外伝 とある『狐』の話
――『罪の牢獄』 コアルーム
「……また難しい能力持ちだな。ウチの面々でも1番じゃないか?」
「ワッチからすれば皆さんのほうが異常でありんす」
最後の『大罪』。
『女神』との最終決戦を前に誕生させた未来への一手、俺にアイシャ、リンさんの力を配合して爆誕したのは花魁擬きのお狐様。
配合から3日経過して能力も判ってきた。毎日変わる華やかな着物も判った。黒髪赤メッシュのボブヘアも……なかなか味があるのが理解出来た。
『大罪』『火焔皇』『神狐』の3つが揃って誕生したのが、攻撃性能・防御性能ともにウチの面々と比べると驚くほど低く、条件を満たす何かを捧げた味方を強化することに特化した魔物なのが3日経過しても理解できない。
まぁ……ありがたいことに未来に託すには素晴らしいタイプなので良いとして、元々使っている廓詞に、俺のエセ関西弁が気に入ったのか2つが混じってとんでもないのが生まれてしまった。
「廓詞難しすぎだろ……りんすやらなんしやら」
「主さんの言葉回しのほうが大変そうでござりんすよ?」
「この世界に存在している最強候補3つの『魔名』が混ざってるだけあって……癖は凄いけどとんでもないな」
「敬っておくんなし♡」
「能力は俺の身をもって試させてもらおうかな」
「……大した度胸でありんすね主さん」
「『女神』との戦いの最強兵器になってくれる力があると感じるからさ」
「ワッチの力は捧げるモノの重さでありんす。主さんがどれだけ捨てれるかによるでござりんすよ~♡」
今の会話を聞いていて、本当にこのお狐様が他の『大罪』と張り合えるような力があるのだろうか、あまりにも他人依存すぎないかと思うかもしれないが、簡単に言えばルジストルでも頑張ればアヴァロンと殴り合えるかもしれない力と言えば……その意味不明さが出てくる。
しかも……この力は使い放題で、どれだけ味方に付与しようとお狐様は痛くも痒くも無く、強くなるために捧げられたモノを搾取し続けるイヤらしい狐の出来上がりという訳だ。
「1番良いのは、ウチの面々の他者からのバフすら拒絶しがちなアビリティたちを貫通して付与できるところかもな」
「ワッチのはバフなんて言いなすんな。ただの呪いでありんすよ」
「下手したら滅ぶからか?」
「ふふっ……捧げるモノは慎重にでござりんす♡」
九尾の狐よりも多い尾の数をもったお狐様。
尻尾は真紅の呪火とやらで出来ているので下手し触ると熱いらしいし、普通の狐ではないと言うのは外見からでも理解できる。
『大罪』『火焔皇』『神狐』の各種を尖らせた結果爆誕した魔物、色々なモノを託したのだが特に気負うことも無くマイペースを貫くところを見ていると、かなりの大物だ。
対『女神』においても、ここに来て誕生したお狐様の能力までは考慮できないはずだ。
今まで見せてきた能力だったり、ここまでに生まれてきてくれた面々の力は知られてしまっているかもしれないのだが、ここまでギリギリで生まれたモノまで対策できるのか?
この超特殊なバフが序盤からあれば……バビロンのスケルトン軍団と合わせて瞬く間に世界征服ルートに突入してた可能性あるな。
「主さんとイチャイチャしてたら奥様に怒られてしまうでありんすから……先に闘技場に向かうとしなんす」
「こんなことで怒るタイプじゃないけどなぁ……でも今仕上がってるから怒らせたらヤバいかもな」
1人になったコアルームで改めて『女神』との最終決戦について考えてみる。
俺たちの仕事は愛火を中心に未来を担ってくれる人たちに多くの可能性を残すこと……つまりは『女神』が色々できないようにしばらく眠っていてもらうなり死んでもらうことだ。
『原初』のほうは最強勇者がいるから問題無いだろう。俺たちが負けなければ愛火やお狐様たちが結果を残してくれるはずだ。
この創られたゲームの世界がどうなるかは分からない。俺たちが勝ったとしてもどのタイミングで消滅するのかも謎だからな。
「ゲームなんだけど現実みたい……限りなく現実に近いファンタジーゲーム。これが本当にログイン式でデスゲームじゃないモノだったら面白かったかもしれないのにな」
ゲームの世界ではあるが、限りなく現実世界と同じような概念が取り入れられているからこそ出来ることもあるのでありがたい話なんだけどな。
おかげさまで色々託すことも出来たから作戦も立てることが出来た。
『女神』は俺なんかに負けるなんて思ってもないだろうが、生きる殺すのみが勝負を結論付けないことを教えてあげないとな。
「エンディングなんて今どきルートが多くて当たり前みたいなもんだ」
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