12月15日第2巻発売記念①


「さすが俺が思う最強の火だけはある」


「相変わらず……摩訶不思議な能力ですよね。配下の魔物と一体化できるなんて少し面白そうです」


「火水雷に特化耐性のあるシンラと融合してるのに……その耐性を貫いてくるのやめてくれ」



 場所は我らが『罪の牢獄』の『闘技場』。

 最終決戦を見越して鍛えている中、俺自身に少しだけ近距離の殴り合いへの自信がついてきたので愛火ことアイシャに挑んでみたところ、良い感じにボコられてしまっている最中だ。


 シンラと『UNION・SiN』することで転移による移動力と三元素の強さを前面に出した戦闘を展開できる状態なのだが、『黄金の火』1つで完封させてしまうのではないかという展開だ。


 『火』に対する耐性を貫通するのズルすぎない?



「ふぅ~……『雷火戦鳴』」


「『黄金ト焔害ノ剣レーヴァテイン』」



――ゴウッ!!



 俺の身体に火と雷の魔力が渦巻くように纏われていき、愛火は如何なるモノも灰と化す『黄金の火』の剣である『黄金ト焔害ノ剣レーヴァテイン』を展開した。

 シンラと融合することで『神火』『神氷』『神雷』の三属性を自在に扱えるようになり、特に『雷』の力による高速移動は制御が難しい、が純粋に強く押し付けられる戦術がとれるためお気に入りだ。『火』が今身をもって体感しているが火力が凄まじいので強い。



(氷の力を守りに注いでいるんだけど……『黄金の火』のせいで無力になってるのが厳しいところだよなぁ~……)



「行くぞッ‼」


「『天穿つ黄金の絶炎ゴールドプロミネンス』」



――ドドドドドドッ‼



 雷速で動ける速さを活かして距離を詰めようとするが、地面から噴き出てくる『黄金の火』の柱たちのせいで近づくルートを制限されてしまう。

 だが完全に速さでは愛火を容易に上回れているので『神火』と『神雷』の攻撃力を押し付けつつ、何かあったら『神氷』で誤魔化す戦法で間違いは無いはずだ。


 愛火に拳を叩き込んでやろうと思ったら、『天穿つ黄金の絶炎ゴールドプロミネンス』で視界を遮られた瞬間に愛火の姿を見失ってしまう。


 気付けば真上に凄まじい熱を感じた。



「ハァァァァァァァッ‼」


「速くないかッ!?」


「その戦い方は自分の速さを完璧に慣れてからにしたほうが良いですよ!」



――ゴゴゴゴゴゴッ!!



 真上から現れ、そして勢いよく振り下ろされた『黄金ト焔害ノ剣レーヴァテイン』に対し、俺は『神火』を纏った両腕で何とか凌ごうとするが、ジリジリと地面に押し込まれていくのが分かる。


 外見からは想像できない単純な力。

 あんまり長いこと競り合っていると『黄金の火』に『神火』が侵食されて燃やし尽くされてしまうからどうにか逃げないといけないな。



――バチバチッ‼



「『爆雷烈虎尾脚ビッグバン・ソバットッ‼』」


「この距離なら見えるし読めますよ‼」



――ドシャァァァァンッ!



 シンラのもう1つの転移能力で愛火の真横に移動してから渾身の後ろ蹴りを決めたつもりだったのだが、俺の安易な仕掛けは完全に読まれてしまったようで、再び『黄金ト焔害ノ剣レーヴァテイン』に阻まれ競り合う状況になってしまう。


 『神雷』を纏った後ろ蹴りで直撃すれば相手の内側から放電して破壊し尽くす『爆雷烈虎尾脚ビッグバン・ソバット』だったが、『黄金の火』の前にはただの雷を纏った蹴りにしかならなかったようだ。


 競り合いになってから2秒も経たぬ内に、愛火が弾けるように後方に離れて行ったので、俺は間髪入れずに距離を詰めることにした。


 

「『烈火彗星プロミネンス縦肘打ち・タッマラー』」


「『天翔朱雀炎舞翼スザクヨク』」



――ゴウッ!!



 愛火から放たれたのは『黄金の火』で創られた巨大な朱雀。


 この超近距離で放ってくるのも納得の速さで放たれた黄金朱雀に対し、俺は頭を上からカチ割ってやる勢いで『神火』を纏った縦肘打ちで迎撃する。


 周囲に凄まじい熱波を撒き散らしながら、俺の『烈火彗星プロミネンス縦肘打ち・タッマラー』が愛火の『天翔朱雀炎舞翼スザクヨク』を叩き割ることに成功した。



「これでこっちに肘が焦げそうになるのオカシイよなッ‼」


「『火』だけが取り柄ですからね♪」


「近くにいるだけでスリップダメージも凄いんだから勘弁してくれ」


「虫の息程度までにしますから安心していいですよッ‼」


「この距離はシンラにとって無いようなモノだぞッ」



――ゴシャァァァッ‼



 愛火から放たれた『黄金の火』による大波を愛火の真上に転移することで避け、どうせ読まれていているだろうと思いながらも再び打撃を叩き込む。


 

「『赤い豹はトロキア・ディス燃え滾るトラクションッ‼』」


「『破壊の火』とやらですね」



――ドシャァァァァン‼



 『神火』だけでダメなのなら、次は『破壊の火』を追加して攻め立てようと戦法で行くことにした。

 別に『火』に拘る理由なんて無いんだが、俺は色んなことができてしまうが故にに全部中途半端だと愛火にも言われているので、まずは俺が出せる全ての『火』の戦い方を……最強の火にぶつけてみようじゃないか‼

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