第5話 心温まる『会話』
――『罪の牢獄』 居住区 食堂
「閣下のことをルシフェル様ァー! とお呼びしたほうがよろしいですか?」
「ニヤニヤしながら馬鹿にするのやめろ……元々名前でなんて呼ぶタイプじゃないだろうか」
「これは失礼致しました。せっかく陰で練習しておりましたのに」
「俺ばっかり性格悪い扱いされているのが気に入らないな」
「閣下は性格が歪んでいるのではなく、性根が歪んでいるのですね」
「俺強くなったから、お前のことぶっ飛ばせるぞ?」
「なるほど……『大罪の大魔王』様はか弱き魔物をいたぶって楽しむと」
「この野郎……」
『罪の牢獄』ぶっちぎりの煽り性能の高さ。
報告と今後についての話をしようと思って呼んだら、この煽られようである。本当に俺のことを魔王だと思っているのか不安になるレベルの口の悪さだ。
ルジストルと開幕から心温まる会話に笑いをこらえながら、真面目な話を展開していく。
「俺がアークから離れることが期間的にも長くなるかもしれないが……大丈夫そうか?」
「質の良い冒険者も多いですし、メル様の分裂体にイデア様の創造なされた化身たち……それにデザイア様が産み落とされた存在も含めれば、相当な守りを展開できるどころか一国を攻めれます」
「そこらへんは最終兵器だからな。カノンやソラたちが居れば人間の襲撃は余裕をもって対応できそうだな」
「アークに来るより、帝都に来ることを想定しておくべきだと思います」
「帝都を拠点にして大軍勢で攻められたら面倒か?」
「面倒かどうかではなく、アークのブランドに関わる話ですね。アークは安全な街であるという宣伝に傷がついてしまいます」
「……なるほどね」
アークが各国や多くの魔王から大群で攻められるような可能性があることすら、アークにとっては損になるって話か……。
『破王鬼』とのタイマンもすんなり終わりそうな感じはしないし、公国と東雲拓真の戦いも簡単には終わることはないはずだ。
個人的には王国が悪さしそうだなと睨んでいる。
東雲拓真の一喝で少し引っ込んだが、東雲拓真が公国で忙しくなるとまた出てくるはずだ。王国からすれば今の状況は四大国統一を目指すなら絶好のチャンスだからだ。
今までは1番大人しいイメージのある王国だったけど、大事なところまで静かにしてる奴ってのは、大抵何かしらビックリな秘密があるだろうしな。
「こっから先は本当に怖いからな。『七元徳』にも殺されかけたし、把握しきれてない敵が多そうだしな」
「閣下の中では『女神』の本体はどちらにおられると思いますか?」
「聖国じゃないってのが分かったから、消去法で王国だと思うんだけどなぁ」
「『原初の魔王』は公国、『女神』は王国にいるということを前提に動くということでよろしいのですね?」
「あぁ……大穴でなんとか学園にいるって線も考えたけど、さすがにそこまで考えたくない」
「私の予想では『原初の魔王』は帝都だったのですがね」
「その線はまだ可能性あるから嫌なんだよなぁ」
アルカナ騎士団は取り逃しが実は存在してるし、帝都にいた名のある人間の一部も行方不明だし……気にし始めると無限に可能性があるから困る。
帝国&公国が『原初の魔王』側、聖国&王国が『女神』側ってのは確定させてよさそうなので、それは確実に居場所探しの軸にしてよさそうだ。
まずは『破王鬼』に勝って、アイシャも『神炎』に勝ってもらうのが大事だ。
「閣下が『破王鬼の魔王』に敗れる可能性は極僅かでしょう。正直『神炎の魔王』のほうはどうでもいいですね」
「正直すぎるだろう」
「あまり他者ばかり気にかけていると、足下掬われますよ……閣下」
「自分の新しい能力の把握も、『破王鬼』との戦闘イメージやら、阿修羅との模擬戦も良い感じだ」
ルジストルからしたら、俺とアイシャの関係なんて気にすることでも無さそうだから、とにかく自分の心配をしろってことなんだろう。
少し前までだったら大嫌いな肉弾戦型の『破王鬼』だったが、俺が進化したおかげで余裕をもって戦えるようになった。
得意距離は中距離戦だが、『美徳』のおかげで接近戦も自信をもって戦っていけるようになった。
どうせ観戦されるなら……俺自身も戦えるってところを魔王界に見せておきたい。
「実際閣下はどのレベルで強いのでしょうか?」
「ん~……かなり相性バトルなんだよなぁ。単体ってより誰かと組んで戦うのをメインとしてる能力構成になってるからな」
「『罪の牢獄』の戦闘こなせる面々とは全員相性が良いと聞きました」
「フェルやアマツとも相性良いな。今後はその2人と前に出ることもメイン戦略として考えれるレベルだ」
「なるほど……閣下が戦えるようになったのは、かなりのメリットと見て大丈夫そうですね」
「基本的には戦いたくないんだけどな、これだけの戦力だし」
「その考えで正解だと思います」
「命は大事にだな」
「そんなことより閣下……面白い話をもってきましたよ」
「最高に気持ち悪い笑顔しながら言うな」
ルジストルとの心温まる会話。
大抵、どこのどいつに地獄を見せてやろうかだったり、最高に性格の歪んだ戦略の話になるので、俺的には楽しいのだが……周囲からは冷たい目で見られるので、さすがに場所を考えようと思った俺であった。
◇
――『罪の牢獄』 闘技場
『破王鬼』とのタイマンバトルも直前に控え、俺の能力の最終確認に阿修羅とポラールに付き合ってもらっている。
『
そしてアヴァロンが自力で何かしらの条件で『
「若との模擬戦が楽しくなったのは……やはり心躍る」
「私と阿修羅の近距離戦に慣れれば……今後近距離戦の対応に困ることは少ないと思います」
「本当助かったよ。力の幅が知れたし、どんな展開がやりやすいかも把握できた。『破王鬼』とのタイマンは大丈夫そうだ」
「阿修羅より強い鬼だと大変なことになりそうですが」
「そんな鬼存在しないよ。ウチの阿修羅が最強の鬼だ」
「……最強の名に恥じぬようにせねば」
ゴリゴリの武闘家の2人との模擬円は『破王鬼』をイメージした部分が大きい。
この2人よりも近距離戦に優れていた場合は絶望が待っているのだが、防御面もかなり調整できたので……攻守で敵を驚かせる準備は万端だ。
『七元徳』との戦いでは無様だった『
まさか魔銃ってのがここまで難易度の高い武器だとは思わなかった。
「さて……どっちが餓鬼でミンチになるか思い知らせてやらないとな」
「その意気ですご主人様」
『破王鬼の魔王』とのタイマン。
餓鬼だのミンチにしてやるだの言われたんだ。言われっぱなしじゃ嫌だからな。
『大罪の大魔王』、もう大魔王の位まで来たんだ。堂々と前を進んで立ち塞がる者を全部薙ぎ払っていこうじゃないか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます