第16話
突然設けられた三日間の休暇も終わり、今日から再び学園が再開した。
授業とも関わらず、相変わらず下ネタを口にする女子達には嫌気がしたが、今はそんな授業も四つ程終わり昼休みの時間。空の機嫌が良いことから、今日は風通しが良く柔らかな風が肌を撫でる屋上でティアと一緒にお弁当箱を開けている。
「ノアちゃんのお弁当っていつも美味しそうだよね。」
「ティアも何か食べる? 一応、簡単に作れる奴は全部手作りだけど。」
「うん!! ……それじゃあ、そのウインナー頂戴?」
「ウインナーでいいの? ほい。」
少し口を大きくしたティアに、爪楊枝で差したウインナーを放り込む。そのウインナーを小動物のように何度も咀嚼すると、幸せそうに目元を緩める。
食べるかと誘ってみたのは俺だか、前なら初心な令嬢のように顔を赤く恥ずかそうにして、断られていた気がする。それに、こうも簡単に表情を変えなかった気がする。まぁ、可愛いからいいか。
「ねぇねぇ。もう一個貰ってもいい?」
「いいよ。ほら。」
「ありがと。」
ティアの口元にもう一度ウインナーを入れると、また幸せそうに口を動かし始める。ティアの体は肉付きが良く、服の上からでも凹凸がはっきりしているが、こう見ると小動物に餌付けしている感覚になる。見てると無意識の内に頭を撫でたくなる。
「……そういえばさ、ティアってウインナーそんなに好きだっけ? ティアがお弁当にウインナー持ってきているの、見たこと無いけど。」
「……だ、だって、ウインナーってノアちゃんの持ってる立派なキノコさんに似てるから、食べるとノアちゃんのあれを咥えてる気分になれるの。……ノアちゃんの方がもっと大きいけど。」
「……え?」
頬を桃色に染め、蕩けたような様子で耳元で囁くティア。声は少しばかり吐息を含んでおり、服の隙間から出る甘い香りが鼻腔を擽る。
そんなティアに、俺も4日前のことを思い出し全身が熱を持つ。
産まれたての赤ん坊の姿でティアに抱き付かれた後、ティアの甘い誘いに乗った俺は、ティアと一つになった。
据え膳食わぬは男の恥というが、最初から最後まで俺が喰われた。たがが外れたティアは獰猛な肉食獣のようで、自前の肉付きのいい艶かしい肌で理性を煽られ、搾り取られた。前世含め最初の経験だったが、とても気持ちよかった。
さっきよりも大きく目元を緩くし、とろんとした様子のティアと目が合う。気のせいかティアから漂う甘い香りは濃度を増し、 ティアは溢れんばかりの双丘を両手で持ち上げると、誘惑するようにそれを押し付けてくる。
ーーここでしちゃうか?
下ネタばかり言っているせいか頭が可笑しくなったのか、いい天気だというのに屋上には誰もいない。その為、しても今なら誰にも気付かれないだろう。誰か来た時は、最悪魔法を使えば何とでもなる。
俺の意思を感じ取ったのか、 ティアがドレスの紐を緩めた瞬間、突如扉が開く。
「ちょっと貴女!! 何処に居るのかと思ったらここに居たのね!! 今日は、競技場で決闘する約束だったでしょ!? 四時間目の授業が終わったと思ったらそこの女連れて走っていって……見つけるの大変だったんだから!! ほら、早く決闘するわよ!!」
「そーですよ!! それに、何で私を誘わないでそこの女を誘ってどっか行っちゃうんですか!? しかも、一緒に昼ご飯食べてるし!! ズルいですよ。私なら、王族の権力を使って集めた高級食材を使った料理を食べさてあげるというのに!!」
「………」
扉を開いて出てきたのは、王女の三女であるキャーロットに騎士団長の娘であるマホ。二人の親は国の重鎮で、二人に何か起こるとかなりの確率で権力が発動するためとても面倒臭い。まぁ、マホは性格に関しても物凄く面倒臭いが。
黙っているティアを見てみると、服脱ごうとしていたティアは、さっきのとろんとした目とは打って変わり、鋭いナイフのように目を細め二人を睨み付けていた。そこには、ウインナーを与えていた時のような、小動物のような可愛さはない。妻と子を守る為に敵と戦う、雄のようだ。しかし、肉付きのいい体が、それを緩和する。
「……そもそも、決闘の約束って今日じゃなくて急遽休みになった日だよね?急遽休みになって決闘は出来なくなったんだから、もう決闘をする必要はないよね?」
「はぁ!? まぁ、確かに決闘は学園が休みになって出来なくなったわ。でも、私達はまだ戦っていないでしょ!? 善は急げと良く言うわ!! だから、早い内に戦った方がいいのよ。 だから、今日決闘するの!!」
これだから脳筋は嫌なのだ。
話が通じず、自分のしたいことだけを無理矢理に押し付けてくる。
これならば、下ネタを言うだけで、決闘なんて危なっかしいことをしてこない女子達の方がましだ。
面倒臭いし、いっそのこと魔法で家に帰って、昼休みが終わるギリギリまで家で過ごすか。他の生徒に見られる心配も消えるし。
「
「それにもう競技場にはお母様が来てるのよ!! 私はそこで貴女に勝って、私の実力をお母様に見せなければいけないの!! お母様は強い私が好きだし、それに……… と、とにかく今すぐにでも競技場に来るのよ!!」
力強く言い張ると、それとは対称に何かに怯えるかのように俺の腕を掴むマホ。いつもの覇気は無く、何処か弱々しい。それに、俺の腕を掴むマホの腕は少しばかり震えている。
いつもと違う様子のマホに、俺はティアの艶のある髪を痛めないように軽く撫で、軽く頬を緩める。
「わかった。……ごめんな、ティア。続きはまた今度にしよう。」
そうティアに告げると、魔法を最後まで唱えた俺はマホと共に競技場の前にワープした。
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