第16話 『最強種』の動き
――『罪の牢獄』 居住区 コアルーム
楽しい楽しい晩餐会も終わり、気持ちよく8時間は熟睡し目覚めた気持ちの良い朝、コアのメッセージに届いていたのは、とある『大魔王』の動き出しであった。
「見たことも無い竜種が聖国の空を視察するように飛んでいる……か」
「今にでも東雲拓真と最終決戦がしたいというメッセージでしょうか?」
「速くダンジョン来ないと燃やし尽くしちゃうぞ……的なやつだろうな」
さすが最強の大魔王と言われるだけある。
あの老骨な感じからは想像もできない血の気の多さ、ダンジョンで優雅に待ち構えるというより、待ちきれないから速く来い! こっちから行っても良いんだぞと最強勇者に訴えている感じだ。
『皇龍』の魔王なだけあって、ドラゴン属性と言える魔物たちで陣営は構成されており、どの魔物も空飛んでいるので人間からすれば攻められるとしんどい相手だろう。
それに守りたい人が多い最強勇者からすれば、この脅しは効果抜群だろう……すぐにでも殴り込みに行く全面戦争が行われそうだな。
「わざわざ『皇龍』が仕掛けずとも、最強勇者は近いうちに殴り込みに行っていたと思うけどな」
「ご主人様と違って、東雲拓真の真っ直ぐ殴り込むスタイルの勇者と一早く決戦したかったのでしょう」
「最強勇者もやってること変わらんだろ、アレは運命捻じ曲げるんだぞ?」
「華やかに見えるか見えないかだけで、結局このレベルになると反則技のパレードですね」
俺の中でトップクラスに反則レベルの力を持っているポラールが『皇龍』のアクションについて分析をする。
そもそも鍵を『星魔元素』に設定しておいて、『原初』本体のところに行くのに『皇龍』を倒さなきゃいけないってのは少しズルくないだろうか? 大魔王を2体も倒さなきゃいけないって難易度高すぎないか?
『女神』は『七元徳』が鍵だったか、『原初』と同じように出会うために決められた誰かを倒さなきゃいけない流れなんだろうか? 過去の遊戯を乗り越えた勇者たちが門弾で、俺のところに来てくれるのが探す手間も省けて楽なんだが…。
「最早勇者だけではなく、聖国にいる強者全てに喧嘩を売っているように見えます」
「アイシャも迷惑しているようだし、『皇龍』vs聖国の皆みたいな構図になるのかもしれないな」
「それでも勝つ自信があるのでしょうね」
「偵察の龍たち見ても化け物軍団だしな」
『皇龍』のドラゴン軍団はステータスが壊れた集団のようだ。
ポラールとデザイアがチラっと見てきてくれたが、ウチの面々みたいに能力重視ではなく、ドラゴンとしての基礎能力に圧倒的なステータスで圧し潰すような戦闘スタイルであったらしい。
報告を聞いた中で1番怖いと思ったのは、並みの攻撃じゃびくともしない耐久力。体力も防御力も飛び抜けていて、『皇龍』がドラゴンは最強種と掲げるだけはあるな。
そのドラゴンは最強種っていう主張に対し、『罪の牢獄』内で一悶着が現在進行形で起こってしまっていることに少し呆れている。
「バビロンがドヤ顔でスケルトンこそ最強とか言っちゃうからなぁ……アヴァロンも味方に加えてたし」
「『皇龍』の主張にイデアが納得していたので、そこに反発したのでしょう」
「ウチは種族色々で構成されてるからな。悪魔・スライム・鬼・蝦蟇・狼となんでもいるから……決着つかんだろ」
「ハクが一声上げるのが良さそうですね」
「興味無さそうに……そこで熟睡してるな」
俺からすればどの種族が最強かなんて、どんな魔物に配合されたかによるから争うだけ無駄だとは思うんだが、各々からすればプライドのかかった大事な論題なのかもしれないので、あまり触れに行くことができない。
正直、『皇龍』の『魔名』を手に入れたら、あまり個性の強すぎる魔物増やしたくない俺でも、問答無用で『大罪』+『皇龍』+何かで配合しちゃうだろうなって思えるくらいには魅力的だ。
ウロボロスくらいデカい魔物だった場合、配置と普段の戦闘で困ることがありそうだが、確実に凄いのが仲間になると考えると夢が広がる。
「そう考えると……欲しいな『皇龍』」
「魔王らしく欲深くなってきましたね」
「新たな戦力を増やすと『女神』が苛立ちそうなのも良いよな」
「……そこですか」
初見殺し大好き厨の俺からすれば、ここでデカい戦力を補強できることは最終決戦においてかなりプラスになるように感じる。
『原罪』もいくつか見られてしまい、もしかしたら見なくても知られているかもしれない現状、正直新たな手札はかなり欲しさがある。
アヴァロン+阿修羅の能力コピーの組み合わせなんて来た日には、正直何かしらの『原罪』をフルパワーで仕掛けないと勝つことは無理だろうし、今のところ『女神』陣営と戦っている感じ、勝てそうだったら素早く始末したいけど、『原罪』全部見てから完膚なきまでに叩きのめしたいって感じもするから尚更だ。
アイシャとラプラスのところにも万が一と考えると、アマツのような今まで見せてこなかった万能戦力は必須と考えた方が良いのだろうか?
「ここまで来たのならば、前語ったことを貫くよりも全力で勝ちに行くべきだと思います」
「最強勇者の手伝い+もしかしたら俺が出ることで『女神』が出てくる可能性+『皇龍』狙いで動くか」
「残る組と出る組で分担してきますね」
「ありがとうポラール」
真名を付与することは上限数に達してしまったから無理なのだが、『大罪』は超変異の期待値が凄いので、強力な魔物は期待できる。
『大罪』と『七元徳』を混ぜた魔物も見えるし、『神狐』もあれば『火焔皇』だって手に在るのでどうにかなるはずだ。
『皇龍』が手に入るか不明なので、手に入れば2体、無理なら1体という計算で動くのが良さそうだな。
「出来れば『聖遺物』欲しいから、ここが最後の探索と見て頑張りますかね」
もちろん『女神』陣営には気を付けながら、最強の大魔王の称号を手に入れがてら『皇龍』の魔名を狙いに行かせてもらうとしよう。
今回の聖国を荒らす『皇龍』の動きが俺を引っ張り出す目的もあるのならば、綺麗に釣られることになるのだが、そこまで気にしていたらやっていけないので、自分の欲望最優先で行くとしよう。
『豪炎』を倒したあとに可愛がってくれた礼をしに行かなきゃな。
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