第5話 村田酒店
高校に入学してから早いもので数週間が経過した。
新しい環境、授業、部活と毎日が忙しく日が経つのもあっという間だ。
部活も当初の予定通りバスケ部に入った。
練習は厳しいけど、成海達も居るし先輩達も優しい人が多くて遣り甲斐もある。
休憩の時とか春香姉がタオル持ってきてくるうえに話しかけてきてくれたり。
周りの視線は少し気になるけど、春香姉と一緒に居られるだけでもう高校生活が楽しくて♪
あ、でも、決して春香姉が居るからバスケ部に入ったとかじゃないぞ。
いや、本当。バスケが好きだから入部したんだぞ。
・・・ということにしてください。
ちなみに来週はゴールデンウィーク。
部活はあるけど高校に入学して初めての大型連休だ。
とりあえず成海と遊びに行く約束はしてるけど・・・出来れば春香姉とも・・・
でも、彼氏でもないのに2人きりはマズいかな。
「帰ろうぜ睦月、麗美」
「あ、成ちゃんゴメン。今日は私部活あるから」
「あ、そういえばそうだったな」
「うん。ということでまた明日ね睦月君、成ちゃん」
「おぅじゃな麗美」
「また明日小山内さん」
今日は部活だという小山内さんと別れ僕と成海は帰宅の途についた。
最近は3人で帰ることが多いんだよね。
まぁ小山内さんはバス、僕は電車、成海は徒歩ということで一緒に帰るのは駅前までだけど時々ゲームセンターやカラオケ、喫茶店と寄り道して帰ったりもしている。
ちなみに入学当初は周りを気にしてか名字で呼び合っていた成海と小山内さんだけど、最近は普通に名前で呼び合ってるし一緒に居ることも多い。
っていうかもうクラス公認のカップルだよな。
隠す気ないだろお前ら人前でイチャイチャしちゃってさ。
そう言うこともあり下校時とか僕ってお邪魔じゃない?とか思ったんだけど2人としては気にしてないらしいので一緒に帰らせてもらってる。
まぁ時々2人の世界に浸ってるのを横から眺めてるのはあれだけどね。
ということで成海と2人雑談しながら歩いていると駅の近くで急に成海が立ち止った。
「ん?どうした?」
「あっぶね。母さんに頼まれごとしてたんだ! 悪いけどちょっと付き合ってもらっていいか?」
「買い物?いいよ。どうせ今日は帰るだけだし」
なんだろう。わざわざ僕に付き合ってって。
おばさんに頼まれた買物なら一人でもいいんじゃないか?
それとも僕も手伝うほど買い物が沢山あるのか?
そんなことを思いながら成海の後をついていくと一軒のお店の前で立ち止まった。
「村田酒店?買い物って酒か?」
「ばか。俺達未成年だし酒は買えないだろ」
「あ、そうか」(っていうかバカはないだろバカは)
「お酒というかここのお店に用事があるんだよ」
お店か。
確かに成海や小春おばさんにとっては地元だし、お店の人に用事があってもおかしくないか。
目の前のお店は、昔ながらの古い佇まいをした酒屋さんだ。
でも店内は改装したのか比較的綺麗で端の方にはバーカウンターもある。
どうやらお店の中でお酒も飲めるみたいだ。
でも・・・店内には誰も居ないみたいだな。
と、成海はお店に入りレジの前に立って店の奥に向かって声を出した。
「太一おじさ~ん。綾子おばさ~ん。居ますか~」
が、返事がない。
留守か?
と思っていると店の奥から見慣れた男性が出てきた。
「はい。何でしょう?」
「あれ?村田コーチ?」
「って成海に鶴間じゃないか。どうした買い物か?酒なら売らないぞ」
そうか、村田ってもしかしてコーチの実家か!
そういえば弥生姉もコーチの実家は駅前の酒屋って言ってたな。
横を見ると成海が驚いた顔をした僕を見てニヤニヤ笑ってる。
そのドヤ顔やめろ。何だか悔しいぞ。
「コーチの実家だったんですね」
「何だ鶴間は成海から聞いてなかったのか?」
「はい。どうも僕を驚かせたかったみたいです」
「へへサプライズってやつだよ」
だから、そのドヤ顔やめろって。。。
そもそも誰得なサプライズだよ。
「っていうか成海はコーチに用事だったのか?」
「あ、そうだ一彦さん、おじさんかおばさんって今日いますか?」
一彦さんって、コーチの名前か。
成海はコーチと昔からの知り合いなんだもんな。
「親父達か?親父達なら町内会の会合に行ってるぞ。
まぁそろそろ帰ってくるとは思うけど」
「そうなんですね。じゃ申し訳ないんですけどこれ渡しといてもらえますか?母さんからなんですけどバスケ部のOB/OG会の案内らしいんで」
「おっ、ありがとうな。そっか今回は小春おばさんが幹事なのか」
「そうみたいです」
OB/OG会ってことはコーチのご両親は2人ともバスケ部だったんだ。
だとするとバスケ部同士で付き合って・・・そして結婚して・・・いいなぁ~憧れる。
僕も春香姉に告白して付き合って・・・成海みたいに"春香"とか名前で呼んじゃったり・・・僕も"睦月"とか呼ばれちゃったり。
「へへ。いいなぁそういうの」
「ん?どうした睦月」
「あ、い いや何でもない」
「そうか?何だか急にニヤニヤしだしてちょっと変だぞ」
「ほ ほんと何でもないから」
「ならいいけど」
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