第201話 ガスターギュ家の祝祭(5)
――と、いうことで。
スペシャルゲストをお招きしての、ガスターギュ家の祝祭ディナーです。
トーマス様はお祝いにと上物のワインを数本差し入れしてくれました。
そして、晩餐の話題の的は勿論、ゼラルドさんの手料理!
「からっ! 口から火が出る! でもうまっ!」
「うん、辛いけど後引く美味しさだね」
真冬だというのに額に汗しながら料理を頬ばるアレックスとトーマス様。
「うむ、いくらでも食えるし、体が温まっていいな」
上座のシュヴァルツ様は既に三杯目のおかわりをしています。
「美味しいです、ゼラルドさん。この黄色いお米とよく合って」
「サフランライスです。皆様、たくさんおかわりがありますので、たんとお召し上がりくださいませ」
機嫌の良さが隠しきれていないすまし顔で、ゼラルドさんはワイングラスを傾ける。
「でもさ、作りすぎじゃね?」
熱さと辛さにはふはふ息を弾ませながら、アレックスが訊く。寸胴鍋の中には、まだなみなみと秘伝のスパイス煮込みが残っている。確かに、シュヴァルツ様でも食べきるのは難しい量だなと思っていたら、
「心配ご無用」
ゼラルドさんは自信満々に答える。
「残りは
おお! それはすごい。
肉にも魚介にも野菜にも合うそうなので、おかずのバリエーションとしても色々つかえそうな味付けです。
私の作った鮭の蒸し焼きや他の副菜も全部片付き、お次は食後のお茶の時間です。エンゼル型に固められた青く透き通った夜空にたくさんのフルーツの星を散りばめたミントゼリーを切っていると、
「そろそろミシェルのプレゼントも見たいな」
最年少の庭師少女が無邪気に催促する。まだプレゼントを渡していないのは私だけ。デザートをサーブしてから、私は自室に用意していたプレゼントを取ってきた。
「ええと、みんなのプレゼントに比べたらありきたりなのですが……」
ちょっと恥ずかしくなりながらも、リボンのついた包みを渡す。
「これはアレックスに」
「ありがと! なになに?」
開けた包みの中には、イヤーマフ。帽子は嫌いだけど、この時期の外作業は耳が千切れそうと言っていたので、木のヘアバンドを軸に毛糸で編んでみました。耳あての部分にはたっぷり綿を詰めています。
「わーい! あったかーい!」
早速装着して感触を確かめるアレックス。
「こちらはゼラルドさんに」
「かたじけない」
きっちりとお辞儀をしてリボンを解く家令。中身はグレーのニットベスト。燕尾服の下に着れるように厚さは抑えましたが、細い糸で目を詰めて編んだから結構暖かいと思います。
「最近、肩や腰が冷えましてな。これで寒さに勝てそうです」
大事そうにベストを胸に抱えるゼラルドさんに、笑みが零れる。感謝されるためにやっているわけではないけど……やっぱり感謝さえるのって嬉しい。
そして次は……いよいよシュヴァルツ様の番です。
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