第13話 『大胆』に行こうよ


 この世界自体が『原初』と『女神』の創りモノ、その事実を知る前は魔王で在りながらも、この世界に住む人間に対して……まぁそれなりには考えて動いてきたつもりだった。

 世界を成り立たせるには人間が必要だと思っていたし、アークのように上手く共存することができれば面白い世界になるだろうという考えがあった。


 今まで優等生思考でやってきた訳じゃないのに、なんで俺たちは真面目に王都に攻め込んで正々堂々戦っているんだろうか?

 相手は『女神』の実験体であり、俺と同じ世界線から来た人も、勇者たちの世界線から来た人たちもいないのなら……わざわざ堂々とやる必要も無かったんじゃないか?



「……まぁ……そうなるよな」



 王都にどんなギミックが隠されている不明なままだが、面倒だし正面からご丁寧に戦うのも馬鹿らしくなってきたので、王都ごと吹き飛ばそうかウチの面々の考えを聞いたところ20秒も経たない内に吹き飛ばそうというまとまった意見がきた。


 わざわざ敵さんの土俵でお上品にやる理由がなく、王都には大量の実験体と天使がいるだけなら迷う理由は無いとのことだ。



「さて……今の配置から綺麗に飛ばすにはどうすべきか」


「そのまま進ませたら……『欺瞞色に染められしロイヤル・ストレ栄華に満ちた天の花ート・フラッシュ』が終わらせるんじゃないのかな?」


「ハクなら自分がやるって言うかと思ったよ」


「可能性やら確率云々で揉めるくらいなら……僕じゃなくても良いのかなって」


「王都が受けたダメージを対象に返還するみたいなカウンター持ちがいたら面倒だからか」


「僕ならそれも無視できるけど……せっかく発動してるなら、そのままやってもらうのが良いんじゃない?」


「……魔王らしく行きますか」



 バビロンとデザイアに王都吹き飛ばし作戦を進めてもらい、他の面々では王都跡から飛び出てくることが予測される土竜たちの討伐配置に進んでもらう。

 王都に潜入して暴れていた組には申し訳ないが、一度王都ごと消し飛ばしたほうが手っ取り早いという判断なので許してほしい。


 さぁ……『美徳』と『大罪』の締めの段と行きましょうかね。





―――



 王都の覆う雲が紅色に染まる。

 空気が震え、大地が揺れ、空に1つの亀裂が走る。


 空に走る亀裂が凄まじい速度で広がっていき、バキバキっと音を立てながら空を割っていく。

 溢れ出すのはバビロンの『原罪』『奇跡カラミティー』の魔力と大量のスケルトン達、王都の空を埋め尽くす骨の大群と触れれば理不尽なルールに巻き込まれる『奇跡カラミティー』の魔力は一瞬にして王都の空を支配した。


 『奇跡カラミティー』の魔力を纏ったスケルトンたちが王都に降り、最後にバビロンが『黙示録の獣』と『欺瞞色に染められしロイヤル・ストレ栄華に満ちた天の花ート・フラッシュ』の騎士たちと天より王都を見下ろしている。



「さぁ……我が配下たちの力で王都を芸術へと昇華させようではないかッ!」


「妾は何度スケルトンを爆破物に変えればいいのじゃろうかのぅ?」


「我らが被害を被る確率は消えておる」


「それなりに上に繋げたんじゃが……本当に安全か怪しいのぅ」



 デザイアの『囚われぬ神』による自在の転移、そして何度目か分からないスケルトンを爆破式に変える『思考具現化』の連携、『欺瞞色に染められしロイヤル・ストレ栄華に満ちた天の花ート・フラッシュ』の理不尽な確率操作によるカウンターのケアも含め、『大罪』陣営お得意の綺麗なセットプレイである。


 空より降り注ぐ夥しい魔力を纏うスケルトンの大群に対し、王都から多種多様な実験体たちが迎撃を行ってはいるのだが、無限とも思えるようなスケルトンの数、そして一定の距離感で大爆発していく攻撃に戸惑っている。



――ドドドドドドッ!!



「ふむ……これで終いじゃな。今までのモノよりもパワーアップしとるぞ」


「美しき王都は我が記憶に留めておこう!」



 実験体たちが迎撃しきれなかったスケルトン達が王都の地へと降り立ち、大爆発の連鎖を起こしていく。

 頑丈であるはずの実験体や天使たちが爆発に巻き込まれて消し飛んでいく。これがいつもの爆発よりもパワーアップした部分であり、全てのスケルトンにデザイアの『気付かずの破壊』の力が付与されている結果である。


 実験体と天使たちは何故自分たちがスケルトン如きの爆発で命が絶たれているのか理解できていない状況であり、火力という面では脅威にも見えないような爆発を対処しようとしては触れた瞬間から命を絶たれてしまっていく。

 バビロンの『欺瞞色に染められしロイヤル・ストレ栄華に満ちた天の花ート・フラッシュ』の騎士の1体である『虚構を貫く哀れな王ジャック・スケルトン』による絶命行動設定による脅威である。



「スケルトンの爆風に触れた者は死ぬ……妾が言うのもなんじゃが恐ろしい能力じゃな」


「お主の近くでは力を発揮しづらいモノではあるが……これならば問題無いであろう」



 何事も無いかのようにデザイアとバビロンが共闘しているように見えるのだが、デザイアのアビリティでステータスが大幅にダウンしていたり、バビロンの影響も減らしてはいるが受けていたりと……『大罪』陣営らしく、互いが互いを弱体化してしまっていてもこの力である。

 デザイアとしては『奇跡カラミティー』の効力を妨げきれないので、目の前でスケルトンが誤爆しようモノならば大惨事なのだが、それなりに気付き上げてきた信頼関係のおかげで己の役割に真っ当できている状況。


 王国内に響き渡っているのではないかと思えるような大爆発の連鎖。

 すでに廃墟の街へと変貌しつつあった王都はスケルトンたちの爆発で次々と消し飛んでいく、実験体や天使たちも抵抗空しく砕け散って行き、残ったのは巨大な瓦礫の山と数々のクレーターだけという惨状。


 

「さて……我らは少し離れたほうが良いであろう」


「お主の『原罪』を解除せんと妾の力も発動しづらいのじゃから早うせい」



――ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!



 瓦礫の山が大きく震え、大地に罅が広がっていく。

 地下から溢れ、瓦礫の隙間からも噴き出してくるのは『大罪』陣営であれば懐かしく感じる巨大な魔力。

 『美徳』の神熾天使たちを束ね、魔王ながらも勇者……女神陣営として世界を聖国から支配しようとしていた大魔王が1体。


 大地を割って地上へと現れたのは天使の女王。



「……それなりに学びを得ることが出来ました。女神様へと片道切符をかけて……第2ラウンドと行きましょう♪」



 『七元徳』の大魔王再誕である。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る