第6話 『曲げぬ』信念
フェルの『
チリチリと燃えるような痛みが全身を駆け巡ってるのが気になるが、さすが大魔王なだけあって、この程度なら問題無さそうだ。
さすがにフェルは今まで視られすぎていたようで、どのスキルも『女神』には通用せず、残念ながら掠り傷すらつけることは叶わず、『女神』にまずは一体とドヤ顔されてしまっているが……俺視点で言えば仕事は完璧にしてくれた。
俺は『罪の牢獄』の階層を
「むぅ~……すぐ階層を切り替えられるのは厄介ですね。魔物を殺そうとしたら、すぐ切り替えられるのは嫌です」
「これでも俺の奥義みたいなもんだからさ」
「まぁ最終的に貴方を殺せば終わるので……無駄に仕掛けてこない限り殺すのも疲れそうなので考えモノですね」
「色々拘ってた割には……そこは適当なんだな」
「主人公が死ねばゲームオーバーであるならば……ラスボスは主人公を狙い撃ちすることだけで容易に終わらせられますから」
「それもクソゲーなんだよ」
俺も『
真夜中の庭園、中央に建設された屋敷の屋根に足をフラフラさせながら座る『女神』を、俺の横で大量の銃火器兵器を召喚しながら眺めている。
主人公が死ねばゲームオーバーになるタイプのゲームは稀にあるが、ゲームではヘイトがチームにバランスよくいったり、こんな意味不明な耐久力と不認知による瞬間の透明化や敵スキルの模倣なんていう壊れた力の無いラスボスが普通だ。
「普通は主人公たちが頑張って鍛えてきた力を存分にぶつける相手なのがラスボスなんだけどなぁ……強いけど鍛えてれば負けないのがゲームのお約束だろ?」
「ふふっ……それはラスボス後に強い隠し敵が控えている前提ではないですか? ラストに控えている大物ですよ。普通では勝てない強大な存在こそ正義です」
「本当に相容れないな。……それでウチのアマツに何したんだ?」
「その子は情報が少なかったので……少しの間、私の存在を認知できなくしておきました」
「……なるほど。そこら中に展開されてる銃火器兵器が反応してないのは、アマツが敵を認識できていないからか」
屋敷を囲むように展開されている銃火器兵器はアマツが敵を認識した瞬間に同時作動し、敵を蜂の巣にする仕組みなので、アマツが『女神』を認識できていないのならば……残念なことに作動しない。
『
屋敷の屋根で肩の力を抜きながら……俺が色々考えてるのを楽しそうに眺める『女神』に、まずは一手叩き込んでやらないとな。
「ちなみに対象指定のスキルは……私を認知していないと絶対に通じませんよ♪ ちなみに私の声を認知できていません」
「何が知らないだよ! 知ってんじゃないか!」
アマツの『
今まで1~2回しか見せてなかったが、しっかりと把握されているようで……まさか階層切り替えからすぐに詰ませてくるとは思わなかった。
正面から粉砕するラスボス論を堂々と語っておきながら、戦闘開始直後に詰ませに来るとか、あまりにも面倒なラスボスすぎる。
「アマツ……見えもしなきゃ聞こえもしてないだろうけど、屋敷の屋根にお客様だ。認知できない理を背く時間だ」
『逆理』
「『
――ドドドドドドドッ!
アマツの無機質な音声が鳴り響く。
少しでも『女神』にアマツの邪魔をさせまいと『
――ガシャンッ ドドドドドドドッ!
アマツが展開していた銃火器兵器たちが一斉に起動し、屋根上で寛いでいる『女神』にむけて銃弾を嵐のように射出しはじめる。
鼓膜が破れてしまうのではないかと思うような怒涛の轟音を響かせながら、暗闇の庭園に佇む屋敷を木っ端みじんに蜂の巣にしていく。
アマツが使用した『
俺もよく理解できていないが、自身に不利な影響を与えている力を解除すると同時に、声を聴いた者は数秒間アマツ自身に影響を与えられなくなるという認識で良い。ちなみに俺もアマツに影響を与えられなくなる。
対象指定でなく、自身と声を聴いた者に効力を与える『
「『
――ドゴッ!!
銃弾の嵐に晒されていた『女神』から放たれたのは全てを吹き飛ばす衝撃波。
轟音が響いた時には、すでに俺の身体は吹き飛ばされており、庭園の木々を粉砕しながら地面を抉り転がっている状態だ。
踊る視界の中で、バラバラになって俺と同じように吹き飛ばされるアマツの銃火器兵器と、一撃でボロボロに破壊されたアマツ本体が何度か映る。
勢いが弱まり地面に転がりながら俺は、あまりの衝撃に逆に冷静になれたことで次に備えて一手打つことにした。
激痛が走る体を起こし、瀕死のアマツに近づき手を添える。
「俺は犠牲の『大罪』、ラスボス様は無情なる破壊の『大罪』ってとこだな。ありがとうアマツ……見ててくれ」
――ゴウッ!
アマツの身体と俺の右手が真紅の火によって焼かれていく。
真名持ちではないが、Sランク以上で初めての仲間の犠牲。
今まで運よく誰も死なずにやってこれたが、ここにきてラスボス様にアッサリと殺されてしまった。
配下全員で殺しに行かないのが悪いなんて言われてしまいそうだが、階層を時間を少しずつかけて降りていくことにも意味があるんだと自分に言い聞かせる。
真紅の火に焼かれ、灰になっていくアマツが俺の燃え盛る右手に吸収されていく。それと同時に全身の痛みが少しだけ増した。
全身の痛みとアマツを失った悲しみから逃げ出したいところだが、ゆっくりと迫ってきているラスボスを無視することはできないので、世界を次の階層へと切り替えるとしよう。
「『犠牲の火』を第2尾に……どんどん罪作りな男になってくな」
世界は守護神が構えてくれている闘技場へと移り変わる。
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