第3話 バスケ部へ

初日のロングホームルームは緊張しつつも無事に終わった。

全体的に地元でもある川野中や川北中の卒業生が多いみたいだけど、僕みたいに他の地区からの新入生も居て、成海以外にバスケつながりで話したことがある奴らも何人かいた。

あいつらもバスケ部に入るのかな?だとしたら後で連絡先交換しとかないと。


そんなことを思い成海と教室を出ようとしていると廊下の方がにわかに騒がしくなった。


「どうしたんだろ?」

「さぁ」


思わず成海と顔を見合わせてしまったが原因はすぐにわかった。


「成海、それに睦月君♪迎えに来たよ。バスケ部に入ってくれるんだよね?」

「姉ちゃん!」

「は、春香姉」


教室の後ろのドアから入ってきたのは、ついさっき入学式で在校生代表の挨拶を行った生徒会長様。

そう春香姉だ。

そりゃざわつくよな。

挨拶で登壇したとき僕の周りも"綺麗"とか"可愛い"とかざわついてたもん。


春香姉は僕らの近くまで来て話しかけてきた。

いつもの様に春香姉と話してるだけなのに羨望のまなざしが・・・。


「わぁ麗美ちゃんも同じクラスなんだね」

「はい。春香先輩」

「麗美ちゃんは・・・やっぱり文芸部?」

「はい。両親から色々と話を聞いてましたし、やっぱり本読むの好きなので」

「そっか。あ、この間貸してもらった麗香さんの小説読み終わったからあとで返しに行くね」

「はい。でも慌てなくても大丈夫ですよ?」

「続きが早く読みたいの♪」


成海と小山内さんは幼馴染って言ってたけど、春香姉ともずいぶん仲がいいんだな。それに麗香さんって誰だ?名前も似てるし麗美さんのお姉さん?


「なんだ睦月。麗美に春香姉を取られて寂しいか?」

「な なんだよそれ。そんなんじゃないし。それより春香姉って小山内さんとも随分仲が良いんだな」


春香姉の前でそういう事言うなよ。

っていうか小山内さんのこと名前呼びかよ。

マジで付き合ってるのか?あとで色々と事情聴取だな。


「はは まぁそんな照れるなって。麗美と姉ちゃんか?

 麗美の親父さんってうちの親父の高校時代の先輩で家族ぐるみで付き合いがあるんだよ。それに麗美のお母さんの麗香さんは小説家で姉ちゃんも大ファンなんだ」

「へぇ〜」


地元繋がりってところか。

でも母さんも小春おばさんと同級生だし"小山内"って名前言ったらわかるかな?

それにしても小山内さんのお母さんって小説家なんだ。凄いなぁ~。


「ん?睦月君どうかしたの?」

「あ、や、なんでもないっす。それよりバスケ部行くんでしたよね」

「あ、そうだった。案内するために来たんだったよ♪」


そう言いながら僕を見て笑う春香姉。

やっぱり可愛いなぁ〜。





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「ほら!そっち足が止まってるぞ!!」

「「はい!」」


体育館に入るとまだ部活の開始時間前のはずなのに男女数名がコートで練習試合を行っている。

流石は高校バスケ・・・というか思った以上に練習厳しそうだ。

と、コート外で指示を出していた男性に春香姉が親し気に声を掛けた。


「村田さん。未来のレギュラー候補を2名連れてきたよ♪」

「未来のレギュラー候補?」


春香姉に声を掛けられた男性は、その言葉を受け鋭い目つきで僕たちを見た。

バスケの選手にしてはそこまで背は高くないけど僕よりは背も高いし体つきもしっかりしている。

それにしても・・・ はるか姉?

何を楽し気にハードル上げてくれてんだよ。

レギュラー候補も何も練習見て結構ビビってるんですけど僕。

成海だって青い顔してるし。


「あぁ!この間春香ちゃんが話していた!そりゃ期待できるな

 俺はOBの村田だ。川野辺大に通ってるんだけど男子バスケ部のコーチもやってるんだ。ビシバシ鍛えるから頼むぜ未来のレギュラーさん♪」

「「は はい!!」」


一転して親し気な笑顔で僕達に笑いかけてきた。

怖い人じゃ・・・ないのかな?

思わず返事しちゃったけど。


それより・・・"春香ちゃん"?

この人と春香姉はどういう関係なんだ?

ま まさか彼氏さんとかじゃないよね?

春香姉も凄く楽しそうなんだけど・・・

成海も初対面みたいだし大丈夫・・・だよな。


ちなみにこの日は練習を見学させてもらって1年生は解散となった。

正式な部活の見学会は来週らしいけど、僕ら2人の他にも経験者と思われる1年生が男女ともに数人見学に来ていた。


県大会、全国大会常連でもある高校バスケ部の練習ということで流石に大変そうだったけど練習メニューは無駄なく考えられていた。


「なぁ睦月」

「ん?何だ成海」

「カッコいいな先輩達」

「あぁ凄いよな。あ!ダンク!!」


僕達が見ている前で長身の先輩が走りこみながらアリウープ気味にダンクを決めた。凄い・・・。


「決めた。睦月やっぱりバスケ部入るわ俺」

「え?」

「正直悩んでたんだ。俺さそんな背も高くないし高校入って通用しないんじゃないかって。姉ちゃんは大丈夫だって言ってくれてたけど・・・」

「・・・」

「でも、あのPGの人もコーチの村田さんも凄く背が高いってわけじゃないし俺も頑張れるかなって」


確かに成海は僕よりも背は低い。

でもその分スピードもあるし視野も広い。

中学の時もPGとしてその実力は評価されていたはずだ。


「あったり前だろ!成海はスピードもあるし一緒に頑張ろうぜ!」

「あぁそうだな。 って睦月は既に入部確定なんだな♪」

「もちろん!春香姉にカッコイイとこ見せないと」

「・・・何だか同期が不純だぞ」

「も もちろんバスケ好きだからってのが一番だからな!」

「はい はい」


高校バスケ。

楽しみだな。



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