第9話 初デート②
「きゃ~~~」
「うぉ~~~」
リバーランドに入園した僕らは真っ先に"森のコースター"へと向かった。
人気のアトラクションで最初はコレ!って決めてたんだよね。
開園 直後だったからあまり並ばずに乗れたんだけど・・・思った以上に怖かった。
「大丈夫、睦月君」
「うん。思ってたよりは怖かったかも。春香姉は平気なの?」
「うん。私こういうの得意なんだ♪でも一緒に乗るのって小学生の時以来だよね」
「そうだね。あの時は成海が怖いって駄々こねて」
「そうそう♪あの子って偉そうにしてる割に結構ビビりだから♪
あの時も宥めるの大変だったのよね。麗美ちゃんも大変だよ」
成海。
その後、いくつかアトラクションを楽しみ、僕らは園内にあるレストランに入って昼食をとった。
春香姉的には、お弁当を作ってくるつもりだったらしいんだけど部活の疲れか昨晩は熟睡してしまい寝過ごして危なく待ち合わせも遅れるところだったらしい。
「ごめんね。お弁当」
「いいって春香姉。気にしてないよ。それに」
「それに?」
「お弁当は"次"の楽しみに取っておくから」
「そ そうだね。次作ってくれば良いんだもんね」
次のデートの約束をしたことで気を良くしてくれたのか、春香姉が凄く嬉しそうにしている。
まだ何も考えてないし、完全にノープランだけど嬉しそうだし良いよなこれで。
と、春香姉が少しまじめな表情になって僕にお願いをしてきた。
「そういえばさ睦月君。その・・・」
「ん?なに春香姉」
「ちょ ちょっとお願いがあるんだ」
「お願い?」
なんだろう。そんなにあらたまって。
「・・・”春香"」
「へ?」
「折角のデートなんだし今日は私の事を”春香"って呼んで欲しいな」
「あ・・・」
「駄目?」
春香姉を名前で・・・って凄く彼女っぽいけど、"姉"を言わないだけで凄く彼女っぽいんだけど・・・かなり緊張するな。
よ よ~し
「・・・は 春香」
「!!!!」
自分で呼んで欲しいと言ったのに照れまくっている春香姉。
"姉"を言わなかっただけなんだけど思わずお互い何だか恥ずかしくて目を逸らしてしまった。。。
何やってるんだろ僕らは。
でも、いいなこういうの。
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各種アトラクションを楽しみ、日も暮れはじめた頃。
園内のイルミネーションが灯り始めた。
イルミネーションイベントは年中無休で行われているリバーランドの名物でもあるんだけど、今日はゴールデンウィーク期間ということでこの後花火が行われる。
そのため、閉園時間も延長されまだ園内にも多くの人が残っている。
「睦月君。次は何処行くの?」
「そろそろ花火の時間だから並ぼうかと」
「あ、そっか♪」
園内の小高い丘の上にある大観覧車。
開園当時からあるリバーランドのランドマークだ。
花火が打ち上げられるときは、高い位置から花火を見ることが出来るということで雑誌にも取り上げられ、最近はちょっとした人気スポットになってるんだよね。
「・・・やっぱり結構並んでるね」
「そうだね。早めに来てよかったかも」
花火の時間が近いということもあり予想通り大観覧車の前には沢山の家族連れやカップルが列をなしていた。
早めには来たけど花火までに間に合うかな。
そもそも早く気過ぎても花火が始まる前に観覧車を降りなきゃならなくなるしタイミングが難しいんだよな。
「何とか間に合いそうだね」
「うん♪どうせなら観覧車から花火見たかったしね」
結構ギリギリになってしまったけど花火が始まる直前で何とか観覧車に乗る順番が回ってきた。
場内アナウンスの時間だと一番高いところにつく前に花火が始まってしまいそうだけどまぁ仕方ないかな。
「春香」
「うん。ありがと♪」
僕は先にゴンドラに乗り春香姉の手をとった。
最初の内は春香姉を"春香”って呼ぶのも手を繋ぐのも凄く緊張したけど今日一日でだいぶ慣れた感じがする。
むしろ学校でもこの調子で名前呼びしちゃいそうで怖い。
流石に学校では春香姉は先輩なわけだし、ファンの生徒も多そうだから名前呼びはマズいよな。
そんなことを思いながら外の景色を見ていると春香姉が僕に話しかけてきた。
「リバーランドってね。お父さんがお母さんに告白した場所なんだって」
「え?開成おじさんが?」
「うん。言うと凄く恥ずかしがるんだけど、お母さんが面白がってよく初デートの話とか聞かせてくれるんだ」
「そうなんだ」
何だかその光景が目に浮かぶ。
それにしてもうちの両親も仲は良いけど、開成おじさん達も仲が良いんだな。
でも・・・ここで告白したんだ。
「でね。その・・・私もねお母さん達の関係って凄く憧れてるんだけど・・・その・・・」
「え~と。。。」
「あ、その、変な意味じゃないから。その無理しなくてもいいんだからね。
あ、ほら!睦月君。そろそろ花火が始まるみたいだよ!」
春香姉は顔を赤くして慌てている。何だか可愛い♪
でも、そうだよな。やっぱりちゃんと相手から告白はして欲しいよな。
それに僕も男としてもちゃんと言いたい。
そう思いながら僕は姿勢を正し、春香姉の目を見た。
「春香」
「え?な なにかな睦月君」
「・・・小さい頃から僕は春香の事が好きでした」
「あ、、、、」
「年下だし、バスケもまだまだだし、勉強も全然で、頼りないところもいっぱいあると思うけど・・・春香の事が好きな気持ちはだれにも負けないつもりです。僕と付き合ってください!!」
「・・・・・」
僕は自分の気持ちを春香姉に伝えるとそっと春香姉の方に手を出した。
外で大きな花火の音が聞こえる。
打ち上げ花火のイベントが始まったようだ。
ほんの一瞬のはずだけど、凄く長く感じる沈黙の中、春香姉は僕の手を取り・・・
「私も睦月君の事が・・・好きだよ。これからもよろしくね♪」
「・・・春香姉!!!ありがとう!やっぱり好きだ~!!!」
「わ、ちょ ちょっと!!睦月君!危ないって!」
"好きだよ"の返事を聞いて思わず春香姉を引き寄せ抱きしめてしまった。
ゴンドラの片側に重心が偏り激しく揺れた。
ちょっと怖かったけど、将来は僕も"リバーランドの観覧車で告白されたのよ"とかからかわれることになっちゃったりするのかな。
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