第13話 女子バスのエース

食事を終えた僕たちは、バスケ部が練習を行っている体育館に向かった。

カフェからは直ぐ近くらしい。

前を歩く村田コーチと五月姉は何やら会話を楽しんでいる。

適度な距離感というか・・・やっぱり付き合ってるんだなって感じだ。


春香に教えてもらったけど、五月姉とコーチは川野辺高校の同級生で、入学早々にコーチが五月姉に一目ぼれして猛アタックしたらしい。

最初は五月姉も告白を断っていたらしいけど、めげずにアタックするコーチに五月姉が根負けして付き合う様になったんだそうな。

コーチがねぇ。。。とは思ったけど、確かに五月姉って昔から男女問わず人気あったもんな。外面がいいというか家とのギャップが激しいというかだけど。

そんなことを思いコーチたちを見ていると春香が話しかけてきた。


「どうかした?」

「え?あ、ごめん。こうしてみるとやっぱり2人って付き合ってるんだなぁってね」

「ふふ。五月姉取られて寂しい♪でも私はお似合いだと思うよ」

「さ寂しくなんかないし!!

 あ、そ それより春香は田辺先生の娘さんって人には会ったことあるの?」

「睦月君焦っちゃって♪

 田辺先生の娘さんって言うと流花先輩だよね?

 うん。私が高校に入学したときのバスケ部のキャプテンだった人だよ」


そうだよな。田辺先生も川野辺に住んでるんだし娘さんも川野辺高校か。

となると・・・僕にとっても先輩になるんだな。


「そうなんだ。流花先輩?流花さん?ていうんだ。女子バスのキャプテンって言うとやっぱり凄く上手い人だったの?」

「うん。PGだったんだけど凄く上手かったよ視野が広いというか。パス出しだけじゃなく自分でも点取りに行くタイプの選手だったなぁ。

 ポジションは違うけど、お母さんが言うには若い頃の田辺先生みたいだって。あ、県大会でMVPにも選ばれてたよ」

「そんな凄い人だったんだ!」

「もう女子バスというか全校生徒の憧れみたいな人だったよ。美人なんだけどカッコいい系というか・・・それでいて優しくて成績も良くて頼りになるし・・・男女ともに人気だったんだよね」


そう言いながら何処か思いをはせる様な表情をする春香。

そんなに凄い人だったんだ。


「春香も憧れてたの?」

「うん。ほんとカッコよかったんだから♪

 お会いするの久しぶりだから何だか緊張しちゃうくらいだよ」


うっ。。。顔見知りの春香姉が緊張するとか言われると僕まで緊張しちゃうな。

それに僕は初対面なはずだし何を話せばいいんだろ。

などと春香と話をしながら歩いていると体育館に到着した。

ほんとに近いな。

昨年リニューアル工事がされたという体育館は外壁も真新しい。


「そこに上履きあるから履き替えてな」

「はい」


僕と春香姉、五月姉はコーチの指示で上履きに履き替え体育館に入るとそこではバッシュの音を響かせながら練習をする女子バスメンバーの姿があった。


「ほらそこ!足止まってるよ。優紀!パスコースが甘い!」


試合形式の練習みたいだけど中々ハードそうだ。


「ん?春香。あの右側のコートに居る11番の選手」

「え?11番」

「うん。ほら来るときのバスに乗ってた人じゃないかな?」

「・・・ごめん。あの時何だか緊張していてあんまり顔とか覚えてないかも」


確かに緊張気味だったよな。

と一緒に練習を見ていたコーチが話しかけてきた。


「11番ってことは牧村か?」

「牧村・・・さん?」

「あぁ。今年入部の1年だよ。春香ちゃんは会ったことないか?都内の女子高出身なんだけど結構高校バスケでは活躍してたと思うんだけど」


そんな有名な選手だったのか?

確かに動きもいいし・・・綺麗な人だけど。

あ、凄い!パスカットした。


「高校バスケ・・・牧村・・・。もしかして女子学院の牧村水奈さん?」

「春香知ってるの?」

「うん。話したことは無いけど全国大会の常連校のエースだよ!!

 凄い!!川野辺大学に進学してたんだ」

「あぁ。ご両親がこの大学の出身でバスケ部のOB/OGでもあるんだよ。

 一時期(バスケ部の)コーチもしてくれてたんだぜ」

「そうなんですか!」


田辺先生のところもだけどご両親もバスケやってたんだ。

うちの親は2人ともスポーツ万能だったけどテニス部出身だったしな。


「おっ練習試合終わるぞ。お~い田辺!牧村!ちょっといいか」

「「はい!!」」


コーチが声を掛けると田辺さんと牧村さんが息を切らしながら僕たちの方に走ってきた。


「何でしょう村田さん・・・って春香じゃない!久しぶりね!」

「あ、あのご無沙汰してます田辺先輩」

「本当久しぶりだよね。私あんまり高校の部活に顔出してないし」

「そうですよぉ~たまには顔出してくださいよ」

「ごめんごめん。母さんが居るし何となく顔出しづらくて」


確かにバスケ部に顔出すと顧問の田辺先生も居るんだもんな。

そりゃ確かに顔出しずらいかも。

と田辺さんと目が合った。


「ん?こちらの方は?」

「は 初めまして。川野辺高校バスケ部1年の鶴間睦月です」

「鶴間・・・ってそか。君があの。ってことは頑張ったんだね春香」

「は はい」


"君があの"って僕と春香姉の事ってもしかしてバスケ部の中では有名なのか?

でも、田辺先輩か。

確かに春香が緊張するって言ってた気持ちもわかるな。

思ってたよりフレンドリーな感じではあったけど存在感あるし凄く魅力的な人だ。


「あ、あの。。。。私は何で呼ばれたんでしょうか?」


僕らが田辺先輩との会話で盛り上がっていると、申し訳なさそうに牧村さんが話しかけてきた。


「悪い牧村。そこの2人が来るときのバスが一緒だったかもって言ってたもんでな。春香は多分というか確実にうちの大学に合格してバスケ部に入るから紹介しておこうかと思ったんだよ」

「あ、そう言うことですか」


納得してくれたのか。そういうと牧村さんは僕と春香姉の方を向いて自己紹介をしてくれた。


「はじめまして牧村水奈です。私は1年なので春香さんが入学したときは2年生ね。村田さんが紹介したがる位だから即戦力候補だと思うし入学したらよろしくね♪」

「は はい!絶対合格します!

 で、あの、、私は渋沢春香といいます。川野辺高校のバスケ部で、牧村さんとは話したことは無いんですが全国大会で何度かお見掛けしたことは」

「そうなんだ全国大会で!」

「春香は川野辺高校バスケ部のキャプテンだったんだよ♪」


何やら牧村さんと春香姉の会話も田辺さんを交えて盛り上がり始めた。

美女3人の会話は見ていて楽しいんだけど・・・僕は何してたらいいんだろ。



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更新が遅れてしまい申し訳ありません。

後2話で完結予定です。

仕事のピークは過ぎたので、時間はそれなりに取れるようになったのですが仕事から執筆への気持ちの切り替えが上手くいかず。。。

きちんと完結はさせますので今しばらくお付き合いいただければと思います。

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