第10話 付き合い始めました!

「にしても、とうとう睦月と姉ちゃんがねぇ~」

「はは。僕も未だに信じられないよ」


連休明けの月曜日。

教室に入ると成海が僕を見つけて話しかけてきた。

もちろん春香姉との事でだ。

さっきからずっとニヤニヤして、僕をからかう気満々だ。


「それがさぁ~。姉ちゃん睦月とのデート以降凄く機嫌が良くてさぁ~♪」

「春香姉が?」

「ラインとかでやり取りもしてるだろ?もう俺の方が照れるくらいニコニコしてるんだぜ」

「そ そうなんだ」


確かにデート以降は、電話やラインでやり取りする回数も増えたしちょっとしたことでも連絡したりするようになったけど、そうなんだ。

春香姉喜んでくれてるんだ。

そう言うの聞くと何だか僕も嬉しいな。


「でも、姉ちゃん人気あるんだから睦月も気をつけろよ」

「なんで?」

「僻んで嫌がらせしてくる奴とか居るかもしれないからさ」

「嫌がらせ・・・」


確かにそうだよな。

春香姉って人気者だもんな。

それに比べて僕は・・・心配はしてたけどやっぱりそういうのあるのか?


と、小山内さんが成海に近づき後頭部を教科書で叩いた。


「こら!成君。鶴間君をからかわないの!」

「痛っ!な なんだよ麗美。嘘は言ってないだろ」

「まぁ春香姉がモテるって言うのは間違いじゃないけどさ。

 あ、鶴間君。心配しなくても大丈夫だと思うよ。

 ほら、春香姉って嫌がらせとか虐めとか大嫌いだから、そういうの放っておくわけないし」

「確かに・・・」

「ま まぁ姉ちゃんなら確かに大丈夫だとは思うけど、それくらいの気持ちでしっかりしていろよってことだよ。姉ちゃんが睦月の事を選んだんだからな」


確かにそうだよな。

僕がしっかりした気持ちでいないとな。


「うん。そうだな。ありがとな成海。小山内さん」




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その後、何事もなく授業を受け迎えた昼休み。

一時期弁当を作って貰っていたこともあったけど、朝から作るのも大変そうだし最近は購買でパンを買うか学食で食べることが多い。

学食の食事も美味しいんだよね。定食とか結構コスパも良いし。


「成海。昼行こうぜ」

「うん、あ~睦月・・・もうちょっと待ってもらってていいか?」

「ん?いいけど待つって何を?」


と言いかけたところで教室の入り口付近がざわついた。

何か前にもこんなことがあったような・・・


「む 睦月君。お お昼一緒にいいかな?」

「春香姉!」


ざわつくクラスメイトの中から現れたのは春香姉だった。

え?お昼を一緒に?僕と?

昨日ラインで話しをしていたときはそんなこと何も言ってなかったはずだけど。


「そういうことだ睦月。今日は姉ちゃん結構早起きして弁当作り頑張ってたんだぜ。ちゃんと褒めてやれよ」

「へ?成海?」

「いいなぁ~鶴間君。春香姉って料理上手なんだよね。羨まし♪」」

「小山内さん?」


2人共知っていたのか?

いやいや。それなら教えといてくれれば。


「え~と。お昼一緒駄目かな?」


僕が呆然と成海と小山内さんの方を見てると春香姉が心配そうな顔をして僕の顔を覗き込んできた。

いやいや駄目なはずないです。はい。


「そ そんなことないよ。嬉しいよ」

「ほんと!よかった~サプライズと思ってたんだけど断られたらどうしようかって心配だったんだ」


そう言いながら満面の笑みで僕を見る春香姉。

反則だよそんな可愛い顔で。


「だから言っただろ。睦月が断るわけないって」

「そうですよ。鶴間君も春香姉の事が大好きですもんね♪」

「大好き・・・そ そうなのかな?睦月君」

「・・・・そ その・・・はい」


何言わせるんですか小山内さん。

メチャ恥ずかしいんですけど。

ほら、クラスのみんなも僕と春香姉見てニヤついてるし。


「は 春香姉。それじゃ行こうか」

「え、睦月君」

「やるねぇ~睦月」

「春香姉!後で話聞かせてくださいね~♪」


周りの視線が気になり慌てた僕は早く教室を出ようと春香姉の"手"を取り廊下へと向かった。

とりあえず、この間の部室裏のベンチとかならあんまり人も居ないかな。


途中、廊下でも周りの視線を感じながらベンチに着くと春香姉は何故か顔が真っ赤だった。

どうかしたのかな?


「春香姉?大丈夫?顔赤いけど」

「え?あ、その・・・睦月君が急に手を・・・」

「手??」


言われて自分の手を見るとその先には春香姉の手があったわけで・・・

春香姉の手。

柔らかいなぁ~・・・じゃなくて、教室からずっと手を繋いでたのか僕は。

途中の廊下・・・春香姉が注目されてるのかと思ってたけど春香姉が僕(男)と手を繋いで歩いてたから注目されてたのか!!!


「わぁ~ごごめんなさい春香姉!!!」


慌てて僕が手を離そうとすると春香姉はその手つなぎとめた。


「春香姉?」

「あ、その・・・嫌なわけじゃないから。睦月君なら構わないし」

「そ そうなの」

「うん。それから・・・2人の時は"春香"って呼んで欲しいな」

「・・・春香」

「ありがと♪ じゃお弁当食べよ。今日のは自信作なんだからね♪」

「ほんと!それは楽しみだな」


その後は、一緒にお弁当を食べながら、2人で行ったリバーランドの話や学校での出来事などの会話を楽しんだ。

他愛もない内容のはずなんだけど、春香との会話は楽しく、あまりにも楽し過ぎて危なく午後の授業に遅れるところだった。


あ、もちろん春香姉のお弁当はメチャ美味しかったです。

明日から毎日作って来てくれるんだって♪

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