第32話

 私は邪神様の下僕のランネ。

 邪神様のご加護のおかげか人間の寿命を超え、200歳くらい姿が衰えることなく生きている。


 やはり邪神様は素晴らしい。


 

 邪神様復活には多くの命や王族、龍族、聖女などが必要だ。

 特に多くの死者を集めるのが大変だ。

 何十、何百万という死者が必要なので簡単に集められるものではない。

 

 今すぐにも復活させたかったけれど、それまでには多くの準備が必要なので水面下で復活に必要なものを集めていた。龍の一族を歴史から消し、魔王を悪者にしたのも我が同志のおかげだ。



 私は、ストランド学園での王女監視の仕事を与えられていた。


 理由としては、邪神様復活に必要な王の一族をいつでも攫えるようにするためだ。王族は基本的にここに通うことになるため、私がここにいればその王族をいつでも攫える。今年もキャーロットという王族の一人を教師として担当していた。


 例年は監視することはあっても下手に警戒されても困るため放置の方針を取っていたが、長年頑張ったおかげで邪神様復活の為の死者が集まった。

 

 ネックだった多くの死者が集まったので、後は王族と龍、聖女だけだ。

 聖女はメンバーの数人が従人として近くにいていつでも攫うことが出来たので、実質龍の一族を集めることで邪神様を復活することが出来る。

 

 邪神様復活計画は最終段階へと移行した。

 

 

 手始めに私は邪神様の一部の力を引き継いだ魔物を使い、キャーロットをダンジョン内で殺したことにして攫おうとした。



 しかし、結果として攫うことは出来なかった。


 あの魔物が倒されてしまったのだ。


 ノアという少女に。



 邪神様でないとはいえ、邪神様の力を少し持った魔物を倒すのは非常に困難。

 それも年を取っていないような少女が倒すなんてありえなかった。

 仮にも邪神様の力を持っているのだ、魔王や龍族でなければ傷をつけることも難しいだろう。


 そうだとすれば、彼女は魔王。


 魔王ーー則ち、魔法を極めし王。


 魔王の系譜は男からしか産まれてこない。

 だから、彼女が女なら魔王な筈が無かった。


 邪神様は男が産まれてくる確率を低くする呪いを死ぬ際に世界に掛け、魔王の子が成長して脅威となる前に殺してしまおうとした。男の産まれてくる数が少なくなれば、魔王の特定なんて簡単に出来るからだ。邪神様のいかに頭がいいことよ。


 しかし、彼女が女じゃなかったら。


 調べてみると、ノアは男だった。

 女装で男であることを隠していたらしい。

 女には無い突起物がよく見れば生えていた。それに胸も女子にしては発達していない。



 そうであるとすれば、ノアは魔王なのだろう。

 しかも、順調に成長してしまった。

 

 魔力の濃度や魔法の才能。

 幼少期はそこらのガキと一緒くらいの戦闘力しかないが、幼少期を超え青年期まで成長したノアは魔力が人外に成長し、邪神様に匹敵した力を保持している筈だ。



 これは邪神様復活において、非常に不味いことだった。



 その為、再び邪神様の力を引き継いだ魔物を使いどうにかして力を弱めようとしたが、怪我をした状態で軽く倒してしまった。マホと戦って疲弊した後だったら倒せるかと思ったが、駄目だった。


 私も女なのであの格好いい勇姿には少し興奮を……いや、邪神様の下僕である私がこんなことを考えてはいけないか。


 とりあえる、ノアを倒すことは現状の戦力では無理だと思ったので、邪神様が復活する際に邪魔が出来ないようにした。


 魔王の力は脅威だが、別に邪神様復活に必要な訳ではないのだ。

 倒すことが無理なら、そもそも邪神様復活がバレないようにすればよかった。邪神様が復活した後に魔王をどうにかすればいいのだ。



 しかし、それだと問題になるのはキャーロットとノアが親交を深めていたことだった。

 ダンジョン攻略の時までは大して仲が良くなかったというのに、ダンジョン攻略後は急速に仲が良くなっていた。


 これでは、キャーロットを攫うことが出来ない。

 仮に攫ったのがバレたら、ノアは絶対に探しに来るだろう。見つかったら魔王の暴力に曝されて、また準備をしなければいけなくなる。そんなのは、絶対にごめんだった。



 だから、私はノアに記憶消去の魔法を使いキャーロットに関しての記憶を薄くした。

 キャーロットのことをノアが忘れてくれていれば、邪魔はされずらいだろうと。


 しかし、魔王は魔法に対しての抵抗力もあるのかそこまで記憶を消せなかった。キャーロットがノアに告白したことくらいだ。後何回か記憶消去を行えばキャーロットに関する記憶を完全に消せるかもしれなかったが、ノアは勘がいいのか私のことを警戒している。バレたら返り討ちに合う可能性だって大いにあったので、迂闊に魔法を使えるわけでは無かった。



 トラブルはあったが、ノアさえどうにかしてしまえば邪神様復活も簡単に行える。

  

 キャーロットを盗めるように攫ったのがバレにくいように第二試験も始まったし、龍の一族を攫う計画も同時に行われるので一週間も経たないうちに邪神様復活は行える筈だ。


 待ちにまった邪神様復活。

 邪神様は復活させてくれたお礼に何でも叶えてくれるらしい。


 何を頼もうか……


 ノアの力を弱めて奴隷にし、ノアの屈辱的な様子をつまみに酒を飲むのもあり。酒が進みそうだ。

 ノアではない幼い男の子を奴隷にして、幼少期から私に従順にさせるのもいい。従順になったところで、捨てようとしたらどんな反応をするのかが気になる。顔をこれでもかと歪めて泣いてくれるといいな。


 

 あー、邪神様の復活が楽しみだ。


 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る