第15章 『空を裂く光』
プロローグ 塗り替わる『国』
帝国と王国の国境付近。
以前ハクが消し飛ばした王国の砦があった場所には白一色で綺麗に彩られた新たなる砦が完成していた。
聖国が崩壊したことにより巻き起こった世界全てを巻き込む大戦乱。王国も被害は大きく、普段は大人しくしていた魔王や魔物たちが表に出てきて暴れ出してしまったせいで壊滅的な被害を負うことになってしまった。
人間ではSランクの魔物を相手にするのも大変なのに、SSランクの魔物や魔王が出てきてしまっては、帝国のアルカナ騎士団と同じレベルの力しか持っていなかった王国騎士団では為す術もなく、俺が出てくる前に王国は崩壊するんじゃないかと思っていた。
しかし、そんな王国に訪れた奇跡。
『女神』の力が王国騎士団の幹部格たちに凄まじい力を宿したのだ。今まででは考えられない人智を越えた力に王国は湧き上がり、ご利益の流れに乗って国名を『プリギエーラ王国』へと変え、王都の名を『ゲベート』へと変えるまでになったようだ。
「なんか積み上げてきた歴史とかいいのかよって思うけどな」
「絶望的な状況を救った力だからね。民の士気を上げるにも良いキッカケになったんじゃない?」
「まぁ……東雲拓真を除いて、人間最強が突然何十人も誕生して国を救うんだから仕方ないか」
「あの砦からも天使様に似た気を感じるよ。思ったより他魔王たちの暴れは意味無さそうかもね」
「……終盤まで来たら結局は正面衝突になりがちってか」
王国が新たな力を駆使して作り出した砦をイデア&ウロボロスと眺めながら語り合う。
『女神』が王国騎士団たちに授けた力は言ってしまえば、俺がこの世界に来る前の地球でもあったような銃火器や兵器をファンタジーパワーと合体させたような力だ。
あんなピケルさんも驚くような面白殺戮兵器を簡単に作り出すんだ、『女神』様の底力ってのはさすがなもんだな。
俺が期待していた他魔王たちの大暴れも、力を得た王国騎士団の幹部格たちによって抑えこまれているようなので、まだ影響がある内に俺たちが潰しにかかるしかない。
どうせ俺が行くことなんて『女神』様のお告げかなんかで知られてるんだろうから、コソコソやりすぎても無駄になることだろう。
「王都周辺をバビロンとメルの無限スケルトン&スライムで荒らしている間に、まずは手前から潰していこう」
「生まれ変わった王国様と楽しい戦争の時間ってやつだね」
「間近で遭遇するとデカいらしいから楽しみだな」
「ウロボロスよりは小さいって話だから面白くないかな」
「後のフラグになりそうな発言だな」
真夜中と呼べる時間に雲の上をウロボロスに乗りながらぶっそうなフラグを立ててくれるイデアに苦笑いしながら、雲の隙間に見えていた巨大な砦……要塞って言った方が良さげな拠点に上から近づいていく。
剣と魔法のファンタジーの面影は少なく、遠くからでも見えるのはご立派な機関銃のようなモノが所々に配置されていることだ。
ありがたいことに『女神』の力を宿して、機動兵器みたいな姿になれるのは幹部格だけなそうなので、とにかく周囲にある兵器と幹部格の2点に意識をさけばいい状態なのは嬉しい話だ。
まずはここで事前に得られた情報を元に実物を相手にさせてもらって新たに色んな面白いモノを発見するとしよう。
戦闘に関してはかなり詰め込んでいたようだから安心していいはずだ。万が一は俺だって空は飛べないけれど戦うことはできるからな。
「生まれ変わった王国騎士団……12部隊の内の1つが守ってるらしいからな。気を引き締めていこうじゃないか」
「そろそろ気付かれる距離に来たんじゃない? 準備するとしようかな」
「ウロボロスも頼むぞ。『
もう手札を隠しながっら戦っている余裕なんて必要ない。
とにかく勝ちにこだわって進んでいくのみ、俺の勘違いでなければ今はもう終盤戦。ここからの失敗は取り返しのつかないミスになるような気がするので、王国騎士団が人間だろうが何だろうが、『女神』のマジの力を宿した時点で化け物確定なんだから使える手札を存分に使わせてもらう。
聖国ではアイシャ、公国では勇者、帝国では何やらコソコソ動いている奴らがいるようだが、一旦そこは置いておいて……王国は俺という世界各国で巻き起こる終わりにむけた戦争、まずは第一戦に勝たせてもらわないとな。
「今更だけどイデアとウロボロスが前に出るの珍しく感じるな」
「後方支援のほうが能力的にも得意そうだからって誰かさんが言ってるからね」
「……何でもこなせるイデアさん素敵です」
「『
「『
「誰かさんが隠しておきたいって言うから遠慮してるの間違いじゃなくて?」
「……つまり全部俺のせいって話?」
「さすが我らの魔王様だね」
こんな最前線で戦争が始まるってのに、相変わらずウチの面々は偉大なる魔王様を弄り倒すのをやめないのを見ると、この戦いも緊張してるのは俺だけっぽいのが悲しいもんだ。
イデアのことだから俺の緊張をほぐすために言ってくれてるんだと思うので、ここは主である魔王としても仕事をしっかりこなしていきたいところだ。
砦がかなり見やすい位置にまで近づいたところで、お相手さんも気付いたようで巨大なライトが上空を照らしている。
――ウゥゥゥゥゥゥゥッ!!
警報が鳴ったので完全に気付かれたようだ。
ファンタジー世界から急に現代チックな感じになったことに、なんだか感じることもありつつ、俺とイデア、そしてウロボロスは各々の魔力を放出する。
「まずは開幕戦……確実にとらせてもらおうか」
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