第7話 火の『祭り』
タイマンバトル開幕の合図とともに、弾丸の如く突っ込んで来る『破王鬼』。巨体を存分に活かした突進は、まさしく破壊の権化と言えるだろう。
ルシフェルになる前の俺だったら反応しきれずに粉々だったかもしれないけれど、今ならば少しだけ余裕がある。
『罪の魔眼』を発動させ、同時に『美徳』の力も行使する。
「灯れ『
「アチィッ!?」
自身の体力が残っていれば残っているほどに全てが強化される『美徳』、戦闘開始の万全状態でこそ力が発揮できる『
火そのものが生きており、ステータスを有する特殊な『生きる火』を展開できる『
衝撃波を撒き散らしながら、突進してきていた『破王鬼』は『
「テメェも『火』使いの魔王だったのかッ!? どいつもこいつも面倒な餓鬼どもがァ!!」
「『
火だるまになりながら暴れる『破王鬼』に追撃でスキルを放つ。
自分の体力が少しでも削れる前に『
大型の狼の形へと変化した『
――ドドドドドドドッ!!
「ぐおぉぉぉぉぉぉぉッ!?」
「ぐおぉぉぉぉぉ……で済むのかよ」
凄まじい火力で爆破と燃焼によるダメージを受けている『破王鬼』をじっくりと観察してみる。
赤黒く肥大化した皮膚は焼け爛れているが、なんと凄まじい再生力で焼かれたり、抉れたりした部分から超再生していっている。
こっちの火力と変わらない速度で回復できる脅威の脳筋デか鬼ってことか。
継続ダメージ型の火じゃなくて、もっと直線的に破壊出来る火で勝負すべきだな。
「我が胸に宿れ『
「ぐおぉぉぉぉぉッ!」
――ドシャァァァァァァァンッ!
『生きる火』から『破壊の火』へ、『
闘技場の壁に吹き飛んで勢いよく雄叫びを上げる『破王鬼』の次の動き観察できるように眺めておく。
頑丈な肉体と凄まじい再生力、巨体でありながら俊敏で加速力もある。肉弾戦に長けていて一撃のパワーで相手を破壊して追い打ちをかけて仕上げていくスタイルであろう。
別に予想の範疇だから驚くことでもないけど、『
――ドンッ!
「ガァァァァァァッ!」
「『
――ゴスッ! ドドドドドッ!
勢いよく突進してきた『破王鬼』に対し、小回りで勝りながら立ち回れる『
大ぶりの『破王鬼』の攻撃を避けつつ、『破壊の火』を撃ち込んでいく。『破王鬼』の皮膚が少しずつ爆散しながら粉々になるが、超速再生で攻撃を食らいながらでも大振りのアクションを仕掛けてくる。
痛覚はあるんだろうが……高速拳打でも怯みもしないのは恐ろしいな。
「うざいんだよォォォォォォッ!!」
「うおッ!?」
――オォォォォォォォォォッ!!
咆哮による全方位への衝撃波。
強制的に距離を空けさせられる。きっと俺の戦闘スタイルに激怒してるんだろう……たぶんどんな戦い方しても怒ってきそうだけどな。
ステータス的には勝っているんだと思うが、あの再生力が面倒だ。燃やし尽くせば大丈夫かと思いきや、『美徳』の火と競ってくるなんてな。
咆哮をあげた『破王鬼』の身体から滲み出る怒りに染まり切った闘気。
『破王鬼』の周囲の空間を歪ませるほどに濃厚な闘気は、闘技場の空気をさらに重くし、戦いが激化するのを予感させた。
「『
「フゥー……どいつもこいつも『火』ばかりで鬱陶しい。『暴酔鬼拳』」
俺がこんなのにも戦えることに対する疑問は特に考えていないようで、ただただ『火』による継続ダメージに対してムカついている様子。
俺は拳に『破壊の火』を纏わせ、『破王鬼』は禍々しい闘気を腕全体に纏わせる。
「『
「ガァァァァァァッ!!」
――ドシャァァァァァァァンッッ!!
当たり前のように正面から突っ込んで来る『破王鬼』に対し、4匹の『
燃え盛る火龍と戯れている『破王鬼』を確認し、俺は全力で力をチャージしていく。さすがの『
熱風も爆発も炎上も気にせず、ただ正面に来たものを破壊し尽くす『破王鬼』、こっちのスキルもしっかり壊しにくるのは、やっぱり鬼らしいとも感じられる。
俺の頭上に1mほどの火球……小さな太陽が出来上がる。
そんなことお構い無しと言わんばかりに『
全然最大チャージではないが、十分だと信じるしかない!
「死ねェッ! 『
「消し飛べッ! 『
――ドゴォォォォンッ!! ドドドドドッッ!
勢いよく向かってきていた『破王鬼』に『
火球如きに止められんと言うような勢いで、『破王鬼』が『
凄まじい爆風に対し、俺も全力で後ろに下がるが間に合いきらずに巻き込まれて吹き飛ばされてしまう。
地面を勢いよく転がりながら、燃焼と爆発を繰り返している爆心地を見る。
「ぐおぉぉぉぉぉッ!?」
――ドガァァンッ!
まさしく大炎上する闘技場中心部って感じの光景が広がっていた。
燃え広がり爆発し、新たなに火球を作り出しては、また燃え広がり爆発するを周囲の全てを燃やし破壊し尽くすまで終わらないスキル『
最大チャージすれば、最初の爆発で相手を消し飛ばせるレベルだったとは思うが、さすがにそこまでの威力は出せない。
だけども、今見てる感じだと十分な威力だったようだ。
「再生が追いついてない……俺の『
あまりにも尖り切った『破王鬼』の性能に驚かされる。
あの燃焼と爆発の繰り返しの中で灰になりかけながらも藻掻いている。さすがに全身の再生は間に合わないようで、もう少しすれば完全に消滅して終わるだろう。
『破王鬼』が馬鹿正直に突っ込んで来るタイプで助かった。
1撃でも攻撃をもらっていたら、俺は瀕死になるような組み合わせだから、色々策を立てられていたら怖い戦いだった。
「あっちも始まってるだろうし……どんな感じだろうか?」
別の闘技場で行われているであろうアイシャと『神炎』のタイマンバトル。
ここから行くこともできるが、飛行するにはスキルを使わなきゃいけないので、疲れた俺かは気配を探るだけにしておこうと思い、目を瞑り集中して気配を探ると……何故かアイシャの気配を自分の上空に感じた。
「はい?」
「『
目を開けると、そこには『黄金の火』の大波が俺に襲い掛かってきていた。
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