第11話 『火焔皇の魔王』
――ゴゴゴゴゴゴッ!!
『火焔皇の魔王』。
ドラグノフたちを『生命の炭』により自身の進化の糧としたことで誕生した新たなな『魔名』を得たアイシャ。
存在するだけで圧倒されるような灼熱の魔力を発しているので、正直火の力をもっていない俺からすると、近くに居るだけで息苦しいし暑すぎる。
『神炎』の魔名を持つメビウスですら圧倒している存在圧。
『焔』が授けることのできた真名持ちたちを糧にしたことで誕生した『火焔天』、相当なリスクだっただけに見合うパワーはありそうだ。
「気付けばボロボロ……まったくだな」
色々やっている内にボロボロになってしまったので、ここから始まる灼熱のタイマンバトルに巻き込まれないように逃げておくのが吉だな。
こんなにもボロボロの焦げまみれになると思わなかったので、できれば2度と火の魔王と戦いたくない。
闘技場に灯っていた『侵略の火』がアイシャの強化された『黄金の火』によって飲まれ掻き消されていく。
この『火』の力関係が魔王両者の力関係をそのまま表しているように見える。
「『
「君たちは一体どうなっているッ!? 『
淡々と『
僅か1年と少しで自分たちを超えていった俺たち2人の存在は、我慢ならないくらい嫌な存在なんだろう。
『原初の魔王』と『女神』が創り出した世界の歴史では、こんなぶっ飛んだ速さで強くなっていく存在なんて、勇者ぐらいしか存在しないはずだったんだからな。
先程の管理時に判明した『再誕の火』による火がどこかに残っていれば、そこから何度でも蘇ることのできるメビウス。
しかし、アイシャの『黄金の火』は今や全てを消し飛ばさんとばかりの勢いで力を増してしまっている。
(これが優秀とされる元素の力を持つ魔王……『火』の頂点)
俺の『大罪』と真逆であるシンプルな力。
小細工や初見殺しによるパワーではなく、正面から堂々と敵を破壊し尽くせる王道の力。今のアイシャからは正面から戦うことが怖いと感じさせてくる凄みがある。
『火焔皇』の力はわからないけれど、この感じだとシンラの『火』に対する守りすら貫いて破壊してきそうな雰囲気がある。
以前よりも遥かに魔力のこめられた『
「まずは火の頂き……我が手中に納めさせてもらいます」
「小娘が……少し強くなった程度でッ!!」
――ゴウッ!!
『黄金の火』である『
『黄金の火』と『再誕の火』が互いを飲み込み合うが、完全に敵を燃やし破壊することに特化した『黄金の火』がメビウスを押している。
アイシャの剣撃で『
「はぁぁぁぁぁぁッ!!」
「『鳳凰烈風ッ!』」
――ドシャァァァァンッ!!
ただ『
距離は少しでも空けようとスキルを発動するもアイシャの爆発的な推進力を前には無力と言った感じで、アイシャの速度は落ちていない。
気付けば闘技場内は『黄金の火』一色に染め上げられている。
同じ系統の力だからこそ、明確に出てしまう単純な力の差、先ほどまでは逆とも言える立場だったのに……『生命の炭』の恐ろしさが改めてわかる。
――ボゴッ!!
アイシャが地面に『
闘技場内で燃え盛っていた『黄金の火』たちが、さらに勢いを増して燃え上がり、眩い輝きを放ち始めた。
完全に仕留めに行くのであろうアイシャの眼差しと魔力の高まり。
アイシャの魔力が天に浮かぶ闘技場全体に勢いよく広がる。
――ゴウッ!!
「『
「はッ!? あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?」
『黄金の火』の輝きが闘技場を完全に照らし包み込んだ瞬間のことだった。
メビウスの胸のあたりが突然『黄金の火』が発火して勢いよく燃え広がっていく。『火』の魔王であり、『再誕の火』で構成されている『
地面に転がり回り、苦しみの声をあげながら『黄金の火』によって輝く灰へと変わっていくメビウス。
「ヤバすぎだろ……指定型広範囲貫通攻撃」
もし無差別に『黄金の火』によって燃えるのであれば、確実に俺も巻き込まれていただろうから、今の『
『黄金の火』によって内側から燃やすスキルを手順をそこまで踏まず、淡々と発動させたアイシャに少し怖さを感じた。
特に最後の一言もしゃべらせてもらえず灰にされたメビウスに同情しながらも、特に感動も喜びも見せず、胸に手をあてて何か祈るように目を瞑っているアイシャに近づいてみる。
「……とんでもない竜王様だったな」
「…そうですね。私をまた頂へと近づけてくれました」
「『火焔天の魔王』か……随分とカッコいい名前になったもんだな」
「カッコよさに拘るのはソウイチくらいです。今度も窮地を救ってもらい助かりました。私の想定が甘すぎました」
「『火』殺しの魔王だったんだから仕方ない。そのための『生命の炭』だったんだろ?」
「まだまだ甘いですね……私は」
アイシャを初期から支えてきたドラグノフ、本当ならば最後まで傍で支えたかっただろうに、アイシャの強くなりたい負けたくないって思いを尊重し、『生命の炭』の効力もしっかり理解した上での自らを差し出すという選択。
改めてアイシャの立場になっても、ドラグノフの立場になっても俺では真似できない行為だ。
結果だけ見れば『火焔皇』っていう凄まじい力を持った魔名を持つ魔王になれたわけだが、リスクを見てしまう俺には選べないやり方だ。
「これでも……ソウイチに追いつけないのが悔しいです」
「タイマンバトルしたら危なそうだけど……俺は配下ありきだから」
「『大罪の大魔王』を名乗っておいて、その自信の無さは良くありませんよ。多くの魔王から目標となる存在なのですから胸を張ってください」
「『火焔皇』になって性格も少し熱くなったか?」
「我が最強の竜の魂が宿っているからかもしれません」
『破王鬼の魔王ゴウキ』はなんとも呆気なく消えていき、『神炎の魔王メビウス』はさすがに『
アイシャが切り札を用意……というか、このタイマンバトルのルールによってはアイシャが敗北していたことを考えると危ないところだった。
こうして互いに強力な『魔名』を手に入れ、アイシャは『神炎』の『魔名』でさらに強くなれるようなので、EXまで至ることができるであろう。
「売られた喧嘩に勝てたし……戻るか」
「私はダンジョン守りを強化しなくてはいけないので忙しくなりそうです」
とにかく……アイシャが愛火だという証拠は得られなかったが、そうだろうという考えは強くなったのと、ちょっかいかけてきそうな奴に勝つことができて、なかなか良い時間になったなと言う感じだな。
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