第11話 そういうことですか。

9月。

夏休みも終わり早いもので僕が高校に入学して半年が過ぎた。


高校に入って初の試験や全国模試、スポーツ大会。

バスケ部での新人戦や夏の大会。

イベント盛りだくさんであっという間だった。


特にバスケ部での活動は充実していて男女ともに全国大会に出場も出来た。

残念ながら男子は1回戦。女子は準決勝で敗退してしまったけど僕自身も試合に出て得点に絡むことも出来た。

春香姉にとっては最後の大会で出来れば優勝させてあげたかったけどやり切ったみたいで悔いはないみたいだ。

でも僕はまだ高校生活初めての大会。来年こそは雪辱を果たすぞ!


とバスケ部も忙しかったわけだけど、僕にとって一番のイベントは入学早々に小さい頃から憧れていた春香姉に告白して付き合う様になったことだ。


最初の頃は"何でお前が”的な周りの視線も気になったりした。

でも、春香は生徒会長でバスケ部のエース。

それに何より見た目も可愛いし目立つ存在なのは当たり前。

周りの僕達に対する視線は確かに気になったけど春香姉が僕を選んでくれたわけなんだから僕も堂々としなければ・・・と思い始めたら不思議と視線も気にならなくなってきて今では学内でも公認のカップルとなっている。


それに馴れ初めを聞かれたときに"幼馴染なんだ"っていうとたいていの人は"そうなんだ!"納得してくしてくれたりもした(良くわからないけど幼馴染だと付き合うのがデフォなんだろうか。。。)


まぁそれはそれとして、今日は春香姉と待ち合わせをしている。

土曜日ということで高校は休みなわけだしデート…というわけでもないんだけど、今から一緒に川野辺大学に行く約束をしている。

春香が川野辺大学を受験するということで現役の川野辺大学生の村田コーチが学内の案内とバスケ部の見学をさせてくれるんだ。


ということでメインは春香姉で僕はおまけなんだけど前々から大学のバスケ部には興味があったし、五月姉は頼んでも大学連れてってくれないので非常に楽しみだったりもする。

ちなみに成海も誘ったんだけど小山内さんとデートなんだそうな。

まぁあの2人も仲いいよな。

夏休みを終えて気のせいか距離感が更に縮まった様な気もするんだけど・・・今度聞いてみるか?いや・・・野暮かな?


「睦月君!!ゴメン遅くなっちゃった」

「大丈夫だよ。まだ待ち合わせの時間には余裕あるし。

 コーチとは大学の正門で待ち合わせなんだよね」

「うん。あ、バスは大学の送迎バスに乗れるらしいよ。あ、ちょうど来てる」

「そうなんだ。じゃ行こうか♪」


春香姉に促されてバス停の方を見ると大学直通の送迎バスが待機していた。

週末で学生が少ないからか普段運航しているバスと違い小型のバスが停車していた。


バスに乗り込み座席に座ると車内には数人の学生が数名乗っていた。

大きなバックを持ってるし部活に行く人だろうか。

あ、奥に座っている女性はバスケのボール持ってるみたいだ。バスケ部の人かな?


「ねぇ春香。奥の人バスケ部かな?」

「え?あ、そうだね多分。後で会うかもしれないね♪」

「・・・緊張してる?」


春香姉の表情は気持ちいつもより緊張しているように見える。

会話はしているけど、心ここにあらずというか・・・


「・・・うん。川野辺大学は前にも練習とかで連れてってもらったことはあるんだけど・・・自分の受験のために見学に行くと思うと何だかね」

「確かに・・・春香は川野辺大学を受験するんだもんね」


そうだよな。

僕はバスケ部を見に行くのが目的だけど春香姉にとっては将来に関わるところなんだもんな。


大学か。

うちの親父達は市内の大学に進学したけど五月姉は川野辺大学なんだよな。

弥生姉や菜月姉は都内の大学にスポーツ推薦狙ってるとか言ってたけど(春香姉と違って勉強苦手みたいだし。。。)

春香姉は凄いよなスポーツ推薦でもいけるのに希望の学部に行きたいからって一般で受験するんだもんな(成績優秀だし)

僕は・・・2年後どうなんだろ。出来れば春香姉と一緒に大学に通いたいけどそんな理由じゃ駄目だよな。僕も何かやりたい事見つけないと。


そんな話をしているうちにバスは大学の敷地に入りバス停に停まった。

道路も空いてたけど思った以上に近かった。


バスを降りて待ち合わせ場所の正門前まで移動すると村田コーチが今朝会ったばかりの女性と談笑しながら僕たちを待っていた。


「・・・なんで五月姉が?」


そう。コーチと一緒に居たのは五月姉。

確かに今日は珍しく朝早くから起きて化粧してたけど。

大学は休みのはずじゃ?


「あれ?聞いてなかった?春香の希望学部って私の通っている学部なのよ。

 今日見学に来るって聞いたから案内してあげようかなって」

「そうなの!?」

「ごめん。睦月君聞いてなかったんだ。てっきり五月姉に聞いてるのかと。。。」


いやいや聞いてないよ。というか五月姉って僕にそう言うこと話さないし。

それに・・・村田コーチと五月姉が知り合いってことも知らなかったし。

っていうか距離近くないか?やけに親し気に話してるけど。

これってもしかして。。。


「ねぇ五月姉」

「ん?何睦月?」

「もしかしてだけど、よく惚気てる彼氏さんって村田コーチ?」

「やだもぉ~惚気てるとか人前で言わないでよ♪ってそうだけど話したことなかったっけ?」

「聞いてないって・・・」


確かに以前弥生姉が村田コーチには彼女さんが居るとか言ってたけど・・・まさか五月姉だったとは。

でも今考えるとコーチに彼女が居るのを弥生姉が知ってるのもおかしな話だもんな。ただ、相手が五月姉なら納得だ。


「ん?睦月は俺が五月と付き合ってるの知らなかったのか?」

「う~ん。話したつもりだったんだけど」

「いや・・・聞いてないって」

「まぁ良いでしょ♪知ってたからって何かあるってわけでもないし」

「そりゃまぁそうだけどさ」


確かにコーチが五月姉の彼氏だから何があるってわけでもないけどさ。

他のみんなは知ってたみたいだし何だか複雑。


「まぁ睦月。そう言うことだからよろしくな。もしかしたら俺は睦月の義兄になるかもしれないんだしな」

「も~ぉ。睦月や春香の前で恥ずかしいよぉ~」

「はは ごめんごめん」


五月姉がデレてる。

普段のだらしない姿とのギャップが。

そんなことを考えていると


「ん?睦月。どうかしたのかな?」

「い いえ何でもないですお姉さま」


思いっきり五月姉に睨まれた。

睨まないでよ。怖いから。。。


「じゃ、まぁ時間もないしとりあえず学部の案内するよ。

 普通に学生も居るから邪魔はしないようにね」

「は はい。よろしくお願いします!」

「そんなに緊張しなくて大丈夫よ」

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