第18話 『最高の二人』


――ギャオォォォォォォォッ!!



 黒い雲が聖国を覆う暗い空。

 数えるのが億劫になるくらい、多種多数のドラゴンたちは天地を占めている。


 聖国にいる人間も魔物も魔王も全部喰い尽くす勢いで侵略するドラゴンたち、『皇龍』が攻め込んできてそこまで時間は経過していないが、このままでは完全に聖国が落とされるのも時間の問題だと思えるほど、ドラゴンたちの侵略は圧倒的だ。


 竜種の雄叫びが木霊する空。

 震える戦場に俺はウロボロス・イデア・シンラ、そしてアイシャと一緒に聖都にむけて空を進んでいた。


 すでに様々な竜種やら『皇龍』の同盟魔王とも思われる奴らと戦ってきた。



「……聖都に近づくにつれて竜種が濃いなぁ」


「マスターが大好きな高レベルのドラゴンが多くなってきたみたいだね」


「……貴方の魔物が目立ちすぎて、もう私たちのことしか見ていませんよ」


「ウチのウロボロスは目立ちたくない性格だけど、居るだけで目立っちゃうから仕方ない」


「大量に用意してきたネメシスたちも、そこそこ撃退されちゃってるし……頑張るしかないね」



 ガラクシアやポラールといった面子も一緒に居てくれていたんだが、あまりのドラゴン軍団の多さに、聖国各地に散らばることになり、イデアとウロボロスが用意してくれたネメシス軍団も、ここまでの戦いでかなり減ってしまった。


 ガラクシアたちはある程度済んだら合流するか、『罪の牢獄』に帰還するって話になっているから安心だとして、そろそろ俺たちも頑張る時が来たみたいだ。


 イデアとウロボロスはネメシスを大量創造しながら、自分たちが撃墜されないように守り重視で立ち回っている。

 シンラは俺たちの近くにはいるんだろうが、あまり姿を現さないようにしながら敵の数を減らしているはずだ。



「来い『大罪の天魔銃アポカリプス』、そして『美徳の堕落天アビス』」


「……参りますッ!」



――ドンッ!



 俺は武器たちを召喚し、アイシャはウロボロスの頭上から勢いよく飛び立つ。

 視界を埋め尽くすようなドラゴンの大群に向け、凄まじい『火』の魔力を撒き散らしながらアイシャが猛スピードで突貫していく。


 『美徳の堕落天アビス』を4基アイシャを援護できるように飛ばし、俺は『大罪の天魔銃アポカリプス』を天に向けてスキルを放つ。



「来たれ……『明けの明星ポースポロス』、そして宿れ『滅亡輪廻の煌輝ヘルカイト』」


「『黄金ト焔害ノ剣レーヴァテインッ!』」



――ドドドドドドドドッ!



 天から降り注ぐのは、触れればデバフを付与するカプセルの大群である『明けの明星ポースポロス』、そしてアイシャには『美徳の堕落天アビス』に囲まれた者の攻撃スキルのダメージ倍率を1.2倍にするバフを付与できる『滅亡輪廻の煌輝ヘルカイト』を使用した。


 さすがのドラゴンたちも大量の小さなカプセルを回避し続けることは難しいようで、次々とデバフを付与されていく。


 降り注ぐ『明けの明星ポースポロス』を『美徳の堕落天アビス』の保護とバフで無効化しているアイシャは、デバフの入ったドラゴンたちを次々と『黄金ト焔害ノ剣レーヴァテイン』で屠っていく。



「ん~……竜種って属性耐久も最強クラスなのに、それを無意味に燃やしていくアイシャさすが! シンラッ! 俺も行く!」



――トンッ!



 耐久力は間違いなく最強と言える種族である竜種たちを燃やし尽くしているアイシャに少し引きながら、俺はウロボロスの頭上から飛んで、どこからともなく現れたシンラに乗せてもらう。


 凄い勢いで視界に映るドラゴンを灰に還しているおり、最早『黄金の火』を纏うアイシャに近づける奴らがいるのかどうか怪しいが、すぐにでもフォローできるように、シンラに乗って距離感を保っておく。


 シンラの能力でも、アイシャの『黄金の火』は吸収できないので、近くに居ても大丈夫だ。



――ギャオォォォォォォォッ!!!



「『光を絶やせ天火踏逸コンテムプティオー』」



――ゴシャァァァァンッ!



 『黄金ト焔害ノ剣レーヴァテイン』片手に暴れ回るアイシャに痺れを切らしたのか、ドラゴンたちが一斉に『竜の咆哮砲ドラゴンブレス』で反撃に出てきた。

 咄嗟のことだったので、『生きる火』で対象をドーム状に覆う『光を絶やせ天火踏逸コンテムプティオー』を発動してアイシャを護る。


 大量の『竜の咆哮砲ドラゴンブレス』をなんとか『光を絶やせ天火踏逸コンテムプティオー』を防ぐことに成功したかと思いきや、再度ドラゴンたちはブレスを吐こうと魔力を蓄えている。


 

――ゴウッ!!



 燃え盛る『生きる火』たちが『光を絶やせ天火踏逸コンテムプティオー』の内側へと収縮していく。

 

 炎が集っていく中心地になっているアイシャは瞳を閉じ、『光を絶やせ天火踏逸コンテムプティオー』で発生した『生きる火』、そしてドラゴンたちが発した『竜の咆哮砲ドラゴンブレス』の余波で地上へと降り注いだ火を吸収していく。


 全ての火がアイシャへと集った時、アイシャの身体から大量の『黄金の火』とともに、凄まじい衝撃波が広がる。


 全てを破壊し燃やし尽くすのではないかと思わせる、凄まじい圧と『黄金の火』を放出するアイシャ、火を吸収してバフを受けたアイシャにさらなる強化を施してみることにする。



「『神が求めるは不朽なる身サーナーティオ』」


「聖都までの全ての竜を灰と化しましょう」



――ゴゴゴゴゴゴゴッ!



「『焔天にて揺れるスティグメ・儚く燃ゆる黄金卿エル・ドラード』」



――キィィィィィンッ!



「ハァァッ!?」



 思わず情けない声を出してしまった。


 甲高い金属音とともにアイシャから放たれたのは黄金に輝く細いレーザーのような線、ドラゴン一体一体にむけて高速で伸びていく光線は次々とドラゴンたちを貫いていく。


 光線に貫かれたドラゴンたちの身体が末端から黄金に輝く灰と化していく。


 空を舞う輝く灰がアイシャの身体へと吸い込まれていき、さらに魔力と『黄金の火』の出力を増していく。



「貫かれたら灰になるし、灰になった奴からアイシャに吸収されて回復されるとかクソゲーかよ」


「どうせダンジョンから次々と出てくるのですから力は温存しながら行きましょう」


「俺が『生きる火』と『破壊の火』をアイシャに吸わせ続けてバフする戦法が正解ってやつだな」


「最高のデュオというのは置いておいて……まぁ相性は悪くないのは事実ですね」


「俺が火力出さなくて良いってのがいいな。補助技は揃ってるから安心してくれ」


「……発言が頼りないですよ」


「ちなみに今数百体分吸収してたけど……どんな配分?」


「かなりプラスですよ。『焔天にて揺れるスティグメ・儚く燃ゆる黄金卿エル・ドラード』はそういうスキルですから」


「今ので『皇龍』は俺たちにギラギラした視線でも送ってくれてるんじゃないか?」


「ではまだまだ……私たちの力はこの程度ではないと見せつけなければいけませんね」


「まぁ……山火事注意ってやつだな」

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