。知ってますよ。
だから大丈夫です。フラれるのは最初からわかってましたので」
「え?」
「鶴間先輩と春香先輩・・・ちょっと悔しいけどお似合いだし諦めてました。
春香先輩・・・春香姉さんは私も昔から知ってます。女の私から見ても素敵だし敵わないですもん。それに鶴間先輩って他の女性全然見てないですし・・・これでも結構アピールしてたつもりだったんですよ」
「うっ。。。」
そうだったのか?
全然気が付かなかったんだけど。。。
それに春香とも顔見知り。まぁ弟の成海の幼馴染だもんな。
「本当は告白とかするつもりはなかったんですけどね」
「でも、それなら何で」
「ふふ、先輩を困らせちゃおうかなと思って・・・って言うのは冗談で・・・お母さんに言われたんです。フラれるってわかっていても好きな人にちゃんと告白しておかないと後悔することになるかもしれないよって」
「・・・」
「お母さんも高校時代に好きな人が居たらしくてアピールはしていたらしいんですけど、その人鈍感で気持ちに気付いて貰えなかったらしくて。
で、告白しないでいるうちにその人には仲が良い女性が出来ちゃったらしくて・・・」
「・・・そうなんだ」
「だから私も後悔しない様にと思って・・・」
「・・・強いんだね一条は」
「そんなことないですよ・・・結構悩んだんですよ私も。
とにかくです!私も素敵な彼氏見つけますから鶴間先輩も春香先輩といつまでも仲良くしてくださいね!約束ですよ!」
「あぁ」
「じゃ、私は送別会の準備手伝わなきゃならないんで!」
そう言いながら一条は部室のドアを開けて走って行ってしまった。
最後の方・・・明るく言ってたけど少し涙声だったよな。
僕が一条の立場だったら・・・告白とか出来たかな。
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更新遅れてすみません。最終話にする予定でしたが長くなったので2つに分けました。後は後半の1話とエピローグ1話予定です。
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