外伝 『役満有頂天』①
「……僕たちが来て正解だったかもね」
時はソウイチと『女神』の最終決戦の少し前。
帝都北部の森に歪な気配を感じたラプラスの報告を聞き、すぐさまソウイチはハクとシンラに偵察するように手配した。
基本的にはダンジョンにおける大事なコアを守る役割を任されているハクが外に出ることは少ないのだが、珍しいこともあるのだと思いながら散策するハクたち、そんなハクたちの前に現れたのは『大罪』陣営を苦しめた2人であった。
『
「先戻ってていいよ。森ごと僕が壊しておくから」
――パリンッ!
ハクが戦闘する上で確実に邪魔になるであろうと即座に判断したシンラは、ハクの退いて良いという発言をし終える前に次元の裂け目に入って消えていった。
ハクの前には虚ろな目をした勇者だった人間が2人、報告でしか聞いていないが弓を持ったほうがソウイチを半殺しにしたことを鮮明に覚えていたハクから殺気が溢れだす。
「『
「…殺す」
――バキバキバキッ!
透過して攻撃を避けながら不可避の矢を撃ち込み、敵の攻撃に関してはカウンターで全て弾き返す害悪とも呼べる勇者コンビの策略はハクのアビリティ1つで破壊された。
自身以外の能力発動を無効化する力。
能力頼りな者を無力と化する『大罪』陣営の中でも最強とも呼び声高いハクのアビリティだ。
敵を殺すことだけしか思考できなくなって狂った者となった2人の勇者も、さすがの殺気と能力無効化の力に微かに戸惑う。
そんな隙をハクを見逃すはずも無い。
「『
世界はハクの掌の上となる。
15分の時間制限はあるが発動してしまえば敵無し、ただでさえ能力発動を封じられた勇者2人からすれば、それだけで詰みのような状態なのにそこからの特殊結界での自己強化。
勇者2人でも息苦しいほどの殺気、最早森に棲んでいた魔物や動物たちは一息に絶命してしまい、静寂な森を恐怖の結界が覆う。
ハクは刀を抜き、殺意を乗せて勇者2人へと向ける。
「『
――ズシャッ!
卓上の全てを刹那の一振りで切断する必殺の太刀。
ソウイチを苦しめた2人の勇者は何をすることもなく真っ二つとなって地面へと倒れ伏していく。
結界を張ったのも他の勇者がいた場合、まとめて斬り殺すためであり、殺意に溢れて冷静さを欠いたように見えて、酷く冷静に全滅させる手を瞬時に出したハクが完全に上を行った。
あまりにも呆気ないやり取りにはなったが、『女神』からすれば相手が相手であれば『大罪』陣営の幹部でも討ち取れる計算でいた2人である。
「能力消したら戦えないだなんて……僕のこと警戒して無さ過ぎだよ」
味気の無い殺し合い。
ハクは別に戦うことが好きなわけでは無いが、こうも味気の無い戦いになってしまうとモヤモヤとした気持ちが残ってしまうようで、何やらウサ耳をひょこひょこと動かしながら考え事をしはじめる。
「……面白いかもね」
ハクの脳裏に浮かんでくるのは『罪の牢獄』最強候補たちと呼ばれる阿修羅・イデア・ポラール・デザイア・シャンカラたちと自分が戦っている姿、模擬戦はしたことあれど自分1人に相手が複数と言うのは未経験。
さすがに全員相手は面倒だなと思いつつ、みんなと1度殺し合って見るのも面白そうだなと考えたハクは、足軽に『罪の牢獄』へと帰還するのであった。
これは『女神』との最終決戦前に、『罪の牢獄』で起こった『最強』の座をかけた殴り合いの始まり合図なのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます