第7話 『憤怒の雷神』
――バチッバチッ!
『女神』の『
真名持ちでは無いにしても、ウチの陣営が幹部クラスの仲間を失ったのは初めての経験であり、ラスボスが目の前にいるってのに……押し寄せるように悲しさと苦しさが俺に襲い掛かってくる。
こうもアッサリ仲間を失うことになるなんて……最終的に糧にしたのは俺だが、『女神』の攻撃力を甘く考えてた。
「今まで貴方がやってきていた面白くない死。自分が受けてみてどうですか? 本当に面白くないでしょう?」
「あぁ……そうだな。俺も死にかけたし」
「髪に続いて次は右腕がボロボロになっていますね。自分を痛めつける癖にでも目覚めましたか?」
「最悪隠しててきたとしても、実は全部手札が知られていた場合の策みたいなもんだ」
「ここまで来ての強気♪ 少し力を見せてあげてお仲間を葬ってあげたらどうなるかと思いましたが……心は頑丈みたいですね」
「背負ってるもんが違うんだよ」
『『雷雹剣雨ヴァルテクス』』
「あら?」
――ドドドドドドドッ!
アヴァロンが天から雷剣の雨を召喚する。
『女神』に向かって降り注ぐ雷剣の雨だが、『女神』の周囲に見えない壁があるかのようで全ての雷剣が防がれる。
受け身に回って粉砕するっていう『女神』の発言を少し信用してしまった俺のミス。おそらく先ほどの『
ここまでダンジョンの破壊され具合でアヴァロンは良い感じに仕上がっているが、アヴァロンの戦闘スタイルは知られているだろうから、俺も素早く準備してかないといけない。
「大事な仲間を失うことなく……完璧な冒険ってのを目指したかったんだけどな」
「そんな起伏の無い物語、ただただ主人公陣営が強いだけの展開に……飽きてしまって終わりでしょうに。美しくありません」
「それも結局遊戯の世界だろ? こっちはアンタと違って命懸けだから、そりゃ失いたくないもんだらけさ」
「そんなギリギリの世界、そんな中で激しい波があるからこそ美しくなるのです。貴方のような魔王が居ては『勇者』陣営が輝くことができず、東雲拓真のような者を召喚せねばならなくなります」
「ああ言えばこう言う合戦だな。結局お互い美しく思っている展開通りにしないと気が済まないってわけだ」
「駒は駒らしく我らが楽しめる世界を創れば良いのです♪」
『『雷神招来』』
――ドッ!!
白黒雷の化身へと姿を昇華させたアヴァロンが雷速をもって『女神』へと迫っていく。
アヴァロンが時間を稼いでくれている間に俺は先ほどの問答を振り返りながら、第3尾の準備へと入る。
「これでどうでしょうか!」
――ギャリギャリギャリギャリッ!
『女神』の両腕がメルの『
大量の蛇腹剣が雷速のアヴァロンを迎撃するように展開し襲い掛かる。
アヴァロンは凄まじい空中機動と斥力で次々と迫りくる蛇腹剣を弾き飛ばしていく。
そして呑気に魔力をチャージしている俺の方にも大量の蛇腹剣が襲い掛かってくるのは当たり前の話であって…。
『『
――バチバチバチッ!
蛇腹剣の大群をアヴァロンが大盾で防いでくれる。
蛇腹剣たちを弾いた瞬間、大量の雷枝が蛇腹剣と『女神』へと襲い掛かる。そんなカウンターに対し、さらに『女神」は自身の身体の一部を蛇腹剣に変えて、伸びてくる『
カウンター合戦凄いけど、大魔王になった俺が目で追うのがやっとであり、展開が速すぎて怖いが、俺は俺でやるしかない。
『『
「さすが『原罪』というやつですね! これを全て知れば、今後の『原初』との遊戯で『大罪』のような輩が現れても対処できそうです!」
――ドシャァァァァンッ!
「おわッ!?」
触れた者全てを消し炭にする雷神の剣撃と、破壊されても次々と湧き出てくる『女神』の蛇腹剣が激しくぶつかり合い、闘技場を吹き飛ばさんとするレベルの衝撃波が巻き起こる。
第3尾の準備に集中していた俺は情けない声を思わずあげてしまいながら、闘技場の壁際まで吹き飛ばされてしまう。
先から吹き飛ばされて転がってばっかだが……とりあえず死ななきゃ大丈夫だ。
「凄い力ですね♪ この火力で『大罪』の魔物1番手なのは衝撃的です」
「俺が決めるってよりも誰がどこ守りたいのか自主性だからな」
「『
「俺たちとしては次に繋げてやるわけには行かんのだよな」
「……ここで私に勝っても、今後行われる遊戯は止められませんよ?」
「とりあえずやってみるだけださ」
「戦いが幕を開けてから、地面をコロコロ転がってボロボロになっている大魔王の言葉は説得力がありますね♪」
『『雷神轟断』』
――ガシャァァァァンッ!!
『女神』の身体から伸びる大量の蛇腹剣が一斉に真っ二つに粉砕される。
一瞬見えたのはアヴァロンが白黒雷を纏った剣を一振りした姿だけ、さすがの速さに『女神』も驚いたのか、俺のことを煽っていた気分良さそうな顔が一瞬にして真剣さを纏った表情に変わる。
他者への被害を気にせず、自分の快楽のためだけに全てを押し付けて楽しみふざけた行為。
『女神』ほどじゃないが、俺の保身と計画のためだけに勇者やら同期の魔王を殺したので、両成敗にはしたくないが似た種類の『大罪』としてここに刻もう。
「味を楽しむ味覚……五感の1つを供物としよう」
――バチバチッ
俺の身体の一部が『黄金の火』によって燃え始め、舌が灼けるような痛みに襲われて思わず顔をしかめてしまう。
自分を燃やして苦しんでいる俺を見て、さすがの『女神』も理解不能というような顔をしており、とりあえず様子見で居てくれているようだ。
「『幸壊の火』を第3尾に……ありがとうアヴァロン、次の世界に行くよ」
「……勝手に瀕死になっていきますが……本当に何をしているのですか?」
飽きれる『女神』の言葉をスルーし、俺は次の階層へと世界を切り替えた。
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