第8話 初デート①
「睦月・・・あんたそのカッコで行くつもり?」
「え!?変かな?」
春香姉とのデート当日。
僕が洗面所で髪型を整えていると眠たそうな顔をした五月姉が話しかけてきた。
いつもはまだ寝てる時間なのに珍しい。
でも・・・変かなこの服装。
シンプルなジーンズとシャツで、いつもよりは服装も気を付けたつもりだったんだけど。
っていうか、人のこという前に五月姉こそ寝癖酷いぞ。
「あぁ~もうあんたセンス無さすぎ!!やっぱり用意しといて良かったよ」
「用意しておいた?」
「そうよ。こんなこともあろうかと昨日彼氏と一緒に睦月に似合いそうな服を見繕っておいたの」
そう言いながら五月姉は最近人気のあるブランドの紙袋を僕に渡してきた。
「え?これって」
「あけてみ」
五月姉に言われ、袋を開くと靴下からシャツ、パンツと一式コーディネイトされた服が入っていた。
これ・・・結構な金額になるんじゃ。
「もしかして僕のために?」
「まぁ可愛い妹分の春香の為でもあるけど・・・今日のところは睦月にプレゼントしてあげる。
で~も、出世払いってことで料金は倍返ししなさいよね!」
「倍返し・・・う うん。でもありがとう助かるよ」
「うん。素直でよろしい♪」
倍返しはまぁ後で考えるとして、普通に嬉しいな。
「あ、この服って彼氏さんも一緒に選んでくれたんだよね。お礼言いたいから今度僕のこともちゃんと紹介してよね。ノロケばっかり聞かされてまだ会ったこと無いし」
「会ったこと・・・そ そうね。わかったわよ。今度ね。
それよりほら、早くしないと遅れちゃうわよ」
そうだ。時間あると思ってたけど着替えるならそんなに余裕もないや。
「そうだね。早く着替えなきゃ。ほんとありがとう五月姉」
「い いいから早く着替えちゃいなさい!私はもう少し寝るわ」
僕があらためてお礼を言うと照れたのか目を逸らしながら再び自分の部屋へと戻っていった。
って折角起きたのにまた寝るの?まぁ昨日は結構帰り遅かったけどさ。
相変わらずというか。。。
そんなことを思いながら五月姉の後を追う様に自分の部屋に戻った僕は、貰った服に着替えながら思わずつぶやいてしまった。
「いいなコレ。前に成海が雑誌で見て欲しいって言ってた服じゃん」
正直ファッションとかには疎いんだけど、五月姉が買ってきてくれた一式は成海が見ていたファッション雑誌にも取り上げられていたコーデで素人目にもカッコよく見えた。
しかも全く同じではなく少しアレンジ加えていて、より僕好みになっている。
姉さんの彼氏さんのセンスが良いのかな?選んでくれたって言ってたし。
僕が買いに行ったんじゃ多分選べない。
ほんと彼氏さんにも今度ちゃんとお礼言いたい。
でも、会いたいって言ったら少し焦ってたな。
スポーツ万能で成績も良くて優しくて・・・ノロケはよく聞かされるけど写真とか未だに見せてくれないんだよね。弥生姉は会ったことあるみたいだけど、あの五月姉があれだけ褒めるんだから普通に会ってみたいよ。
------------------------------------
川野辺駅の駅前バスターミナル。
今日はここで待ち合わせをしてバスでリバーランドへと向かう。
「いってきま~す!!」
着替えを終えた僕は急いで待ち合わせ場所へと向かっていた。
川野辺駅は春香姉にとっては地元の駅だけど僕は電車で向かう必要がある。
時間的に遅れることはないはずだけど、初デートなのに遅刻だけは絶対にできないい!
なんて思いながら川野辺駅前の待ち合わせ場所に着くと。
「あ、睦月君。今日はよろしくね♪」
「・・・・」
「睦月君?」
真面目な春香姉が待ち合わせ時間前に来ていることは予想していたけど・・・
最近制服とかジャージ姿ばかり見てたってこともあるけど・・・
私服姿の春香姉がまぶしすぎる!!!
いいのか?今日って僕とデートするんだよな?春香姉を独り占めしていいのか?
「・・・メチャクチャ可愛い」
「ふぇ!?」
初夏を思わせる淡いブルーのワンピース。
それに少し化粧もしてるのかな?
春香姉はもちろん普段から可愛いんだけど今日はいつも以上に可愛く見える。
思わず声に出しちゃったけど、もしかして聞こえちゃった?
「あ、いや、その、ご ごめん。え~と、その待たせちゃったかな?」
「え、あ大丈夫だよ。まだ待ち合わせ時間前だし・・・それより今・・・」
やっぱり聞こえちゃってたか。
それなら
「え~と。。。凄く可愛いです春香姉!服も似合ってます!」
やば!言っちゃった。
でも嘘は言ってないし。正直な気持ちだし。
って春香姉が目をあわせてくれないんだけど。
照れてるって事でいいんだよな?
変な奴とか思われてないよな?
「あ、ありがとう。睦月君もカッコイイよ」
「ほ ほんと?よかった」
良かった!!喜んでくれてる。
それに僕のこともカッコいいって。
五月姉!まだ会ったことのない彼氏さん!本当ありがとうございます。
その後、お互い照れながらも何とか会話をし、一緒に駅前からの直通バスでリバーランドへと向かった。
リバーランドへの直通バスは入場口前まで無料で行ってくれるということで人気なんだよな。今日も僕ら以外にも家族連れやカップルで賑わっている。
ちなみにバスの中で聞いた話では、今日のチケットって小春おばさんが僕と行って来たらってくれたものだったらしい。
成海は開成おじさんから貰ったみたいだけど春香姉も貰ってたんだな。
で、春香姉が僕の事を気に掛けていたのは小春おばさんも知っていたらしく受験勉強や部活が本格的に忙しくなる前にと気を利かせてくれたらしい。
今日も"頑張ってきなさい!!”って送り出されたらしいけど・・・何だか凄く恥ずかしいぞ。
それに絶対今度小春おばさんに会ったときにからかわれそうだ。。。
------------------
仕事が忙しいのと体調が今一つなこともあり完全に週1ペースになってしまいましたが、一応10話前後での完結を当初から予定していたので終盤には入っています。
もう少しだけお話にお付き合いいただければと思います。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます