第21話 『白痴の王』
デザイア&ニャルラトホテプの住処とも呼べる世界である『
光を通さない奈落の深淵。
何者かによる、押し殺したような……聞いた者の気を狂わせるような鳴き声と小さな太鼓や笛の音は響き渡る。
気付けば深淵の中、俺はニャルラトホテプの上におり、デザイア特性の耳栓をしているからその狂気の音は聞こえない状況だが、本気の『
「本当に……『七元徳』たちの居場所は気配でなんとなく分かるけど、見えなさ過ぎて不気味な場所だ」
「さすがに加減はできんかったのじゃ。ここからは妾の世界じゃな」
――グジョッ!
デザイアは宙にプカプカと浮かんでおり、『七元徳』たちからは俺たちの居場所が掴めていないだろう……どころか響き渡る不気味な音に脳をグチャグチャにされている最中かもしれない。
デザイアが指を鳴らすと至る所から気味の悪い巨大な触手たちが産み出されていく。触手から滴り落ちる液は生物を溶かし尽くし、少し触れるだけでも様々な害を引き起こす悪魔の液を持っており、『
「趣味の悪いッ! 『
『『
前見せたことのある『
鳴り響いている狂気の音、そして蠢く巨大な触手たちに対して全力の防御スキルを展開しているように見える。本当に全力なのかは不明だけど……。
『
「妾の世界で真面目に戦うなんて愚かなことじゃぞ?」
――アァァァァァァァァァッ!!
デザイア特性耳栓してても少しだけ聞こえてくる女の人の叫び声が『
巨大な触手たちのほかに、なんとも言えない爬虫類のような両生類のような蛸のような不気味な眷属たちが大量に湧き出てきた。
狂気の音に合わせて眷属たちが唸り声をあげながら踊り狂っている。耳栓してても骨伝導で突破してくる狂気の感じ、これ耳栓無かったら俺壊れてたんだろうな。
俺は元々『大罪』関連の影響を受けにくいアビリティ構成になっているのにプラスでデザイア耳栓とニャルラトホテプに守られているから正気を保っていられる。
『『
「『
『七元徳』と『
俺の『
まさしく狂乱状態とも呼べる惨状になりつつある。
『
「これが『無限無窮の王』……アザトースって奴か」
普段のサボり魔からは想像もできない恐ろしさだ。
デザイアの住処でデザイアの存在を認識してしまえば、出鱈目に『存在』を壊されてしまう。
その破壊に規律もなく、デザイアの気まぐれのままに破壊が具現化され、ニャルラトホテプが黙って見守る中……世界が消滅する。
未だにスキルを放てるだけの正気を保てているのは、さすが『七元徳』と言ったところだ。
俺が感じる気配ではあるが、『
――バキバキッ! パリンッ!
「妾の夢の中で知性無き者として生きるがよいのぅ」
おそらくだが、正気を保てない破壊の狂気に耐えられなくなり、『
凄い今更だが、『七元徳』や『女神』、『原初』の爺さんにはもしかしたら正々堂々力と力の綺麗なぶつかり合いが見たかったのかもしれないが、悪いが俺はどれだけ卑劣だろうが初見殺しだろうが何だろうが勝つことしか考えてない陣営を創り上げてしまった。
『七元徳』もこの前の戦いが割と正面からの力のぶつかり合いみたいな感じだったから期待させたかもしれないんだけど、俺はそんな綺麗に勝負なんてできない。
(魔物になったけど心は弱いまんまなんだ。何もさせずに殺すことしか考えてないんだ……失うのが怖すぎる)
ポラールやシャンカラ、阿修羅やイデアという面々だったら力と力のぶつかり合い、能力のお披露目会になったのかもしれないが、そんなの『女神』の力で蘇ってきた『七元徳』にぶつけるよりも、デザイアやハクのような最強の『初見殺し』を俺は選ばせてもらった。
「でも……こんなこと予想してたんじゃないのか?」
――あぁ……なんとも美しくありませんね
狂いかけていた『七元徳』の声が『
眷属たちが踊り狂う中、『七元徳』は優しい笑みを浮かべながら、俺たちの方を見つめてきた。この奈落の深淵である『
デザイアも予測はしていたけれど、こうも突然変異してきたのに少し驚いたようで、俺とニャルラトホテプのほうまで下がってきた。
「ふむ……もうちょっち妾に頑張れという奴じゃな」
「さすがに本気の『
「もうすぐで私も自壊してしまうところでした。本当に摩訶不思議な力を持った配下ばかりですね」
「正面から堂々と戦うなんて俺に期待するな。その期待はそっちが想い焦がれる最強勇者様だけにしとけ」
「ふふふっ♪」
『
まぁ……相手は1人減ったから良しと考えるのが吉だな。ここから気を取り直して第2ラウンドってやつだ。
ちなみにこのノリで耳栓外したら俺が壊れるだろうから、とれないように気を付けないと……。
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