第14話
「……やっぱり汗も掻いてるし、一回シャワー浴びてこようかな。ベタベタしていてこのままでいるの辛いし。一応、ハナにシャワーを浴びることを伝えておくか。」
揺れ動く布団が止まるまで見続けた俺は、一人呟く。
呟いたと同時に、布団がびくっと少し揺れる。
汗を掻いた俺は、結構密着させられたこともあり体は汗でベタベタしている。自分の服に鼻を寄せてみると、汗を放置したせいか少し臭う。
……というのもあるのだが、どちらかといえば俺がティアに下着姿を見られるのが恥ずかしいからだ。
布団に横になっているティアに視線を寄せると、顔が熱を持つのを感じる。
いや、女性ならまだしも男だったら堂々と着替えろよと前世の価値観を持つ俺は思う。
でも、流石に着替えている姿をこっそり隠れながら見られたり、着替えている最中熱い視線を送られ続けているのは流石に恥ずかしくないか?
ここで着替えないと言ったのに驚いたのか、またしてもモグラ叩きのモグラみたいにぴょいと顔を出しているノア。目は上手いこと瞑っているが、惜しい思いをしたような表情をしている。
絶対見る気満々だっただろうし、さっきの言葉が余程効いたのかそれとも俺が着替えると聞いて高揚したのか顔が物凄く紅い。血とまではいかないものの、林檎レベルくらいには紅くなっている。
こんなに顔を紅くする程自分の着替えに期待されていたら、流石に逃げても仕方がないと思う。
紅くさせた顔を見せないようにパジャマで顔を隠しながら急いで部屋を出ていくノア。人の感情は伝染するというが、彼もまたティアのように顔全体が真っ赤な夕焼けのように紅くなっている。
そんな彼は、紅くなった顔を見せたくないと急ぎ過ぎた結果、シャツは持ったものの肝心のパンツを忘れてしまっていた。
風呂場に行ってからそれに気付いた彼。
同じパンツをもう一度履くか、それとも一度取りに戻るか考えた彼は、ハナにシャワーを浴びることを伝えて無かったことを思い出し、浴びることを伝えるついでに取りに戻ることにした。
こんこん。
扉を二度軽く叩き、心地よい木の音色を辺りに響かせる。
「ハル? お兄ちゃん、ちょっとシャワー浴びてきてもいい?」
「……」
「ハル?」
声を掛けた後も、物音が全くといって聞こえない部屋。
反応がないということは、寝ているということだろうか?
何も物音のしない部屋に、俺はハルが寝ていると仮定しとりあえずパンツを取りに行くことにする。
ハルの部屋から俺の部屋へ向かうと、俺は扉を開ける前に一度立ち止まる。
……この匂いは何だ?
俺の扉のほ湯のんの隙間から溢れでくる濃厚で甘酸っぱいような雄には無い雌の匂い。二、三分前まではこんな匂いしていなかった。
ほんのさっきまで漂ってなかった匂いに、俺はまさかと思い扉を少し開けて隙間を作りそこから中を覗く。
…………。
中を覗いた瞬間、彼は扉の隙間から離れ限りなく速い反射スピードで目を背ける。そして、自分の部屋で起きていた光景を頭から無くすように必死に違うことを考える。
しかし、そう都合よく記憶は消えない。
彼の頭の中にしっかりとその光景が刻まれる。
……もしかしたら、俺はこの世界の女性の性欲というものを舐めていたのかもしれない。
「んっ…ふぅ、ふぅ、んんっ…! ……もっと…もっと……駄目?」
生まれたばかりの糸を纏わない姿で、俺の枕を顔に押し付け恍惚とした表情で下部に手を当て動かしていたティア。軽く見た限り俺の私物の大体には透明な液体が飛び散っていて、それらは少しはがり糸を引いていた。
女性がやっているのは初めて見たが、こうも液体が飛ぶものなのか。
自分の行為と比較し、その範囲に驚く。
………ところで、俺はこれからどうすればいい?
自分が行っているとして、その行為中に誰かが部屋に入って来て見られたら、かなり気まずくなるし死にたくなるだろう。まぁ、この世界の場合精神的にではなく
皆が寝たのを確認してから行うのでそういったことは一度もないが、見られた経験のある友達から何度も豪語された「何とも言えない虚無感に襲われた。」という体験談から、体験せずとも見られるのは物凄く精神的に来るものというのが分かる。
その見られた相手が近い年代の異性だとしたら尚更だ。
だったら、見て見ぬ振りをすればいいと思うがあの範囲だ。リットルまではいかなくとも、百mL近くはいってる気がする。
それに、ティアが正気に戻った時あの惨状を見てどう思うかだ。俺に絶対バレると思うだろう。
ティッシュが無い世界なので、タオル等で拭くにしても風呂場からタオルを持って来なければいけないし、普通に考えると俺は風呂場に居る筈だ。
そこで偶然俺が風呂場から出たタイミングとタオルを取りに行ったタイミングが重なれば、普通男の裸を見たとして一年以上牢屋にぶちこまれる。俺は訴えるつもりなんてないが、九割九分男は不慮であろうがなんだろうが訴えるので、訴えないと考える方が可笑しい。
俺が訴えないなんてティアが分かる訳ないのでティアにとってはかなりのリスクだ。
ティアが俺の部屋で行為をするのがそもそもの原因だが、ここまで状況が酷いと同情すら感じてくる。
ここは俺がティアを強制的に魔法で眠らせて、ティアの心を痛めない為にも俺がこの処理でもするか?
「
扉の向こう側から未だに勢いの衰えることなく必死に粘着音を響かせるティアにこっそりと眠りの魔法を掛ける。
魔法を唱えた途端、聞こえなくなるティアの音。
聞こえなくなったと思った数秒した後には、ティアの寝息が扉の向こう側から微かに聞こえるようになった。
ティアが寝たことを確認して部屋に入る。
俺が魔法を唱えるまでの間、更に行為が行われていたようで範囲は更に広がって窓などにも一部付着している。広範囲に広がっているものの、本等に付着していないのが救いだった。
「クリーン」
浄化魔法を部屋全体に掛け、付着したティアの体液を全て綺麗に取り除く。匂いまで取り除いてくれるようで、部屋中に蔓延していた甘酸っぱいような濃い匂いはしなくなっていた。
「……そしたら、ティアをどうするか。……裸の状態の少女を強制的に眠らせるとか、前世の視点からすると犯罪臭しかしないな。」
後残ったのはーー布を1枚も纏わない姿で眠るティア。
たわわに育った双丘に女の子らしい柔らかい体つき。着痩せというものなのか、服を着た時に比べて育ちがいいように見える。
ーーって、何見てんだ俺。早く布を被せるぞ。
魔法によって綺麗になった布団を俺は急いでティアに被せた。
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