第43話 二人でお出掛け(1)

 高い空に白い雲。快晴の休日、今日はシュヴァルツ様とお出掛けです。

 といっても、ただ近所のカフェテリアにブランチしに行くだけですが。

 一緒に暮らして毎日顔を合わせているのに、外に出掛けるというだけで何だか新鮮で……ドキドキします。

 まあ、シュヴァルツ様的には、何とも思ってないのでしょうが。

 鏡の前で身支度をしていると、どんどん不安になってくる。

 ……はっ。もしかして、私の「どこかに着ていく予定もない」って台詞、暗にお誘いを強要してた? せっかくのお休みに、ご迷惑だったかな? でも……。


「準備できたか?」


「は、はい!」


 玄関の方から声がして、私はバッグを片手に自室を飛び出した。


「お待たせしました」


 玄関ホールで待っていたシュヴァルツ様に挨拶する。いつもは髪を纏めてメイドキャップに収めているけど、今日はおニューのワンピに合わせて、サイドに編み込みを入れて髪を下ろしている。

 ……気合の入れ過ぎで引かれてないかな?

 上目遣いに恐る恐る窺うと、彼は顎に手を当てて、背の低い私をしげしげ見下ろして、


「常々思っていたのだが……」


 大きな掌で、私の背中をトンッと軽く叩いた。


「お前はすぐ背が丸まる。もっと胸を反らし、顔を上げろ」


 反動でぐっと背筋が伸びる。俯きがちなのは……いつの頃からはついた、私の癖。


「前を向いていれば、視界が広がり、不意の敵襲にも対応できる」


 ……て、敵襲?


「姿勢が良ければ肩や腰の負担が減り、呼吸もしやすい。体を大きく見せて、敵を威嚇することもできる」


「は、はあ」


 淡々と述べるシュヴァルツ様に、私は混乱しながら頷く。

 なんか、ダメ出しされてる? 今日の私、そんなにダメですか? 本当はお出掛けしたくなかったのかな?

 言われたそばからどんよりと俯きそうになる私に、


「つまり、何が言いたいのかというと」


 彼はそっぽを向きながら、


「……俺は女性の服のことは解らんが。せっかく似合っているのだから、下を向いていたら勿体ない」


 え? と見上げると、彼の耳は赤くなっていて……私の頬まで熱くなる。

 ……シュヴァルツ様って、私を元気にさせる天才だ。


「では、行くぞ」


「はい!」


 背筋を伸ばすと、いつもより世界が明るく見える。

 私はシュヴァルツ様の隣を歩きながら、スキップしたい気持ちを抑えるのに苦労した。

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