第20話 祝おう! この『因縁』を


 『女神』への片道切符をかけた戦いもラスト1試合を残すだけになった。


 『原初』と『女神』が大好きな天空に浮かぶコロシアムには俺とデザイア&ニャルラトホテプの組み合わせが『七元徳』の登場を待っている。

 さすがに最後には出てくるはずだ。俺も出てきたんだし……ニコニコしながらも俺のことボコボコにしてやりたいと思っているはずだ。


 『女神』としても『七元徳』を出して、『大罪』陣営の情報を引きずり出してこいと命じていると思う。

 最強勇者と俺たちの違いは、俺たちは手札があまりにも多いという点だ。最強勇者は手札の1枚1枚がイカれた強さしてるけど能力自体はシンプルで少ないからな。



「……なるほど…その組み合わせでくるのか」


「そちらも予想外の組み合わせですね。てっきり兎さんが出てくるかと思いました」


「兎さんは本気出したら俺も真っ二つになっちゃうからダメだな」


「そちらの魔物はサポート系統で戦闘が好きでは無さそうと踏んでいたのですが……」


「まぁ……やる時はやってくれるって奴だな」



 出てきた『七元徳』の手に握られていたのは倒した気がする『運命ヲ開ク導キノ聖槍ロンゴミニアド』だった。

 前まではペラペラしゃべっていた気もするけれど、『七元徳』がいるから黙って言うこと聞いている感じなんだろうな。


 『七元徳』と『運命ヲ開ク導キノ聖槍ロンゴミニアド』って組み合わせは如何にも守りがカチカチですよと教えてくれているコンビだ。

 俺とデザイアに並の攻撃では突破できないからしっかり『原罪』使わないと傷1つつかないよ♪ と『女神』が言っているように思えて少しムカついてくる。


 それに『運命ヲ開ク導キノ聖槍ロンゴミニアド』は『死地ニテ誉ヲ刻ム剣セクエンス』とかいう面倒な補助攻撃スキル持ってるし嫌だな。



「これが本当に最後の戦いですね。もう顔も見たくありません」


「聖国で神だった大魔王様が弱音なんてな」


「ここまではそちら陣営に優遇され、確実に勝てる戦力と状況で甘えてこれたかもしれませんが……今後貴方の顔がどう歪むか楽しみなモノです」


「……達観してんだな」


「私に課せられた役割を知りましたので……だからと言って負けるとも思っていませんけどね」


「俺は馬鹿だからな。我武者羅に勝ちに行くしか能がないもんでさ……浅い因縁かもしれんが、ここで終わりだ」


「『大罪の大魔王』、『原初の魔王』に選ばれし者の底を見せて頂くとしましょう」



――ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!



 互いの魔力がコロシアムに解き放たれ、空気を歪ませ大地を揺らしている。

 『七元徳』も今まで出てきた奴らと同じように『美徳』以外の力を習得して蘇っているようだ。魔力が混じりモノみたいな感じがするし、前戦ったときと同じとは思えない邪悪さも感じる。


 俺とデザイアも相手のアクションにカウンターを撃てるタイプではあるが、別に先に仕掛けてもいける口なので、ここは先手を打たせてもらうことにしよう。


 俺は『大罪の天魔銃アポカリプス』と『美徳の堕落天アビス』を召喚し、『罪の魔眼』を『七元徳』たちにむけつつ、銃口『七元徳』に向けた。



「痛い思いはしたくないからな! 『大欲の弾丸ベリグロ・バレット』』


「妾たちも頑張るとしようかのぅ 『這い寄る渾沌、ケイオス・ネイションそれは貴方の傍にいる・ジ・ヴォルテクス』』


『『死地ニテ誉ヲ刻ム剣セクエンス』』


「歪ませてあげます♪ 『最後の審判ラストジャッジメント聖母の壁ウォールマリア』』



――ゴシャァァァァンッ!!



 ほぼ同時ともいえるタイミングで4つのスキルがコロシアムに舞い上がる。


 ぶつかり合う互いのスキルだったが、俺の『大欲の弾丸ベリグロ・バレット』とデザイアの『這い寄る渾沌、ケイオス・ネイションそれは貴方の傍にいる・ジ・ヴォルテクス』の触手たちは『七元徳』の『最後の審判ラストジャッジメント聖母の壁ウォールマリア』に防がれる。


 『七元徳』たちの攻撃である『死地ニテ誉ヲ刻ム剣セクエンス』も俺たちに当たることなく、天から注ぐ剣を撃ち落していけている。


 『這い寄る渾沌、ケイオス・ネイションそれは貴方の傍にいる・ジ・ヴォルテクス』の触手たち自体がやられているわけじゃないが、『最後の審判ラストジャッジメント聖母の壁ウォールマリア』に弾かれ続けている。



『『紡がれる不朽の幻城アウディーティオ』展開』


「『嘆く天使たちの歌ホーリー』」


「役割のスイッチ速すぎるだろッ! 『崇拝せよ希望の火狼ハイスヴァルムッ!』」


「主……もう少ししたら展開するから頼むぞい」



 『七元徳』と『運命ヲ開ク導キノ聖槍ロンゴミニアド』の役割スイッチが速すぎる。

 おそらくだけどレンジだったりスキルを打つちょっとした溜めを考慮して切り替えているんだろうが、『紡がれる不朽の幻城アウディーティオ』か『最後の審判ラストジャッジメント聖母の壁ウォールマリア』が完全に展開されつつ攻撃されるのは上手すぎるな。


 デザイア&ニャルラトホテプが眷属を産み出してくれているので、そちらにヘイトが行くかと思ったのだが…。



「『生きる火』でも全然ダメか!」



 『七元徳』の歌声が響き渡り、『七元徳』の周囲の空間が歪み広がっていく。そこに跳び込んだ『崇拝せよ希望の火狼ハイスヴァルム』やデザイアの眷属たちが魔力の粒となって昇天していく。


 おそらくあの範囲に入った者にダメージやら何かしらの大きな影響を与えるのが『七元徳』の『嘆く天使たちの歌ホーリー』とかいうスキルなんだろう。

 『死地ニテ誉ヲ刻ム剣セクエンス』で魔力を回復し続けているのは知っていたが、『七元徳』が『嘆く天使たちの歌ホーリー』を使用したら魔力量が増え続けてる気がするんだけど?



「全力の遠距離戦だと相手の方が守り上手だけど攻め手止めたらダメだな! 『明けの明星ポースポロス』」


「それは前見ましたよ♪ 『最後の審判ラストジャッジメント聖母の壁ウォールマリア』が通しません!」


『『汚染サレシ火槍ルトゥレントゥス』』



――ドドドドドドッ!!



 俺のアクションは『最後の審判ラストジャッジメント聖母の壁ウォールマリア』で防がれ、デザイアたちが次々と産み出してはいてくれている眷属たちは『運命ヲ開ク導キノ聖槍ロンゴミニアド』から放たれている『汚染サレシ火槍ルトゥレントゥス』とかいう飛来してくる火の槍で撃ち落されている。


 ちなみに俺も『汚染サレシ火槍ルトゥレントゥス』を避けるのでなかなかに忙しい。



「ふむ……主が攻めを張るのが大変そうじゃの」


「そんなのやる前から分かりきってたやつだろ!」


「妾が楽したかったから期待したんじゃがなッ!」



――ドドドドドドッ!



 飛来してくる『汚染サレシ火槍ルトゥレントゥス』を避けるのに忙しく頑張っているところに聞こえてくるデザイアの余裕のある声に、ついついツッコミを入れてしまう。


 『汚染サレシ火槍ルトゥレントゥス』対し、デザイアは同じような火の槍を天より降り注がせてくれた。

 『思考具現化』で同じスキルを出して相殺するのは相手に挑発しているような気もするが、俺としては助かったのでセーフだ。


 それにしても本当に守りが凄いな。俺じゃ『真原罪之アマルティア・烙命印アドヴェント』か『世界創造罪徳天ワールド・クリエイト・【大罪の牢獄】』 しか手が無さそうだ。



「さて……行くぞ~主よ」


「とりあえず耳栓しとくから頼んだぞ」


「『深奥の虚空・マウス・無明の閨房・オブ・無窮の宮廷マッドネス』」



 コロシアムが一瞬にして奈落の闇に包み込まれる。

 響き渡るのは何者かによる、押し殺したような……聞いた者の気を狂わせるような鳴き声と小さな太鼓や笛の音。


 ここは無限無窮の深淵である。

 

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