12月15日第2巻発売記念③


 『世界よ止まれ、ダイヤモ不朽の氷美を今ンドダスト』。

 レーラズの『原罪』である『堕落カロス』のスキルの1つであり、寒いのも暑いのも嫌い、そもそも戦闘自体が嫌いなレーラズが滅多に見ることのない『堕落カロス』の力の中でも1番使わないであろうスキルだ。


 『氷』の力と言うよりは対象を『完全停止』させて楽しい夢を見てもらうためのスキルだ。魔力に触れてしまえば凍ってしまうが、シンラの氷耐性等は関係無く凍らせるので、外見だけで氷だと思うと痛い目を見るイヤなスキルだ。


 俺に襲い掛かってきていた愛火の『黄金の火』を見事活動停止させることに成功した。



「これで本体も凍ってくれていれば終わってたんだけど」


「全力でぶつけて自身以外の全てを凍らされてしまいました。配下たちが使う『原罪』より少し劣るとは言え……さすがに強力ですね」


「眠らせれば勝ちのゲーム。今度は俺が攻め続けるターンだな」



――バキバキバキッ‼



 愛火の『黄金の火』だけでなく、地面をも凍らせながら『堕落カロス』の魔力は愛火へと襲い掛かっていく。

 自身から出力を上げて『黄金の火』を放出し続けることで凍ることは免れたみたいだが、その放出を上回る質量で終わらせに行くという判断だ。


 『黄金の火』は『燃やす』という概念を何であれ付与するみたいな面倒な力だ。小規模のスキルなんて一瞬で灰にされて無意味になってしまうので、遠距離戦を仕掛けるなら大規模な質量をぶつけ続けるのが良いだろう。


 空っぽになるまでぶつけ続けてみようじゃないか。



「『幕引きの篝火イグニス・ゼーレ』」


「『世界よ止まれ、ダイヤモ不朽の氷美を今ンドダスト』」



――バキバキバキバキッ‼



 『黄金の火』の大波と『世界よ止まれ、ダイヤモ不朽の氷美を今ンドダスト』の魔力の大波が闘技場の真ん中でぶつかり合う。


 『堕落カロス』の魔力に触れた『黄金の火』たちが次々に停まり凍っていき、粉々に砕けて消滅していく。

 凍っては砕けてを繰り返すようにぶつかり合う2つの大波、触れるモノを停めて凍らせていく『世界よ止まれ、ダイヤモ不朽の氷美を今ンドダスト』のほうが押し込んでいるが、かなり粘られている。


 

「これ……俺の方が先に燃料切れあるなぁ……化け物め」


「ハァァァァァァッ!!」


「『雷神招来ッ‼』」



――バリバリバリッ‼



 『世界よ止まれ、ダイヤモ不朽の氷美を今ンドダスト』によって凍り停まっていた世界が天より降り注ぐ白と黒の雷によって爆ぜる。

 

 あれ以上ぶつけ続ければ先に俺が燃料切れになる可能性があったので、ここらへんで一気に勝負を決めに行く判断をした。

 『原罪』は1つずつしか発動できないのでレーラズの『堕落カロス』から、アヴァロンの『無限インフィニット』へと切り替える。


 終わる頃には俺の身体はボロボロになってるんだろうが、これで燃料切れの心配もなくなったし、一々『黄金の火』に燃やされるのも少しは気にしなくて良くなっただろう。


 俺は自身に纏われし白と黒の雷の感覚を身体に馴染ませながら、『大罪の天魔銃アポカリプス』を召喚し、銃口を愛火へと向ける。



「『空にて謳う万雷の母ママラガン』」


「『焔天にて揺れるスティグメ・儚く燃ゆる黄金卿エル・ドラード‼』」



――ドドドドドドドッ‼



 『大罪の天魔銃アポカリプス』より放たれる無数の雷と、愛火より放たれる黄金のレーザーがぶつかり合う。

 『無限インフィニット』の力で自身の内と天から無限に雷を産み出し続けることが出来るので、スキルの打ち合いではこちら側が途切れることは無くなった。


 終わった後に俺の身体はボロボロなんだろうけど、時間をかけなければ大丈夫だと信じたい。


 全てを燃やす火を破壊の雷を用いて上回っていかせてもらおう。



「降り注げ‼ 『星々を照らす万沁雷霆ユピテル・ヨ・ウィス』」


「『天穿つ黄金の絶炎ゴールドプロミネンス‼』」



――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ‼



 フロアの天井にて爆誕し、闘技場へと迫るのは白と黒の雷を測り切れないほど内包した雷の球体。

 それを即座に止めようとした愛火による大地より天へと伸びる『黄金の火』の柱を飲み込み近づいてくる破壊の雷球。


 『星々を照らす万沁雷霆ユピテル・ヨ・ウィス』が爆ぜれば、さすがの愛火でもノックダウンは避けられないはずだ。

 あれは『雷神招来』の化身以外を滅ぼす雷、正直やりすぎな気はするけれどフロアごと吹き飛ばないように加減はしてるし、これくらい大技じゃないと『黄金の火』を超えることはできないだろうなという俺の判断だ。


 ここまでやって気付いたんだけど、手札の多さで俺が勝っているだけで……愛火は魔王単体としては『最強』ってとこまで来てたんだなと思わされた。

 アイシャが目指し歩んできた道は、確かに頂へと足を踏み入れた。そしてあの『焔』はまだまだ強くなるんだろうな。



(1つの属性を極めて頂きへと踏み入れる。最高にカッコいいじゃないか)



――キィィィンッ‼



 大地より伸びる無数の黄金を飲み込み、『闘技場』にて破滅の雷が爆ぜ、視界は白と黒に染め上げられた。

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