9月30日書籍発売記念外伝⑤ 『力』
圧倒的な力による蹂躙劇。
『狂乱のハイオーガ』が1体で魔王戦争を終わらせる勢いで破壊していた中での、一瞬の逆転劇。
『大罪』の力を手に入れたガラクシアとポラールが呆気なく戦争を終わらせてしまった。
観戦していた魔王たちは、配合に上手くいって逆転したんだなと思っただろうが、ステータスを間近で感じれるリーナは言葉が出なかった。
(魔王界でも秘中の秘であり……トップ魔王しか配下に出来ていないEXランクの魔物が……まさか新米魔王に……)
魔王界のバランスが完全に崩壊してしまった。
先ほど主とソウイチが話し合ってきたことを聞いた感じ、『原初の魔王』という世界の神のような存在ですら予期してなかったあまりのバランスブレイカー。
そして早くも、この世界について疑問を持ち始めている疑い深さと鋭さ……一気に監視という任の難易度が跳ね上がってしまったことにリーナは不安を覚える。
主にもらった魔王戦争の報酬で魔物とダンジョン拡張を確実にこなしてはいる。
自分は頭良くないからダンジョン運営だとか、迷宮都市とかは誰かしらに投げたいと嘆いていたが、EXランクの魔物がいれば大抵のことは簡単に済んでしまうので、もう止まることはないだろうとリーナは予測する。
魔王戦争を終え、戦争の報酬を確認し、新たな魔物たちの能力を確認しながらリーナはソウイチと話し合う。
「あんまり知られ過ぎると面倒なことになりそうだな」
「先の戦争から目をつけられていると思います」
目立ちすぎること、強大な力を持つことの危険を速くも想定することできている立ち回り……この性格だと自分が異質の存在であることに気付かれるのも遠くないと感じてしまうリーナ。
そんなリーナを置いて、勢いよくやってきたミルドレッドと喜びを分かち合うソウイチを見ながら、ソウイチが歩もうとしている道について考えるリーナ。
(長所短所が尖りすぎた『魔名』、魔物界の頂点であるEXランクが2体……そして相性の良さそうな師……主がある程度目にかけているとは言え上手くいきすぎていますね)
特にEXランクの魔物は驚愕だ。
目の前で喜びあっているミルドレッドですらEXの存在は知らないはずであり、ソウイチの性格的に余程信頼しなければ明かすこともない情報だ。
『大罪』の力はソウイチを見た感じ、状態異常付与に特化するタイプになるかと思いきや、単騎戦闘特化の殺戮マシーン型の魔物にする『魔名』であることが知られてしまえば、全ての魔王が『大罪』を狙うことは明白。
ソウイチは目立たなければならないときは、とことんやるタイプだが……必要ないときは目立たないようにコソコソ悪巧みするタイプだとリーナは思っているので、そこは安心できるポイントである。
「……上手いですね」
ミルドレッドに色々質問されているソウイチを見て、思わず呟いてしまうリーナ。
教えても問題無い情報を大事な情報みたいに語り、肝心なことには絶対に触れない話のもっていき方……楽しそうに話をしているのに、かなり警戒して話をしている。
とんでもない曲者だとリーナは評価する。
気付けばダンジョンの展開について意見を聞いているので、ダンジョン構造について……DEを効率的に獲得できるダンジョンへの改造は手早くやりそうな雰囲気ではある。
(……見られている)
ソウイチとミルドレッドが心温まる会話をする中、リーナは冷たい視線で自分を見つめるポラールと目が合う。
身内にむける視線では無く……何か思うところがあるのであろう視線。
ソウイチがリーナを完全に信用していないのを理解し、身近にいながらも立ち回りを観察してくる警戒度の高さ……しかも、わざとリーナに警戒していることを理解させて動きづらくしてくる厄介さに対し、リーナはすぐにでもこの場から離れたい気持ちになってくる。
リーナから見て、ガラクシアとポラールの戦闘能力は魔王界で、すでにトップ中のトップと言っていいほどの力を持っている。
単騎での戦闘能力は最強クラスなので集団戦になる魔王戦争では最強とはまだ言えないが、今回のような配合の奇跡が今後も続くのであれば……主の元に辿り着くのも遠くないどころか、割とすぐなのではないかとリーナは考える。
(この『大罪』の注目度……次狙われるのは『師』になりそうですね)
魔王界のトップ層が『大罪』に目を付けた時……まず師であるミルドレッドに何かしらの接触があることが考えられる。
『狂乱のハイオーガ』を一蹴した程度では気付かれないかもしれないが、すでにガラクシアとポラールに目を付けた魔王たちが早々にミルドレッドに接触する可能性は大いにある。
そうなった場合、ミルドレッドの武での抵抗は目に見える光景だ。
(本当に……魔王界に嵐を起こす存在になってしまいましたね)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます