第27話 『遥か先の未来まで』


 阿修羅とデザイア&ニャルのおかげで『七元徳』に良い感じのダメージを与えることができた。

 阿修羅とデザイアにして異常な耐久力と言わせる『七元徳』には、さすがに驚いたが、なんとか状態異常を付与することで優位に戦いを進めることができている。


 『七元徳』の目に宿る闘志がある内は何が起きるか予想できないのが恐ろしい。



「あまりにも『大罪』の魔物たちが強すぎますね。しかも本気で無いのが驚きです」


「ガラクシアとアヴァロンが激怒しとったもんじゃから、この空間から抜け出せば味わえるぞ」


「……とんでもないことになってるんだな」



 俺が跳ばされてから、色んな意味で戦場が大波乱な展開が巻き起こっていたようだ。ガラクシアとアヴァロンが本気を出した姿なんて模擬戦でも無いから見て見たかった気持ちはある。


 アヴァロンとデザイアがいて、当然のように能力発動ができていた『七元徳』を見て、これからの戦いのことも考えさせられる。



「魔物は正反対だったが、『魔名』の戦闘スタイルは割と似てる部分が多かったのは正直助かった」


「……『大罪』についての考えが足らなかったようですね」


「終わりだ『七元徳』。『女神』への挑戦権はもらっていく」


「本来ならば許されぬことですが……主への挑戦権はもう仕方ありません。……ですが『大罪』に負けるというのは嫌ですね」


「俺だって負けるのは嫌だ。この戦いは素直に勝ったとは言えない内容だしな」


「主よ、申し訳ありません。此度の戦いは敗れました……しかし、次は必ず勝利してみせます。偉大なる『七元徳』の名に懸けて」


「いやいや、次があるわけ……は?」



――キィーーン



 『七元徳』の体が光の粉となって消えていく。

 『七元徳』の発言からして、死ぬ感じじゃなくて次もあるようなニュアンスに聞こえたんだが気のせいか?


 あまりの突然の出来事に阿修羅とデザイアも動けないでいた。



「主がこれ以上無様な姿を見せるのはお許しくださらないようです。ですが『七元徳』の魂は不滅……次は負けません」


「実は『七元徳の魔王』は複数体だったってことか?」


「そのうちわかります……貴方がこの道を進むなら、遥か先の未来で会うことになるでしょう」



 意味深な言葉だけ残して『七元徳』は消えていこうとしている。

 『女神』が負けが確実になったから、これ以上続ける意味が無いと思って『七元徳』を消したっぽいようなことを言っていたが、まだ勝負はわからなかったし、わざわざ消す意味も理解出来ない。


 これで『女神への挑戦権』を獲得したわけだが、なんともモヤモヤの残る魔王戦争になったもんだ。

 完全に不完全燃焼だし、裏があるようにしか感じない……考える中でも嫌な終わり方をしてしまったのかもしれない。



「……2度と会いたくないな」


「……その油断がこの先仇となりますよ」


「……どういう意味だ?」



――ピキィンッ ドシャァァァァァァンッ!



 光の粉になって消えていくかと思いきや、突然光り輝きだし、凄まじい爆音とともに衝撃波が俺たちを襲った。








――『罪の牢獄』 コアルーム



 『大罪』と『七元徳』の魔王戦争は謎が多いまま終わりを告げた。

 『大罪』の勝利で終えたはずなのに、戦争終了後から『大罪の魔王ソウイチ』の姿が確認されていない。『黄天の秤』に跳ばされてから、コアで映し出せてもいないのでどうなったかはソウイチとアクィナスしか知り得ないものだったのだ。


 アクィナスのダンジョンは、アクィナスが敗北し死亡したことで消滅し、聖都は大混乱で統制がとれていない。


 魔王戦争終了から5日が経過したが、未だにソウイチは顔を見せず、魔王界では未だ謎に包まれた魔王戦争として話題になっている。



「ご主人様を眠らせた原因は爆散した『七元徳』……この面子でそこまでのことしか5日で探れないのは厄介ですね」


「生きておるが……ずっと眠りについておる。何かしらの要因で目が覚めるんじゃろうが待つしかあるまい」


「デザイアがどうにも出来ないなら、おとなしく各々の持ち場に集中するのが1番だね」



 『罪の牢獄』のソウイチの部屋、ベッドで眠るソウイチを前に語り合うのは、ポラール・デザイア・イデアの3人。

 魔王戦争の最後、『七元徳』からの不意の大爆発に対し、阿修羅とデザイアの防御スキルが間に合い外傷がなかったかに思われたが、何故か眠ってしまったソウイチ。


 幸いなことに、魔王戦争を観戦していた者たちには知られていない情報なので、ソウイチが居ないことを悟られないように必死に魔物たちだけでダンジョン運営に励んでいる成果も合ってか、誰にも知られていることは無い。


 『罪の牢獄』にいる誰の力をもってしても、『七元徳』がどうやってソウイチを眠らせているのかも理解できず、いつまで眠っているかも予測できない不安な状況。



「ここで動揺して『罪の牢獄』を危険に晒しては、我々の存在意義に関わりますので、絶対にご主人様が戻っても安心できるような成果を出しますよ」


「あの戦争を観戦して襲ってくるような阿呆どもは、すぐにはおらんはずじゃがのぅ」


「冒険者の方は問題無いしね。あの最強勇者が何かあって攻めてこない限り問題無さそうかな」



 『黄天の秤』での情報以外は、しっかりと他魔王に見られていた。

 ソウイチがアクィナスに跳ばされてしまったことで、ガラクシアとアヴァロンの本気の一部が知られることになった。

 まさしく無双ともいえる圧巻の力に魔王界は、もちろんの如く沸いている。


 今のソウイチの評価は最強の魔物たちを従えし魔王。

 ソウイチ本体が弱くとも従えている魔物たちが強すぎるので、現時点で敵う魔王は存在しないとまで言われるようになった。



「デザイアと阿修羅の情報を共有させてもらいましたが、自らに配合を行い……真なる魔王になられましたから、ともに戦うのが楽しみなのですが……」


「主のことじゃから、自分が前に出て戦うのは嫌がりそうじゃがのぅ」


「銃の扱い練習してからじゃない?」



 この後は『魔王八獄傑パンデモニウム』同士の戦いが控えているので、どうにかしてソウイチには目覚めてもらわなくてはいけないが、策がないので待つことしかできない状況。


 圧倒的な力と謎を多くの魔王に焼き付けて終えた魔王戦争。


 乱れる聖都をきっかけに世界の均衡は崩れ始め、世は戦乱の時代へと幕を開けようとしている。

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