第17話 結局『フィジカル』ってこと?


――『焔輪城ホムラ』 ダンジョン内 コアルーム



「フィジカルえぐいってぇ!」


「煩いですよソウイチ」


「まぁウチのイデアがフィジカルよりも大事なモノがあるって証明してくれるさ」


「急に冷め過ぎではないですか?」


「私は偽龍だからねぇ~……あんなご立派なモノじゃないよマスター。私のほうが強いけれども」


「さすがイデア先制! 頼りにしてる」


「なんだかな~ってやつだね」


「騒ぎに来ただけなら帰ってもらいますからね」



 聖国で動くのならば、拠点として頼らせてもらえるかつ、色々情報を持っているだろうと思いアイシャのところまでやってきた。

 相手が最強のドラゴンということでイデアやウロボロスを中心とした面々を連れてきたが、やはりドラゴン相手なので思うところがあるっぽい。


 アイシャは最強勇者にやりたいことを阻まれた+『皇龍』に聖国荒らされて魔王たちも喧嘩を売られてイライラしているので、俺が来たのを機に自分も『皇龍』ボコりに行きたそうな感じだ。


 聖国の空を吠えながら飛んでいるドラゴンたちのステータスが何度確認しても壊れているので嘆きが止まらないと同時に、『皇龍』の魔名がどんな力を持っているか見えてきたので少しワクワクする。



「『七元徳』よりもフィジカル重視、まぁ天使よりドラゴンのほうがフィジカルなのはイメージ通りだな」


「今のところ『大罪』のような変化球的な力を駆使してくるドラゴンが居ないのが幸いですね。勇者は飛んでいるドラゴンたちに悪戦苦闘しているようですけど」


「悪戦苦闘で済んでいるってのが普通はおかしいんだよな。だって最強勇者の武器は拳で殴るがメインだぞ?」


「私は戦うことを阻まれた立場なんですけどね」


「……まぁまぁまぁ」



 この少し根に持って会話にぶっこんで来る感じ愛火って感じだし、顔見るとニコニコしているのが一層怖さを引き立てているのも相変わらずだ。

 色々言いながらもアイシャも、最強勇者があのドラゴン軍団とぶつかり合って互角にやりあっていることに驚きはしているみたいだ。


 今回、アイシャのところを拠点とさせてもらいに来たのは『皇龍』が待ちきれなかったのか、さらなる動きを見せてきたからってのが理由だ。



「空飛ぶ山なんて凄いよなぁ……ダンジョンごと移動できるなんて考えもしなかった」


「『罪の牢獄』は地下帝国ですからね。アレは空中移動要塞のようです。しかもドラゴンが飛び回っているオマケつきです」


「あんな巨大な山が空から近づいてきていたら……そりゃ聖国民が一斉に迎え撃つ形になるよな」


「『皇龍』の魔王が望んだ勇者率いる軍勢との全面戦争、盛大にやろうと思った結果ダンジョンを動かしたのでしょう」


「竜種が無限に控える山が飛んでくるって思うと、割とこの世界の人類は存亡の危機なのかもな……人類以外も滅ぶ可能性あるけど」


「そう考えると魔王陣営って戦力分厚いな。『女神』側が戦力隠してるだけの可能性高いけど」



 『皇龍』の真名持ちがどれだけいるのかは不明だが、俺もこの戦争に参戦するのなら、真名持ちたちが立ち塞がってくるはずだ。

 通常のドラゴンですら、あの呆れるようなフィジカルを持っているのに、真名持ちのレベルまで行けばどんな化け物が出てくるのか……正直怖い。


 このシンプルなパワーで敵を脅かすことが出来ているのが、最古で最強の大魔王たる由縁なのかもしれない。

 よく俺に言われる魔王らしくないの逆を行く、まさしく王道の大魔王。


 わざわざ勇者のところに我慢できず来ちゃうところは、少しお茶目だけどな。



「ウロボロスみたいな竜だったり、イデアが創り出すような龍だったり、地上を駆けまわる恐竜だったり……なんでもありだな」


「どの魔物も大きいので、並みの者では歯が立ちません。火力は言わずもがななので苦しくはありますね」


「勇者を飛んでる山入り口まで転移させた後、勇者がダンジョンを安心して破壊して回れるように、聖都周りのドラゴンたちを抑えるとするか」


「聖都に行くまでも大変に見えますよ」


「『皇龍』の同盟魔王みたいな奴らも出てきてるしな。まぁ……俺たちとアイシャなら問題無いって」


「自信有りの発言……珍しい」


「『大罪』と『火焔皇』のデュオは魔王界最強ってことさ」


「……都合が良いですね」



 俺だって『皇龍』と直接戦ってみたさはあるが、その役割のメインは最強勇者の仕事、ダンジョンを攻略するのも最強勇者に任せておけば大丈夫だろうから、俺とアイシャは最強勇者が安心して『皇龍』に挑めるようにお膳立てすればいい。


 予想ではあるが、『皇龍』と最強勇者の戦いは、最強勇者であっても苦戦する激しい展開になると思うので、そのころに横やり入れつつ、最終的に『皇龍』の魔名を手に入れれたらラッキーのスタンスで進めていこう。


 『女神』陣営の介入も、俺がここに来たことで可能性の芽があるわけだから、そのことは常に考えて動かないと、ここで足下救われることもありうるな。



「ならば行きましょう……最強の大魔王に魔王界最強デュオとやらの力を見せてあげましょう」


「アイシャがやる気だと……俺も燃えてくるな」


「ソウイチはそのやる気をしっかり配下たちに伝染させてください。主に戦場で戦うのは配下たちでしょう?」


「ウチの面々は戦うことが生きがいみたいな感じだからさ……何も言わずとも戦場では、いつも元気なんだよ」


「そうですか。では参りましょう」


「行こうか!」



 戦場はドラゴン飛び回る聖国の空。

 まずは聖都までのドラゴンたちを片付けつつ、聖都の安全を確保してから最強勇者を『皇龍』のダンジョンへと跳ばすことを目標とする。


 おそらく『魔王』と戦争するのは最後になるだろうから……存分に楽しみ学べるようにやらせてもらわないとな。



 

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