第3話 『世界創造』
……ふわふわと自分の体が宙を浮いている感覚がある。
少しずつ意識は明確になってきている。上手く体が動かず重い感覚がある。
目を開けてみると、全てが白の空間に俺が寝ていたベッドだけある空間だった。
そして何故かベッドで横になっている自分がいる。なんだかどっかでこの感覚を味わった気がするな。
「なんだ? どこだここ?」
ゆっくりと体を起こしてベッドの上からキョロキョロと辺りを見渡す。
この石造りの部屋には見覚えもないし、なんでこんなところにいるんだろうか?
冷静になりたくて、少し自分のことを考えてみるが、昨日ポラールとハクの模擬戦を観戦しながらメルと楽しく戯れてから寝た記憶しかない。
訳がわからず、徐々に焦りと不安がこみ上げてくる。
――フフフッ
そんなときに囁くように聞こえてくる不気味な笑い声。
どうなってる? なんでこんなところにいるんだ? 俺は捕らわれているのか?
「ようこそ『大罪の魔王』、我が『女神』との最終決戦を楽しみましょう」
「気持ちよく寝てたのに……こりゃ無いぜ」
「油断は禁物でしたね。この世界は隅々まで我らが創造した世界ですよ? 自分のダンジョンだからと言って安心してはいけません」
「『七元徳』のやつよりもクソゲー臭がするぞ」
「この空間は私が新たに創った世界、あの世界からは認識することはできないので辿り着くことは無いですよ?」
「……こんな最終決戦で良いのか?」
「貴方が今まで私の楽しみを潰してきた応報です。どうですか? 面白くないでしょう?」
「最高の気分だ」
宿屋で休んでいたら突然ラスボス目の前に転移させられた。
こんなのクソゲーにも程がある。仲間も消えて単騎で突然ラスボスに挑めなんて普通にヤバすぎる。
しかも戦場はラスボスが創造した場所であり、仲間が外から乱入してくる可能性は無いと言い切れるレベルの場所である。
最高にクソゲーだな。
『女神』からすれば、俺が今まで敵さんに対してやってきた仕打ちの応報らしいが、ここまでのことをやった記憶は無いんだけどなぁ。
ただ『七元徳』に1度やられているので、こんなピンチの場面でも少し冷静でいられる。また腕が吹き飛ばされるんだろうか?
「思ったより落ち着いていますね。もしかして私が弱いと思っていますか?」
「俺が今まで戦ってきた相手とは比べ物にならんぐらい強いんだろ? まぁ『七元徳』に1度やられてるから慣れたかもな」
「泣き叫んでくれてもいいんですよ?」
「一応大魔王らしいからさ……そんな醜態晒せないだろ?」
「最後の最後まで人を楽しませれない人間ですね。次の遊戯は互いに選択者を誤らないようにしなければいけません」
「お前らの遊戯に巻き込まれた俺たちとしては、たまったもんじゃない」
「貴方たちの気持ちなど知ったことではありません」
「まぁそうだろうな」
『認識できない』『視た能力をアレンジして使用できる』『実験体を創造できる』『他者に力を付与できる』『世界創造』、ここらへんが『女神』が今まで見せてきた能力であり、ここから俺に叩き込まれるであろう力のラインナップだ。
まぁ絶対に俺の仲間たちがこの白い空間に来ることが無いって分かってるから、こんなのんびりと会話してるんだろう。
『七元徳』の時に見せた手品は通じないと見ていいし、俺がやれる手札も知られてるだろうから、やっぱり俺が1vs1で戦うのは負け一直線だからダメだな。
「やっぱ大魔王なんて言われても、一人じゃどうにもならんな」
「そんな存在が、今回の遊戯を台無しにしたのですから……困ったモノです」
「それは『大罪』を託した『原初』に言ってくれ、それと俺は最強勇者ほどぶっ壊れてない」
「遊戯をつまらなくする力で言えば、貴方は過去最高でした。それも圧倒的にです」
「良い学びができて良かったじゃないか」
「悪知恵と運が重なると……ここまで酷い結果になるという良い学びですね」
「ちなみにこっから正面での殴り合いのルートが待ってるのか?」
「私に殴り合いで勝とうと言うのですか?」
――ゴゴゴゴゴゴゴッ!
冗談ですやん。
思わずそんな言葉が漏れそうになってしまうような殺気が『女神』から放たれる。『七元徳』がステータス信仰の武闘派だったので、『女神』もそっち路線かと思ったことはあったけど、まさかポラール以上の武闘派の可能性は考えてなかった。
外部から助けは無く、殴り合いでも勝てそうになく、俺の能力は大体知られているっていう最高に絶望的な状況だ。
そんな中でも割と冷静でいられている自分に少し驚いている。
『女神』が今のところ殺す気は無く、どう苦しめようか考えていてくれるから、その間は大丈夫そうだという安心感が少しあるからだろうか?
「ちなみに俺をどうやって苦しませて殺そうとしてるんだ?」
「そうですねぇ~……貴方の持ちうる手札全てを粉砕して、絶望に沈む姿を『原初』に見せてから殺すのが1番良いですね」
「性格終わってるだろ」
「貴方に言われたくはありません。それくらいしないと今回の鬱憤が晴れません……『原初』の選択者なので私が負ける可能性が僅かにありますが、それは仕方なしです」
「どんだけ嫌いなんだよ……俺のこと」
「貴方を好む要素はありませんでした。自分が楽しむために創造した世界を台無しにされたのですから」
「まぁ……俺もお前のことが大嫌いだからお相子だな。勝手に巻き込んだクソ野郎を好む要素は無いからな」
「……威勢が良くなってきましたね」
「口だけはいつでも達者なもんでな。『
「……なるほど」
――ゴゴゴゴゴゴゴッ!
『大罪』の魔力が白の空間を支配する。
本当は最後の切り札として使いたかったが、これ以外だと完全に殺される未来しか見えなかったので、いきなりだが俺が使える最強の札を使わせてもらう。
外部から入ってこれそうに無いみたいなことを言っていたので、とりあえず内側からダンジョンを召喚してこじ開けさせてもらう。
俺の全部を粉砕して勝ちたいと言っていたので、俺の全てである『罪の牢獄』を楽しんでもらおう。これがダメなら勝ち目なんて無いからな。
白の空間に現れた『罪の牢獄』の入り口が、『女神』を吸い込み、世界をダンジョン内へと変化させた。
「ようこそ『罪の牢獄』へ。俺の集大成楽しんでってくれ」
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