最終話 『魔王による最高のクソゲー』
『女神』と『原初の魔王』が創り出した幾多の世界線を巻き込んだデスゲーム。
一体何人の人が犠牲になってしまったのか数えるのも億劫になってしまいそうな
ほどに僅かな期間で多くの死人を出したクソゲーム。
特にプレイヤーは本物のゲームだと思って遊んでいたら、実はゲーム内の死が本物の死とリンクしているなんていう理解不能な事態に陥ってしまうという地獄のような展開だったのもあり……『ゲーム』って何だろうとなっただろうな。
新米魔王は記憶を無くされて争わされる……確実に犠牲が出てしまう戦いを記憶が無いまま強制されるという、これも涙が出てしまうほどのクソゲーだった。
「……ボコられるの何回目だ?」
「……すでに40回ほど滅ぼしたつもりなのですが、本当に互いに不滅になっているのですね」
「少しずつ自分の力にも、アンタの動きにも慣れてきたな」
「本気を出していると思っているのですか?」
「本気かどうかなんてどうでもいい……敵の動きが少しずつ理解できてきて、自分の動きを改善しながら勝ちを掴みに行く…これがゲームの醍醐味でもあるだろ?」
「それらを無視してゲーム性を破壊してきた者が言うと皮肉にしか聞こえませんよ」
「ゲームで命をかけるなんていう意味不明なルール持ち出した奴が戦犯だろうが」
「……この討論も飽きてきましたね」
ゲームに対し、自分が何を求め何を楽しみにプレイするかよりも、誰かからどう評価されるのかを重要視するようなことをゲームに向けてしまえば……俺はあんまりゲームを楽しめる状態だとは言えない気がする。
何度もクリアしたゲームであるならばそれも良い考えだとは思うが、初めてプレイするゲームで効率・速度、他者からの評価ばかりに縛られるのは製作者としても悲しいもんだと思う。
あまりにも多くのモノを失ったが、死ぬことが無くなり……何度でもトライ&エラー出来るようになったことで、この世界の面白さってのが少しだけ見えてきた。
「古き良きモノと最先端でリアル感を前面に出したモノが切磋琢磨して良いゲーム界になっていくところを見てたかったな」
「最高にスリルのある遊戯を我らが創ってあげていますのに」
「だからゲームに命をかけるのがダメなんだっての!」
――ゴウッ!!
12尾に宿る力を苦戦しながらも操作してみる。
さすが『女神』を封じれるだけあって強大な力なので、40回ボコボコにされたのだがまだLv5くらいの進歩しか出来ていない。
捧げたモノが多かった分、上限は遥か高いところにあるんだろうけど、一体どれだけの時間をかければ到達できるのやら……今どきはレベル上げに時間がかかると叩かれるってのにな。
コツコツ戦闘してレベル上げをするのが楽しいのは、戦闘システムや雰囲気が余程良くないと最近では評価されない。
レベル上げ効率を引き上げるアイテムや、バランスが壊れてしまうようなレベル上げ方法が評価されるのが最近の流れな気がする。
「俺も速度効率モンスターだったから、こんなコツコツやるの久々だな」
「その力を使いこなす前に……この牢から脱してみせましょう」
「脱出することには俺が託した人たちが、詰みの状態まで持って行ってくれてるだろうさ」
「そんなハッピーエンドにするわけいきませんね」
「俺だけで見たらバッドエンドな気もするんだがな!」
――ボウッ!!
真紅の炎が辺り一帯に広がる。
俺を主人公として見るのなら、けっこうなバッドエンドではある。
だが普通の主人公が物語序盤から最強とも呼べるような力で好き放題やれるなんてことは無いだろうから、大暴れしつつも途中退場して後に色々残していく迷惑ポジションだったってことだ。
ただ主人公って柄でも無いし、『大罪』の力で好き放題暴れていられた頃は、なんだかんだ楽しかったので後悔なんてのは無い……と言いたい。
「愛火を見て『火』というシンプルな力羨ましいなんて言ってたけど、実際自分で使うってなると大変だな……シンプルな『火』じゃないけど」
「それだけ貴方が『大罪』に甘えて来たってことですね」
「あぁ~……序盤から手に入る最強チート最高ッ! 味方が最強なの本当楽しい!」
「………」
「なるほど……これが想定してないバランスブレイクが発覚してしまったときの制作側の顔なんだな」
「100万回は滅ぼしてあげます♪」
「疲れたから交代制だから安心だな」
後方でのんびりと自分たちの力の伸ばしどころについて語り合っているウチの面々は俺が疲れたら順番で交代してくれることになっているので、疲れるまでは好きなだけ尾の力を試すことができる。
新しい能力やら武器が手に入った時、ゲームをしていてウキウキワクワクする最高の場面だと俺は思っている。
特に集団の敵を蹴散らせるぐらいの広範囲能力が手に入ったときは時間を忘れてレベル上げしてたもんだ。
レベル上げして強くなりすぎて面白くなくなってしまったこともあったけど、『女神』は早々飽きることは絶対無いだろうくらいに強いので……楽しい時間は長そうだ。
「『原初の魔王』と『女神』に対する人間の仕返し物語……まずは第一幕を終え、こっから第二幕だな!」
「なんとも呆気なく終わらせてあげましょう……というか貴方は離脱組では?」
「可能性は一応あるからな……『大罪の魔王ソウイチ』先生の次回作の活躍にご期待くださいませだな」
「なんだか元気になってきましたね」
「少し楽しくなってきたからな」
託した人たちが上手くやってくれるのを信じて、俺は楽しくやらせてもらいつつも自分の力を尖らせていくとしよう。
人間としての過去は燃やしてしまったが、化け物なりに出来ることは今後もあるかもしれないしな。
この世界はゲームとしての出来は本来良いモノだったのかもしれない。
だがガチャやら配合要素なんてのは本当にしっかりやらないとバランスなんてのは簡単にぶっ壊れてしまう。
それもゲームの楽しみとして考えているのならば良いのだが、じっくり長く楽しんでほしいと思っている場合は良くない感じに転がってしまうことが多い。
ゲームってのは色んな楽しみ方をしている人がいるから全ての人の期待通りのゲームを作るなんてのは難しいのだが、積み重ねいく歴史が良いゲームを産み出すもんだから……『原初の魔王』と『女神』の悪行から感じるモノがあって、命をかけなくても最高の体験が出来るようなゲームを作ってほしいもんだ。
「クソゲーはクソゲーで味がして良いもんなんだけどな」
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