第1話 『兵器』たちの祭典


――ウゥゥゥゥゥゥゥッ!! ドドドドドドドドドッ!



 ウロボロスの姿が完全に確認されたところで、王国の砦から警報音が鳴り響く。

 煩い轟音とともに魔力を帯びた弾丸が砦の機関銃から放たれる。しかし、俺たちに放たれた弾丸が届くことはなく、ウロボロスの『回帰ルブニール』の魔力によって巻き戻っていく。


 勝手に発射しては弾丸が再装填されるという無限ループの発生により、砦の迎撃システムは無効化することに成功している。


 何者にも邪魔されない隙にイデアとウロボロスが合わせスキルの準備をしており、天に巨大な裂け目が現れ、そこからイデアの『偽神ヤルダバオト』の魔力が溢れだす。



「……来るな」


「こっちも万全だよ。ウロボロス頼むよ!」



――ゴゴゴゴゴゴッ!!



 砦からは2つの巨大な気があらぶっており、神熾天使たちに似た気配が今にも砦から飛び出してきそうな感じがしている。

 どんなモノが飛び出てくるかは何となく事前に調べることができているので、こちらもお相手さんがビックリするようなモノを見せてやろう。


 巨大な裂け目から降臨したのは10体の巨大なゴーレムのような兵器たち。

 俺のうろ覚えなロボット知識をイデアの『偽生命創造』とウロボロスの『究極錬成』で合わせた最強のゴーレム機動兵器『錬成機動ネメシス』である。


 ウチのアマツの銃撃武装をさらに魔力型にしつつ、装甲はウロボロスの錬金術で創り出された柔軟かつ鉄壁であり、全長6mとは思えない高機動な動きが出来るような摩訶不思議なゴーレム兵器だ。



「ロボットになって装甲を身に纏った阿修羅みたいなフォルムだな。色が黒と白ってのもウチらしい。背中で浮遊している球体と2重の輪っかで空飛んでる感じなのか」


「わざわざ『偽名レプリカネーム』まで使ってるから、並みの相手じゃ傷もつかないはずだけどね」



 ロボットのようなフォルムをしているが、結局はイデアとウロボロスの力で創られたゴーレム兵器なので、万能な能力があるわけでもなければ一撃必殺な武装があるっていうわけでもない。

 高速機動を活かした銃撃戦と近距離は魔力刃を腕から出せるらしいので、ビックリ箱性能というよりは安定感を重視したって感じだ。これから出てくるであろう王国騎士団たちの力を参考に改良していく予定ではあるらしい。



「見せてくれ『ネメシス』」



――ドドドドドドドドッ!!



 あまり銃に詳しく無いんだけど、アサルトライフル型って感じの連射性能の高い銃を空中から砦に撃ちおろす形で放っていくネメシスたち。

 砦から放たれる全ての攻撃はウロボロスの『回帰ルブニール』によって俺たちに届くことなく巻き戻り、ネメシスの銃撃は砦をボコボコにしている。


 さすがの大きさなゴーレムなだけあり、銃弾やらミサイルやらが一々大きいので相手側の被害が酷いことになっている。



「さぁ……来たな」



――キィィィィィンッ!!



 砦から眩い光とともに、大きな気配が2つ飛び出してくる。

 事前情報によれば、王国騎士団ゲベートⅩの団長と副団長が『女神の力』を授かっている者らしく、それらしい人影2つがウロボロス向かって飛んで来ようとしている。

 浅黒いマッチョなフィジカル騎士団長のゲテナって奴と、熱血茶髪青年のアルジス副団長って情報と、『女神の力』を授かる前にどんな能力を持っていたのかって情報は得ている。



「ここまで来ると『七元徳』の気配の方が濃く感じるな」


「気を引き締め時だね」



――ゴゴゴゴゴゴゴッ!!



「『神聖天装バスデヤMK-Ⅱ』」


「『神聖天装アルメルスⅫ』」



 眩い光と魔力を放ち、ネメシスたちの弾幕の嵐を避けながら飛んでくるのは白銀の天使鎧が2つ。

 ロボって感じなのを聞いていたが、実際見てみると巨大な天使型の全身鎧であり、立派な鋼の翼と騎士とは思えないライフルやらガンブレードといった武器。


 『神聖天装』ってのが正式名称らしく、きっと天使の名前を言っているんだろうが……天使にも銃火器やロボットにも詳しくない俺からすれば覚えれる気がしない。


 白銀の天使鎧。

 左手に魔力で出来た盾、右手に白と金で彩られたライフルを持ちネメシスと同じ大きさながら、加速力はネメシス以上であり、空中で銃撃戦を繰り広げているのはゲベートⅩ団長『神聖天装バスデヤMK-Ⅱ』を纏うゲテナ。

 白と金の天使鎧。

 盾は同じで右手には巨大なガンブレード、『神聖天装バスデヤMK-Ⅱ』と違って魔力で煌めく4枚羽を装備しているのは『神聖天装アルメルスⅫ』を纏っているのはアルジス。

 



――ドシャァァンッ!! ドガガガガッ!



「どんな感じだ?」


「……幹部格ではあるけど、言うなれば下っ端クラスなのかもね」


「つまり簡単に貫けると?」


「でも私たちクラスで確実に貫けるレベルだから、普通だったら高速で動く鉄壁の鎧だっただろうね」


「そんでもってこの世界では未知な部類に入る銃火器で殲滅するってやつね」


「能力も尖ったところは無いかな。色んな武器を瞬時に取り出せるみたいだけどね」


「……元の世界で銃火器について少しでも勉強しとくんだったな」



 ネメシスと銃撃の嵐を繰り広げている2体の天使鎧をウロボロスの上から眺める。

 真夜中で視界が悪い中、こんなにも空中で高速戦闘ができるのは正直驚きだし、確かに火力に尖ったウチの面々じゃなかったら絶望的だったかもしれないな。


 この2人はイデアの解析によると割と平凡的な能力らしいので、とりあえず回収するためにも一気に決着をつけたいところだ。



「来い『大罪の天魔銃アポカリプス』と『美徳の堕落天アビス』」


「タイミングで頼むよウロボロス。一瞬しか止めれない可能性があるからね」



 俺は相棒たちを呼び出し、イデアの合図で時空間に跳ぶウロボロスに備える。

 本来ならば、新たに授かった『女神の力』である『神聖天装』の見せ場になるところなんだろうが、殺して回収すれば俺たち的には完璧なので、わざわざ相手に受け身になる必要も無い。

 いつも通りに『初見殺し』で仕掛けていく、あまり表に出ていないイデアとウロボロスのメタ性能を存分に見せつけてやろうじゃないか。


 ネメシスと壮絶な銃撃戦を繰り広げる2体に気付かれないように、周囲に『美徳の堕落天アビス』を漂わせておく。



「行くよ‼ 『全生命に偽りの罪をノーレア・アルコーン』」



 イデアのスキル発動とともに、俺とウロボロスは一瞬時空間へと消えた。

 イデアの強制命令が空に鳴り響く。


 

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