第24話 『未来への一手』
『皇龍』と最強勇者の激突、2人の激しい攻防によって流れてくる気が聖都でもしっかりと感じられるほど濃いモノになってきている。
『皇龍』の魔力は普通の人間ならば立っていることも厳しくなるような圧迫感があり、最強勇者はどこか安心感のある気という対照的な両者。
そして俺たちに近寄るなと言わんばかりの気が2つ。
浮かぶ『皇龍』のダンジョン近くに感じるのは『女神』と『原初』という世界の創造者である2人の気。
さすがにあの2人を無視してまで『皇龍』と最強勇者の戦いに横やりを入れようとは思えない。
「まぁ……最強勇者的にはコウリュウを倒しただけでも良い助けになったか」
「『皇龍』の魔名は簡単には行かないようです」
「さすがのソウイチでも……今回ばかりは思い通りに行かないみたいですね」
「あれは無理だ。ウチの面々全員揃ってても行きたくない」
「勇者と大魔王の決戦ですから……誰しもが注目するものなので、わざわざ直接観戦しに来ることも不思議ではありませんね」
『皇龍』の魔名は諦めて、とりあえず最強勇者が負けそうになった場合だけ頑張るとして、ここで観戦しながら最後になりそうな『大罪』だけ考えておくか。
ウチのいる魔物たちの能力が全て『女神』にバレてしまっているとしたら、1体の新しい魔物でどうにかなるのだろうか?
さすがにそんな全部見えちゃう力があるのなら、今まで『女神』陣営がやってきた能力暴こう様子見作戦の意味が見えなくなるので、そんなこと無いと信じておこう。
今まで見せてきた能力で、模倣されると面倒なのが『原罪』とポラールの天獄が厄介なので、それらに強く出ていけるような魔物になってくれるとありがたい。
「『大罪』『神狐』『火焔皇』の3つで決まり……そう言えば『聖魔物』探ししなくちゃな」
「あまり魔物を増やそうとしないソウイチらしくない手段ですね」
「能力見られただけでコピーされるんだからな。まったく新しい手札用意しないと厳しい展開が見えてるから仕方ない」
「『火焔皇』でいいのですか? 属性を決めてしまうようなモノですよ?」
「狐と火の相性の良さはリンさんとこの魔物見て確信したから良いのさ」
「『神狐』の大魔王は火よりも化ける魔王だと聞いていましたが?」
「メインは化かすことなんだろうけど、『大罪』『神狐』『火焔皇』の3つの繋がりの良さ……正直今までで1番レベルにしっくりきてる」
ウチの面々で1つの属性メインで戦っていると言われて出てくるのが、最高の雷を扱うアヴァロン先生だが、別に使用属性が偏っているからといって弱いなんてイメージは無い。
アイシャ的には不便に感じているのかもしれないし、隣の芝生は青く見える状態なのかもしれないが、アヴァロンを見ていると1つの属性極めるってのは、強いしカッコいいように思える。
『大罪』『神狐』『火焔皇』の3つを配合すれば、確実に火属性をメインとした厄介な能力持ちな狐が誕生するのが目に見えている状態、それでも凄い期待が持てるんだから、この3つの魔名のポテンシャルは異常だ。
『大罪』『皇龍』『火焔皇』の3つで、『皇龍』さんとこのコウリュウを目指すのも良かったんだけど、『大罪』とドラゴン系統は後々考えると相性良くなさそうなので、もう考えるのはやめておこう。
「『原初』が俺にガチャ引かせてくれなくなったから困り気味なんだ。毎日ガチャ引きまくって気持ち良くなる生活したかったのにさ」
「私は定期的に引けているので……今までの借りを返す時なのかもしれませんね」
「正直心のどこかでアイシャなら助けてくれるかもなんて思ってました」
「私をわざわざ誘ったのも……そういうことですか」
「……」
「まぁいいでしょう。余っているモノに執着しても仕方ありませんし」
「アイシャ様万歳! アイシャ様万歳!」
「……まったく」
『皇龍』と最強勇者の戦いが終われば、俺も最強勇者もどちらも最終フェーズに入ることが出来る。
どちらも『原初』と『女神』との直接対決だけを考えて準備する期間、最強勇者はそこまで準備するようなことがあるかどうか謎だが、俺の方はこれでしっかり万全の状態で着地することができそうだ。
『大罪』が増えるってことは、俺も使える力が増えるってことだからな。
確実に俺は大した戦闘力は無く、魔物頼りだと思っている『女神』様にギャフンと言わせてやらないとな。
自分たちが今まで好き勝手迷惑……迷惑で済まないことをやってきたことを後悔させてやれるまで戦ってやる。
俺の家族や恋人を巻き込みやがったことが、どれだけの『大罪』かってのを刻み込んでやらないといけない。
「今までもそうだったけど……負けられない命懸けの戦いって、なんか心躍るモノがあるな」
「なんだかソウイチにしては珍しく魔王らしい発言ですね」
「……そういえば大魔王だったな俺」
「しっかりしてください」
「大丈夫大丈夫、今ならどんな勇者がきたって殺しきってみせるさ」
「東雲拓真が来てもですか?」
「ビビりはするけど……殺し合いで『罪の牢獄』は負けないさ。ただ敵を殺す力に長けてるのがウチだからさ」
「……自信が無いよりは何倍も良い状態みたいですね」
「こんな激闘の気に当てられたら昂るのも仕方ない」
「……少し長くなりそうですね」
「どっちも耐久力モンスターの一面もありそうだからな」
『皇龍』と最強勇者の殺気が深みを増していく。
間違いなく、この世に存在する生物で最強格の2人の激戦……この空気感を忘れないようにしておかないとな。
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