第20話 天翔ける『火焔』
――『罪の牢獄』 コアルーム
王国と公国調査、そして王国に乗り込む準備をスタートして数日。世界は俺の想像以上に無秩序に荒れ果ててきたように感じる。
むしろ魔王が完全に裏から支配している帝国が1番平和なんじゃないかと思うレベルで、他国の荒れ具合は人間たちからすれば勘弁してほしいレベルになってきている。
他国から逃げてくる様々な人種が帝国へとやってきた影響もあってか、戦争では無いにしろ帝都でも色々忙しそうな問題が多数起きているようだ。
「……そこらへんは任せるしかないな」
帝都にはミネルヴァや帝国騎士団の残り、ガラクシアが洗脳した人間だったりと問題に対応していける戦力はいるので、あまり気にかけすぎると自分の問題に対応できなかったりしそうなので、俺は王国と公国に目をむけることにする。
王国と公国に目を向けたいところだが、今1番四大国で目立っているのは聖国であり、気付けば戦乱の中心になりそうなほどなので、さすがに目を離せない。
目を離せないとは言っても、問題の中心にいるのはアイシャなので、あまり気にしすぎても仕方ないって感じがするんだけどな。
「……俺が知ってる魔王って感じだな。愛火の性格的にあそこまでやるのかって思うけど」
聖国に居る者全員に1人で喧嘩を売るようなやり方で、聖国征服を行っているアイシャ。最早魔王単騎としての戦闘能力は最強クラスであるので、超火力超範囲をもってして聖国を『黄金の火』によって焼き尽くそうとしている。
ご丁寧に自分のダンジョン付近から燃やして尽くしているようで、敵対した者は綺麗に炭にされ、アイシャの燃料となっていっており、多くの人間たちは堂々と「聖国全土を燃やし尽くすまで止めりません」宣言をしているアイシャの恐れを抱いて他国へと逃げている。
影から国を支配するとかではなく、表立って国を我が物としようとするアイシャの姿勢。力による国獲りは大変だろうし、他魔王や冒険者たちを黙らせたところで、そこから巨大な国をどういう形にしていくかってのも大変になってくるだろう。
まずはアイシャの行為を見て、今まで聖国で活動してきた魔王たちが黙っているはずもなく、どんな形であれ巨大な争いが起こるのは確実なはずだ。
「勇者だろうが、冒険者だろうが倒しに来いやスタイルね。このほうが俺やプレイヤーたちみたいな、別世界から来た人間たちの魔王像に近いかもな」
ピケルさんもアイシャに手助けをしているようなので、アイシャは自分のコアの守りを気にせず国を燃やしに行けているせいか、凄い勢いで制圧しているので、他魔王との大乱戦も近そうだ。
俺は王国に喧嘩を売りに行き、ついでに公国の様子をチラ見する予定だったけれど、アイシャが聖国でドンパチするのなら、しょうじき観ておきたい気持ちがある。頑張って我慢するように言い聞かせているけど…。
「まだ愛火って保証は無いんだけど、戦力的にもアイシャとピケルさんを失うのはデかすぎる。そこまで過保護になる必要があるかと言われれば無い気もするけど……誰が動くか分からんしなぁ……」
今のアイシャが負けるような相手は本当に一握り、又はとんでもない物量作戦を仕掛けられた時だと思う。物量作戦に対しては、単騎で火力と広範囲をカバーできるアイシャなら戦えるだろうから、余程じゃないとアイシャが倒されることは無いはずだ。
問題は個の力でアイシャを凌駕してきそうな相手たちだ。残った『
「今の勢いのアイシャを止めたいと思う戦闘狂がいそうなんだよな。……まぁ王国のほうに集中しよう」
女神の第2拠点とも言える王国、何やら女神の加護のようなモノを生まれながらに授かっている血筋があったり、凄まじくタフな騎士団長がいたりと面白そうな戦力が揃っている王国。
帝国のアルカナ騎士団のような個性に溢れすぎた能力者軍団ではないが、騎士としてのフィジカルと基礎で叩き上げたパワー系が揃っているそうなので、そこらへんは今まで通りの能力押し付け『初見殺し』戦法で突破していきたい。
もし、リンさんの言う通り『七元徳』が生き残っていて、またまた戦うことになるのであれば、さらなる天使たちへの対策をしておかなきゃいけない。
相手は俺たちと1度戦った記憶があるであろう可能性を考えて、こちらも動かないと痛い思いをするかもしれないからな。
「ん~……なんかこういうの考えるの楽しいって思っちゃうあたり、なんだかんだ俺も魔物になりましたって感じするな」
『大罪の大魔王ルシフェル』なんていう大層な存在になってしまった。日本でこんな名前名乗っていたら大笑いされていただろう。
ルシフェルと言えば確か堕天使的なやつだった記憶があるんだが、何故俺には飛べる機能が無いのであろうか……御大層なスキルがたくさんあるんだから、せめて飛べる力も揃えておいてほしかった。そうすれば俺の行動範囲が広がって色々考えれるようになるのにな。
王国騎士団と女神の手下、冒険者や王国に居る魔王たち……王国に居る魔王たちは俺のことを避けてくれるかもしれないなんて思ってはいるが、さすがに俺みたいな若僧に王都を落とされるなんて、さすがにプライドが許さないだろうから敵対は確実、どうにか王都でグチャグチャ騒ぎにして負担を減らしたいところだ。
「……改めて東雲拓真って凄いな。とんでもない数相手に、ほとんど単騎で無双してるんだもんな」
俺みたいに驚くほど強い配下たちがいてくれるのではなく、己の体1つで公国にいる『星魔元素』の魔物の軍勢を相手に無双することができるってのは、本当に人間っていうカテゴリーに入れて良いのか迷うレベルだ。
拳で幾多の魔物を粉砕していく姿は、ちょっと恐怖を覚えるレベルだったし、もしかしたら戦っていた世界線があったかもしれないって考えると……やめておこう。
そんなこんなを考えていたら、コアルームにポラールがやってきた。
「ご主人様……聖国の空が真紅に染まっているようですよ。女神信仰の国から灼熱の国に変わりつつあるようですね」
「本気出したら天変地異の中心地になる系魔王になったのか」
「植物も枯れ果て、川や湖も消えて火山の国にでもなりそうだとイデアが言っていました」
「『神炎』の魔名を得てパワーアップしたらしいけど、そんなレベルまで行ったのか」
本当に俺が考える魔王に1番近い存在になりつつあるアイシャ、なんとなくだが、このまま圧倒的なパワーをもって聖国を征服する気がする。
俺もアイシャが作った波に乗って王国を打ち負かせてやりたいところだな。
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