第20話 恐ろしすぎる量

「我がゼミ仲間よ。いや、チヅルよ。この前は私のために様々な料理を作ってくれて非常に助かった。そして、美味かった」


「いえいえ、それほどでもー」


響院大学に通う日高千鶴は大学に来て早々、友人である本庄琴音に頭まで下げられた上でお礼を言われ、満更でもない様子でそう答えた。

実際には弟である龍馬が作った料理をまるで自分が作ったかのように振る舞っただけだが。


「待て待て。俺、その会に呼ばれてないんだが」


「右に同じ」


日高千鶴と本庄琴音のゼミ仲間である岡部泰輝と下山康生はそう言った。

だが、本庄はそれを遮るように。


「ああ。ワスレテタ」


「いや、待て待て待て待て。絶対待て!!棒読みすぎて嘘だって丸わかりなんだが!!」


「ダウト。絶対ダウト!」


そう問い詰める岡部と下山に本庄は目線を逸らした。

完全に確信犯だ。

だが、そんな可哀想な二人に救いの手が差し伸べられた。


「二人とも食べたいんだったら私全然作るけど」


「「え!?マジで!!」」


千鶴から料理を振る舞ってもらえることを喜んだ岡部と下山は目を輝かせながら言うと、千鶴は頷いた。

だが、二人は知らない。

本庄に振る舞った料理は千鶴ではなく、弟の龍馬であると言うこと。

そして、突然のように決まったことのため、もちろん千鶴は龍馬には言っていないため、今回振る舞われる料理は千鶴が作ったものであること。


また二人は忘れている。

千鶴が唯一作れる料理は『超大盛のスタミナ丼』で、恐ろしすぎる量だということを。

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