第12話 僕の将来
「大きい教室ですね」
「でしょ!結構うちの学部人気あるからね」
五月姉と村田コーチに案内される形で僕と春香姉は大学入り口から五月姉の学部へと移動した。確か人文学部だっけ?
「ですよね。私もお父さんの通っていた大学とか含めて色々と調べたんですが川野辺大が有名だって聞いて」
「そうなのよね。私も色々と調べてこの大学にしたんだ♪」
・・・調べた?
五月姉って確か志望大学選ぶとき"近くの川野辺大でいっか"とか言ってた気が・・・あ、ごめんなさい思っただけです。はい。
「でも、春香ちゃんが人文学とはねぇ。てっきりバスケの推薦枠で強豪校に行くと思ってたんだけど」
「あ~酷いなぁ村田さん。結構読書家なんですよ私。それに人間観察とかも好きですし前々から興味はあったんです。それに川野辺大もバスケ強いじゃないですか」
「まぁな。うちの両親は別の大学だったけど、その同級生達の世代。っていうかお前たちの高校の田辺先生の世代あたりから全国常連だしな」
そうなんだ。
小春おばさんから色々話は聞いてた(まぁバスケよりも今の先生からは想像もつかない甘い話の方が多かったけど)けど、田辺先生達って大学バスケでも活躍してたんだな。
「そういえば田辺先生って川野辺大卒業でしたもんね」
「おぅ旦那さんもOBで別の学校で教員やってるけど、時々練習見に来てくれるんだ。うちの親父達と同い年のはずなんだけど・・・今でも凄いぜ。結構鍛えてるみたいだし普通に1対1とかしても中々抜けないからな。シュートも正確だしこっちは現役なのに自信無くすぜ」
「コーチがですか!凄いですねそれ」
「まぁそんな先輩達に負けてられないってことで俺達も成績が残せるように頑張ってるんだけどな」
「そう言って成績残してるんですから凄いですよ」
そう。川野辺大のバスケ部は大学リーグでも全国大会の常連校だし全国優勝も経験している強豪校なんだよね。
僕自身はまだ高校バスケすら始めたばかりだけどバスケは進学しても続けたいし出来れば強いところでやってみたい。
そんなこともあって一度見に行って見たかったんだよね。
「あ、そういえば娘さんもバスケ部に居るぜ。俺の1年後輩だから春香ちゃんがバスケ部に入部してくれるんなら一緒にプレーすることになるかもな。一応次期キャプテン候補だし」
「え?田辺先生の娘さんですか!」
そっか。うちの親より年上なわけだしお子さんがいてもおかしくないよな。
どんな人なんだろ。やっぱり厳しい感じの人なのかな。
「ほら睦月。次行くよ」
「あ、待ってよ五月姉」
コーチと会話しながら物思いに耽っていると五月姉が春香姉を連れて教室を出ようとしているところだった。
危ない危ない。。。置いてかれたら迷子になっちゃうよ。
土曜ということで人も少ないキャンパス内を五月姉の案内で歩き教室や講堂等大学内の様々な設備を見学した。
大学に来るのは僕も初めてだったので何だか物珍しいというか中々楽しかった。
でも・・・総合大学ということでキャンパスもかなりの広さがあり正直疲れた。
「で、ここが私が所属しているゼミの研究室よ。ちょっと散らかってるけどね」
「日本文化を研究してるんでしたよね」
「え~!五月姉が?」
案内された居室の壁一面には大きな本棚が備え付けられ本やファイリングされた多数の書類が収納されていた。何やら難しそうなタイトルの書籍がたくさん並んでいる。そして、中央にあるテーブルの上には読みかけの本や資料が多数散乱している。"ちょっと"のレベルではない気もするけど五月姉はここで勉強や研究してるんだな。
「失礼ねぇ。結構学校じゃ真面目なんだよ私も」
「はは。五月は普段だらしないし日本文化ってお堅い感じも無いもんな」
「もぉ一樹も酷いよ。去年の学祭では着物とか着て模擬店もやってたでしょ」
「うん。あの着物は似合ってた」
「え?やだもぉ照れる~」
「惚れ直した」
「もぉ~♡」
コーチは五月姉の普段のだらしなさも知ってて付き合ってるのか。
っていうか何を身内の前でイチャついてるんだ。見てるこっちが恥ずかしいわ。
それにしても着物か。
あんまり想像つかないけど五月姉って身内の贔屓目に見ても美人系の顔してるし和服系は似合うのかもな。
「・・・あ、あの他にもゼミとかはあるんですよね?」
「あ、ごめんごめん。そりゃもちろん。色々なテーマをもったゼミがあるから春香の希望に合ったのも見つかるとは思うよ」
「はい。ありがとうございます」
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その後、五月姉のゼミについての説明を聞いた後、近くにある土日も営業しているという学内のカフェに移動した。
グランドを見渡せるオープンカフェで中々いい雰囲気で価格もリーズナブルだ。
僕たちは、少し遅めのお昼ご飯を食べながら、五月姉とコーチに学部やゼミ、それにサークル活動等の説明を受けた。
春香姉も真剣に聞いている。
「・・・という感じで授業やゼミ、サークル活動してる感じね」
「現役の人に直接話聞けるのは良いですね。凄く参考になります」
「まぁ私や一樹だったらいつでも相談にのるから声掛けてよ。
そういえば、春香は、小春おばさん達みたいに編集の仕事とかしたいんだったよね?」
「はい。小さい頃に良く編集部とか連れてってもらっていていいなぁって。
大学に合格したら編集部でアルバイトもさせてもらう約束してるんです」
「へぇ。春香は凄いね。ちゃんと将来の事も考えてるんだ」
「そんなことないですよ。具体的に何か知るわけでもないですし・・・」
春香姉はちゃんと将来の事考えてるんだな。
多分、五月姉やコーチも・・・高1とは言え、ただバスケがやりたいとか言ってる様じゃ駄目なんだな。
「睦月。何思いつめた顔してるの。春香が卒業しちゃうの寂しいのかな?」
「え!?睦月君?」
「さ 五月姉!!!ち 違うよ。い いや違くない。五月姉が高校を卒業しちゃうのはそりゃ寂しいけど。今は将来の事とかみんな考えてて凄いなって・・・」
「・・・いいんじゃないか?まだ高校入学したばかりだろ?今はバスケや高校生活を楽しめば」
「コーチ」
「俺も高校入ったころは何も将来の事とか考えてなかったし、部活と遊びの事とかしか考えてなかったからな」
「そうそう。それで追試になりそうだからって勉強見てあげたんだよねぇ~」
「さつき~。そういうのは後輩達の前では「ということで睦月はまだそんなこと考えなくていいの。高校生活の中でやりたい事考えてけばいいのよ。それも思いつかなければ大学で考えればいいわけだし」
「五月姉・・・」
コーチの言葉を遮るように五月姉が僕に語り掛けてきた(やっぱりというか、コーチ尻にひかれてるな)
でも、こういう事をちゃんとした家で話したことなかったよな。
ちょっと五月姉を見直したかも。
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