第23話 『絶対的存在』


 『理』へと導く力『真覇渇望・原罪アヴェスター・を抱け怒りの理までディエスイーラ』。

 まぁ難しく言っているのかもしれないが、簡単に言えば対象者を『滅び』へと向かわせるだけの能力であり、効果範囲に入ってしまえば、『絶対』系統の防御能力をも貫通できるってだけだ。


 初見だと大体殺せる技だが、発動した瞬間が分かりやすいのと、距離をあけられると不発に終わってしまい、再度発動するには天獄を昇り直さなきゃいけないってのが難点だ。

 ポラールのことだから、1度目で失敗した場合は『原罪』へ移行するだろうし、大抵の相手は『天獄界・ヘル&ヘブン  第十天・至高天ブラゾン・エンポリオ』に辿り着く前のどこかしらで死んでいる。もしくは『絶望的デッド・エン六法則ド・シックス』の対象になるだろうから『真覇渇望・原罪アヴェスター・を抱け怒りの理までディエスイーラ』まで行かないだろう。


 コウリュウは俺の元世界の逸話がポラールの能力元と知っていたようで対策してたみたいだけど、『真覇渇望・原罪アヴェスター・を抱け怒りの理までディエスイーラ』は、その情報から外れたモノだから対処出来なかったんだろうな。



「さすが……『罪の牢獄』のリーダー様だよ」


「ただいま戻りました♪」



 コウリュウが完全に滅んだのを確認したのか疑わしい速度で帰還したポラール。

 アイシャなんかはポラールの力に若干引いているし、ガラクシアやイデアなんかは『原罪』を使わずコウリュウを沈めたことに対し、口には出してないがさすがだなと言ったような顔をしている。


 当の本人は久々にやりたい放題できて満足げな顔をしている。

 『至高天・堕天奈落輪廻パラダイス・ロスト』はどれか1つでも完走するのが色んな意味で大変だから、実戦でそれを成し遂げたことに満足しているみたいだ。


 

「『原罪』使わないルートで行ったのは驚いたよ」


「私が簡単に『原罪』を切ってしまうのは今後に響くと思いましたので」


「ポラールは『真覇渇望・原罪アヴェスター・を抱け怒りの理までディエスイーラ』の評価低いよなぁ」


「アレは発動させるまでに時間がかかりすぎてしまいます。やはり最初のスキルで殺しきるのが理想ですので」


「本当マスターの思想に染まってるね。昔はもう少し武闘派ゴリゴリだった気がするのに」


「そうだよね~♪」


「……我らが主の考えは第一にと言うモノです」



 コウリュウがポラールの『至高天・堕天奈落輪廻パラダイス・ロスト』と似たような能力、自分好みの環境へと世界を変化させつつ戦うスタイルかつ、様々な属性を活かした戦略を主軸として立ち回ってくるタイプだったのは正直予想してなかった。

 『至高天・堕天奈落輪廻パラダイス・ロスト』を耐えきる頑丈さは、今まで戦ってきた敵の中で飛び抜けてNo.1だったのは凄いけど、どちらかと言えば火力で押してくるタイプなのかもって予想もあったからなぁ~…。


 相手に合わせて自在にスキルをぶつけれる万能性はイデアに近しいところがあったので、もしかしたら最強クラスの竜種はそういうジャンルになりやすいのかもしれない。



「もう1つの方は長引きそうですね。こちらまで流れてくる闘気がどんどん濃くなってきていますね」


「あぁ……コウリュウを見た感じだと、『皇龍』本体は凄まじい頑丈さなんだろうな」


「あそこまで天獄の各階層を受けられたのは……『罪の牢獄』にはいない防御型の魔物でしたからね」


「ウチは殺傷力に特化した形だからな。今まで見てきた『皇龍』の魔物たちから傾向も読めるけれど、最強勇者との相性はどうだかな」


「行かれますか?」


「邪魔になりそうだったら、さすがにやめておくけど……最強勇者が不味い状況になったら行こうかな」



 浮遊している敵には苦戦するかもしれないが、それでも攻撃を当て続けるだけで確実に有利になり、攻撃が当てれるような運命に近づけるような力もあるので、『皇龍』のスキルを捌ければ負けない力は最強勇者にあると思う。


 シャンカラに初見で弱点を見抜かれたので、『皇龍』にも遠距離スキルでチクチクされているんだろうなと思うと可哀想だなと感じるな。



「ここで俺が速めに介入して台無しにしたら、『女神』が発狂しちゃうかもしんないから……それも少し見たいけど、さすがに怖いか」


「『原初の魔王』と『女神』の楽しみどころなようですが、我々も『皇龍』の真名を求めているので仕方ないのでは?」


「乱入したらブチ切れた『女神』が戦力を投入してくると思わないか? わざわざ直接見に来てるんだぞ? それに『原初』もどうせいるだろうしな」


「ここでソウイチは待機しますか?」


「あぁ……せっかくアイシャもいるんだから、ちょっと話でもしながら今後についての相談でもどうだ?」


「ソウイチが居ればダンジョンにいなくても、戦闘が観戦できるので便利ですね」



 『女神』本体がここに来てるってのが全てを面倒にしている。

 俺たちが来たことで、『女神』が戦力を派遣してくるのは読めていたけど、まさか本体が来るなんて可能性はあっても切る選択肢だと思ったんだけど、残念ながら上を行かれてしまった。


 ここにも十分戦力は揃っているけれど、さすがに万全の状態でないときに挑むのはリスクが大きいし、俺たちらしくないので……『皇龍』と最強勇者の戦争は見守るルートになりそうだ。


 『原初』が面白がって強制的に参加させられそうな未来もあるけれど、さすがにそこまでエンターテイナーじゃないだろう。



「……最後に近づいてきてるな」


 

 

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