第18話 『真実』を掴みに


――『罪の牢獄』 コアルーム



 『神狐の魔王リン』さんによるお遊戯会を無事終えることができた。

 あまりに衝撃的なことが多すぎて、なんだか体調が悪くなってきた気がするが有益な情報をいくつか得ることができたので良しとしよう。


 『化ける』能力……リンさんたちが言っているだけで、本当に化ける能力なのか不明だが、メルが本気を出すまで騙せていたって考えると、さすが最強魔王候補の陣営って感じがしたな。俺たちのやり方と似たような感じもしたし……。


 本物のリンさんは容易に姿を現さず、今まで会ってきたのは大抵配下の玉藻の前だったってのも凄い。メル感じ取った感想だと、かなりのやり手のようで面倒くさそうという感じだそうだ。



「『星魔元素』に関する情報と対策のまとめは……イデアたちに任せて、俺は王国方面だな」


「王国に行く理由が増えましたね」


「元々覗きに行く予定だったけど……公国と一緒に攻略しなきゃいけなくなったな」



 公国にいる『星魔元素』に、どっかに隠れているとは思っていたが、やはりまだ残骸が残っていた『七元徳』は王国に居る。

 しかも、王国は第2の女神信仰拠点として裏で動いている場所でもあるそうなので、確実に『女神』の情報もゲットできるだろう。


 帝国はルジストルやラプラス、それにピケルさんに任せておいて、聖国はアイシャ、公国は東雲拓真……そして王国は俺だな。



「俺のいた世界でアニメとかに出てくる王国ってラスボスってイメージ無かったんだが……まさか王国がラストステージ候補になるなんてな」


「勇者を除く女神に関連した多くの者が集っていますね」


「プレイヤーに『七元徳』の残骸、女神の加護を受け続ける血筋……あんまり1人で行きたくないなぁ」


「あまり触れてこなかった場所ですからね」



 デザイア・イデア・ガラクシア・メルの情報収集のスペシャリストたちで王国の情報を集めてもらっているので、実際に行くとなれば事前準備は完了している段階になるんだろうが、今まで王国には触れる機会が多くなかったので未知の状態だ。


 厄介な魔王が出てくる可能性は大いにありうるし、女神本体がこんにちわしてくる可能性だって無いとは思えない。

 女神に関して言えば、『七元徳』に勝利したことで戦う権利を得られたのでやり得るんだが、さすがに東雲拓真が『原初』に挑む同じタイミングで仕掛けたいのが本音だ。



「ご主人様が出し惜しみ解禁をしてくださったので、私たちも好き放題できるので、私たちとしましては楽しみですね」


「俺も魔物になったんだから、そのアグレッシブル精神欲しかったよ」


「今まで以上に味方との距離感に気を付けなければいけませんが、好きに暴れても良いと言うのは……良いモノですね」


「まだ3人しか本気モード見せてないけどな」



 今までもそんなにも惜しんでたつもりは無かったんだが、さすがに『七元徳』もだったが、正面から『初見殺し』要素を含めながら捻じ伏せるだけのパワーがないと、結局戦いに勝てないレベルに来ているからの本気モード使用許可だ。

 下手をしたら『大罪』の力同士で殺し合いがスタートしてしまう可能性はあるけれど、さすがにそこまで不注意なウチの面々じゃないはずだ。


 不意打ち+初見殺しで大抵の敵を討ち破ってきたが、さすがに対策もされるだろうし、同じようなことをしても上手く対応されそうなほどに研究されてるはずだ。


 俺がリンさんの技にまったく対応できず、普通に関わりをもっていたのと同じように……このレベルだと全員相手を初見で嵌める術を持っているんだと思う。

 最強魔王のクラウスさんなんか、正面からパワーで捻じ伏せる王道タイプらしいので、そこと張り合えるってところ見せていきたい。



「まだまだ……戦うことに尖らせる必要があるよな」


「ご主人様が尖らせることが出来たら……さらに我々は強くなれますね」


「……つまりは特訓の時間であると?」


「そういうことですね」


「……なるほど」



 全魔王の弱点。

 どれだけ配下が強くても、どれだけ万能な力を持っていても、魔王が死んでしまえば全ては終わりである。

 今まで頑張ってきたことも、創り上げてきたダンジョンと迷宮都市も、俺に期待してくれた人たちの想いも全部無意味なモノになってしまう。


 これだけの配下がいれば、正直怠けたくなってしまうものだが……ここはゲームであってゲームじゃない……本物がかかったゲームの世界。



「最後に頼ることになるのは自分ってことだな」


「その通りです。阿修羅に五右衛門、アヴァロンが待っています」


「毎度毎度やる気に漲っている面々だな」


「ご主人様が強くなったことで楽しくなってきたのでしょうね」


「ポラールは?」


「……楽しくないと言えば嘘になります」



 ウチの面々は仲良しで助かると新米魔王の時から思っていたが、さらに仲良しな感じになってきたなと感じる。

 一応『罪の牢獄』の主であり、大魔王の1人としてやっている俺のことを、戦闘時には出来ない連携でイジメてくることが増えてきたのだ。

 特に俺が戦えるようになってから、ストレス発散を俺でしてるんじゃないかってぐらいの扱いを受けているように感じる。


 戦闘の良い経験になると言えば聞こえは良いが、この前だってイデアに遠距離戦でタコ殴りにされたり、バビロンのスケルトンの嵐に飲まれたりとやってられない。



「……でもやっとかないと真実に辿り着く前に野垂れ死ぬ可能性があるんだよな」


「どんな経験も何かしらに繋がると信じるのが1番だと思います」


「……なんて真面目な魔神なんだ」


「時間稼ぎは終わりにして……行きましょうご主人様」


「……南無」



 すんなりとここまで来ることが出来ていることは奇跡だと思い、この先は簡単には行かないってことを、しっかり刻んでおかなきゃいけない。

 命のやり取りであることを忘れず……どんな形であれ勝つことを絶対にして向かって行けば、ウチの面々ならば掴み取れるはずだ。


 『女神』と『原初』に拳骨食らわしてやるところまで、割と近い距離まで来ることが出来ているはずだ。

 少しでも手札を増やしておくためにも……歩みを止めないようにしなくちゃな。



「行くとしますか」


「はい」



 ……痛いのは嫌だよなぁ。

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