第236話 星繋ぎの夜会(6)
「また会えて嬉しいわ。ほら、わたくしって勘がいいでしょう?」
悪戯っぽくウインクするロクサーヌ様の自画自賛は、嫌味がなくて小気味よい。
「わたくしも嬉しいです、ロクサーヌ様」
私の心からの言葉に、彼女はわざと目尻を吊り上げる。
「もう! 様はいらないって言ったでしょ、ミシェル」
「も、申し訳ありません、ロクサーヌ……」
「謝るのもナシよ」
恐縮する私に、ロクサーヌは青い宝石のついた亜麻色の髪を揺らしさっぱりと笑う。
「でも、よくわたくし達を見つけられましたね」
身内の集まりという
私の疑問に彼女は手をパタパタさせて、
「簡単よ。だってガスターギュ閣下は、この会場内では『巡り星の大樹』と同じくらい存在感あるもの」
……うちのご主人様、ランドマーク扱いです。
「それに、二人のダンスとっても目立っていたわよ」
ぎゃー! 見られてたっ!
真っ赤になって両頬を手で挟む私に、ロクサーヌ様は意味ありげに笑っている。シュヴァルツ様は無表情でグラスを傾けているだけだ。
「ロクサーヌはどなたと夜会に?」
「父と。相変わらずわたくしの婿探しに奔走しているわ」
ちらりと右斜め後ろを振り返って令嬢は首を竦める。視線の先にいる恰幅のいい紳士がコーネル伯爵かしら。
「閣下とミシェルは星繋ぎの夜会は初めて?」
「ああ」
「はい」
頷く私達に、ロクサーヌは微笑む。
「わたくしは二回目よ。初めてきた時、あの巡り星の美しさに驚いたわ。星を支える大樹はとても硬く重い合金で出来ていて、衛兵十人掛かりで運ぶんですって」
七本の螺旋状の金の蔓は大樹と呼ばれている。
「巡り星もとても重くて、十歳の子供と同じくらいの重さがあるんですって」
熱く語るロクサーヌに、シュヴァルツ様はボソリと、
「ほう、それは盗むのに苦戦しそうだな」
「え?」
「な、なんでも無いです!」
私は慌てて彼女の気を逸らす。
だから、怪盗は出ませんって!
「あの、ええと……今日の夜会には主催の国王陛下もお越しになるのですよね?」
必死で話題を変えると、ロクサーヌは疑いもせず質問に答えてくれる。
「そうね。会の最初にお見えになって、中盤頃にはお帰りになるのが通例なのだけれど……」
それは、招待客が気兼ねなく過ごせるようにという陛下の配慮なのだという。
ロクサーヌは従者がさりげなく置いたソーダのグラスを手に取り、唇を湿す。
「でも、今年はおいでになるか解らないそうよ。無理もないけど」
「何か理由が?」
首を傾げる私に、王都で官職に就く父を持つ彼女はさらりと答えた。
「陛下の十一番目の御子がもうすぐお生まれになるの」
* * *
他キャラとの兼ね合いで、たまに髪や目の色が変わっているキャラがいますが(無計画)特に読み返さなくて大丈夫ですよ。
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