第7話 『星を焼く』


――ドシャァァァァンッ!



 安全であろう上空からシャンカラとライラとかいう奴の戦闘を観戦させてもらっているが、まだ2分も経過してないながらに何個か驚くポイントが見えてきている。

 

 まず1つ目は、『雷霆ト天空ノ神インドラ』状態であり、雷速での近接戦闘を仕掛けるシャンカラに対し、ライラ……というか『運命ヲ開ク導キノ聖槍ロンゴミニアド』が完璧とも言えるような対応を見せている点だ。

 概念的な能力やら、単純な高火力なスキルやらが槍からポンポンポンポン飛んできたり、ライラ本人からも魔法が飛んできたりでシャンカラもやりにくそうだ。


 その2としては、単純に『運命ヲ開ク導キノ聖槍ロンゴミニアド』から放たれて、ライラに纏われている黄金の魔力がシャンカラの攻撃に耐えうるだけの防御力をもっているところだ。純粋な守備としては驚きの頑丈さと言わざるえない。


 まぁ……見た感じ、ライラは付属品で『運命ヲ開ク導キノ聖槍ロンゴミニアド』が完全に本体って感じだな。ライラは豪勢な鎧を身に纏った熱血騎士さんであり、『運命ヲ開ク導キノ聖槍ロンゴミニアド』に魔力を供給するだけのアイテムと見て良さそうだ。



『今までの相手とレベル違いすぎるだろ!』



 白狼だったり空飛ぶ装甲だったりと『女神』の力を得て人間をやめた相手と少し戦ってきたが、あまりにもレベルが一気に高くなった相手に対し、思わず上空から大声でツッコミを入れてしまう。

 よりにもよって、ライラとかいう騎士は魔力供給役として最適だったんだろうが、それにしても『運命ヲ開ク導キノ聖槍ロンゴミニアド』とかいうガラクシアの対策を備えた兵器でありながら、シャンカラともやり合えるなんて……とんでもない『槍』だ。



「『我は唯一無二カイヴァッリャ・の神雷為りスヴァルガパティ』」


「『死地ニテ誉ヲ刻ム剣セクエンス』」



――ゴシャァァァァンッ!



 シャンカラにアクションに対し、最早『運命ヲ開ク導キノ聖槍ロンゴミニアド』がアヴァロンのような機械音でスキルを発声し対処してきているので、本格的に『運命ヲ開ク導キノ聖槍ロンゴミニアド』が主で戦っている感じだ。


 シャンカラは『我は唯一無二カイヴァッリャ・の神雷為りスヴァルガパティ』で継続回復と超速戦闘を活かしたひたすら攻めターンを続ける戦闘をすることで、『運命ヲ開ク導キノ聖槍ロンゴミニアド』に攻めの流れを渡さず、相手の動きを観察することができている。


 普通なら『我は唯一無二カイヴァッリャ・の神雷為りスヴァルガパティ』だけで相手粉々になってるはずなんだけどな……。


 『運命ヲ開ク導キノ聖槍ロンゴミニアド』がカウンターで放ったのは、大量の金剣が天からシャンカラにむけて降り注ぐ『死地ニテ誉ヲ刻ム剣セクエンス』、残念ながら高速で動くシャンカラには掠りもしていない。



「騎士は貯蔵庫、天へと伸びる光は空からの供給ライン……今の剣は大地から魔力を吸い取っておる。無限の魔力で無敵になったつもりか? 『聖槍』よ」


「輝けッ! 『運命ヲ開ク導キノ聖槍ロンゴミニアド』ッ!」



 シャンカラが『運命ヲ開ク導キノ聖槍ロンゴミニアド』のカタクリの1つを見破ったようだ。

 至る所から魔力を得ながら戦い、使用者であるライラを無限に守りながら、相手のアクションに対して的確なスキルを放っていく槍ってのが『運命ヲ開ク導キノ聖槍ロンゴミニアド』のやっていることのようだ。


 『七元徳』+『女神』+『聖槍』がこんな化け物みたいな武器になってしまうのならば、王国にあるって前情報で得ていた他の武具たちも化け物になってるってことか。



「『不変の月光、雷クータスタ・鳴を裂く刃となりてカウムディー』」


「『紡がれる不朽の幻城アウディーティオ』」



――ガキィィィィィン!



 雷速の手刀にて首を跳ねる武技『不変の月光、雷クータスタ・鳴を裂く刃となりてカウムディー』、高密度の雷の力を纏っていた手刀は『運命ヲ開ク導キノ聖槍ロンゴミニアド』が展開した防御陣にて防がれる。

 ライラの背後に薄っすらと浮かび上がる巨大な城のような影が、ライラを纏っていた守りの力の強度をさらに増していく。


 ……とんでもない反応速度だな。シャンカラの速攻が通じないのは真面目に驚きだし、この情報だけでも得られるモノとしては大きい。それほどに『運命ヲ開ク導キノ聖槍ロンゴミニアド』の防御力が素晴らしいものがある。


 さすがのシャンカラも速さと近接打撃で展開する『雷霆ト天空ノ神インドラ』になって、このような展開になると思ってなかったんだろう。ライラか距離をとったシャンカラは少しだけ苦い顔をしている。



「なるほど……細かな攻撃など無いよなモノ。ガラクシアのような搦め手メインには突破が難しかったやもしれん」


「『死地ニテ誉ヲ刻ム剣セクエンス』」


「この剣も……ガラクシアの結界の魔力を吸いあげて破壊するモノというわけか」



――ドドドドドドッ!!



 降り注ぐ金剣の雨の中、躱し払い吹き飛ばしながらシャンカラは冷静に『運命ヲ開ク導キノ聖槍ロンゴミニアド』を暴いていく。


 本当に『七元徳』との魔王戦争から対策をバッチリと仕上げてきている感じ、そしてこの『運命ヲ開ク導キノ聖槍ロンゴミニアド』と戦っている感じ、相当な学習力のある相手と戦っている……この王都での戦いの中でも対策を積み上げてくる。


 もし『女神』と出会えず、この王都以降にも『女神』と戦うことを考えるのならば……この対策上手相手にやる方針は1つしかないかもしれない。



「主よ! そういうことで良いのであろう!?」


『さすがシャンカラ! みんなにも伝えとく!』


「……索敵即殺」



 バビロンやハク、デザイアやイデアみたいな受けたり数回見た程度じゃ対策方法が出てこないだろう理解不能概念能力なら良いけども、あまり手札を見せているとその場でも完璧に対策してくるレベルの守備力が相手にはある。

 『聖神力』もあるので、こちらの能力が効かない部分もある中で、結局は相手に理解させずに『初見殺し』を即叩きこむパターンが最適ってことだ。


 もし、これで1撃破壊型のスキルも耐えうる防御力をしていた場合……色々と話し合わなきゃならなくなる可能性が出てくるんだけどな。



「王都ごと消し飛ばそう。その黄金の護り……見せてみよ。『神化アヴァターラ』『太陽ト天翔ノ神スーリヤ』」



――ゴゴゴゴゴゴゴッ!



 シャンカラが姿を『太陽ト天翔ノ神スーリヤ』へと変えた瞬間、爆発的な熱気を帯びた魔力が広がり、辺り一帯を燃やし始める。

 灼熱の魔力を纏い、天へと駆ける戦車に乗るシャンカラに対し、『死地ニテ誉ヲ刻ム剣セクエンス』で迎撃しようとする『運命ヲ開ク導キノ聖槍ロンゴミニアド』だが、様子見段階を終え、抑えるモノがなくなった『太陽ト天翔ノ神スーリヤ』の太陽の如き火の魔力を前に灰になって消えていっている。


 ちなみに俺の『美徳の堕落天アビス』も限界みたいだ。



「我が身を燃える宙と化し、日輪を持ちて焦土と成す」


「『紡がれる不朽の幻城アウディーティオ』」


「『星を飲む灼天彗星キラナ・デル・ソル』」



 燃えゆく『美徳の堕落天アビス』で最後に見えたのは、燃え盛る真っ赤な戦場に、天から迫りゆく小さな太陽と、それを迎え撃つ黄金の城。


 『美徳の堕落天アビス』が完全に燃え尽きたと同時に、世界に轟音が鳴り響いたのだった。

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