第26話 『修羅降臨』
コアを外部である『罪の牢獄』から何の問題もなく呼び出せた。
もしこれが他の能力にも当てはまるなら、確実に通用すると思い、とりあえず地面に弾丸を撃ち込んだ。
「『
――キィーーンッ
「……どうなっとるんじゃ主」
「1発で2体判定……さすがデザイアだよ」
「魔物がどうやってここにッ!?」
弾丸を放った場所に『大罪』能力持ちの魔物を召喚する俺の必殺スキル『
もっと早くに気付けばボコボコにされることはなかっただろうが、過去を恨んでも仕方ない。
ちなみにデザイアを呼んだのは、デザイアを呼べばニャルもついてくるだろうし、1日3発が限界の『
外からの手法には滅法強いけど、内からの手法には弱いのは『大罪』と同じってところは、さすが『七元徳』の力だ。
「主が別者になっとることは置いといて……妾はアレをやればええんじゃな」
「誰か呼べそうか?」
――ドシャッンッ!!
俺の正面の地面が吹き飛ぶ。
先ほど俺のことを吹き飛ばした『
俺の油断に対しての『七元徳』の差し込みに対する、デザイアの瞬時に仲間を呼び込む判断の速さと行動の神速さ……俺が今まで甘えてきたってのがよくわかってしまうやり取り…。
「……なんとなく状況は把握した。若……後方支援を頼む」
「何の力が働いとるか解らんのじゃが……妾でも1体しか呼ぶことができんかったぞ」
「……『黄天の秤』の力が完全に効いていない?」
俺が配合に成功したときと同じような動揺を見せる『七元徳』。
デザイアにニャル、そして阿修羅も居てくれるならいつも通り後方で悪巧みして戦うことができる。
そう思うと安心してしまったのか、身体から力が抜けてその場に崩れ落ちそうになる。
――ガシッ
「……助かったよニャル」
「……随分ボコボコにされたもんじゃ。阿修羅‼ 妾は主を治療するがどうする」
「若に手を出してタダでは済まさん……巻き込まんところにしてくれ」
「さすがに離れすぎて支援できんとこまでは行かんからのぅ」
ぶっ倒れそうになったところをニャルに支えられ、そのまま後方へと転移してもらう。
少し目が血走って理性を失いかけているように感じるが、ここは阿修羅に任せた方が良いのかもしれない……が、ここで任せっきりでは結局いつもの俺のやり方だ。
せっかく自らを配合し、『大魔王』になったんだから、覚悟を決めて俺も最後まで戦いきりたい。
それに、俺の能力は単騎で戦うことを前提だった『大罪』の力に無限の可能性を与えることのできる力だ。
「阿修羅、デザイア……『七元徳』は俺もやる。1人じゃ無理だったけど、俺の新しい力は皆が居てこそだ。『
「ふむ……主の見た光景を共有でもしておくのが妾の仕事じゃな」
「若の道を切り開くッ! 『
「『
――ドシャァァァァァァンッ!!
阿修羅の特大の斬撃と、俺の上からの弾幕は見事に防がれてしまう。
その間にデザイアが俺が跳ばされてから起こったことを阿修羅に一瞬の『夢』を見せることで共有してくれる。これで俺の新しい能力が阿修羅とデザイア&ニャルに大体把握してもらうことができた。
前までなら阿修羅とデザイアがこんな距離感で戦うなんて考えられなかったけど、『大いなる罪たちは星を目指す』によって可能になっている。
体感だが3人くらいだったら一緒に戦っても問題なくやれそうな感じはある。
「『
「『
「『罪の魔眼』」
「ッ!?」
――ドシャァァァァァァンッ!!
阿修羅の斬撃の嵐、デザイアの異界へ取り込もうとする触手の大群による間髪入れぬ怒涛の攻め、そしてその隙をついてようやく『七元徳』と目を合わせることができた。
『罪の牢獄』状態の俺と目の合った『七元徳』の身体に濃い青色の魔力が纏わりつく。
目が合えば『大罪』の状態異常を1つ付与できるのが『罪の牢獄』の強み、そしてあの魔力色はメルの『
「厄介なモノをッ!」
「どんな状態異常か理解するの速すぎるだろッ! 『
――ドドドドドドドドドッ!!
相手に付与されるときの『
自分に使う予定だった補助スキルや防御スキルも全て俺に発動してしまうことになる。デメリットもあって、攻撃スキルが全部俺へのホーミングになるのが大変危険ではある。
遠距離攻撃と鉄壁の守りを誇る『七元徳』からすれば、とんでもなく厄介な状態だろう。なんてったって『
阿修羅とデザイアの嵐のような攻めの中に、『大罪』の状態異常が付与されている相手に対して大ダメージを与えることのできる砲撃の弾幕『
――ドドドドドドドドドッ!
「『
「これではッ!?」
――グシャッ!
『
守りのスキルも迎撃スキルも全部が俺にむかってしまう状態だったので、スキル無しで阿修羅を防がなければならなかったのだが、さすがに難しかったようで阿修羅の拳を受けた『七元徳』はついに地についた。
「ゴホッゴホッ!」
「化け物みたいな耐久力」
「さすが最強魔王の1体だな。最強の基礎ステータスと耐久値」
「……それにしても主は強くなったもんじゃな。阿修羅に合わせるほど強くなるとは思わんだ」
「死にかけたからな」
阿修羅の奥義の1つを受けても吐血で済んでいるあたり、ウチの魔物たちとも比べても遥かに高い耐久力。
もし俺が阿修羅とデザイア&ニャルを呼べていなければ、どんなに強くなろうと俺のポテンシャルでは届かなかったであろう鉄壁の守り。
これなら確かに俺とタイマンするために全て仕込もうと考えつくのも納得だ。
「犠牲はいるが、戦場全対応の逆転移、どうせ神熾天使たちの復活能力もあっただろうから、魔王とコア、どっちも仕留めるルートをとれる戦法」
「戦術面では主の負けじゃったな」
「若より上手いやり口だった。ポラールが冷静だったおかげで向こう側も上手くやれていた」
「妾が見た感じでも3~4人ブチ切れしておったがのぅ」
「はぁ…はぁ……まさか配下を弾丸と入れ替えで召喚する術を習得するなんて」
「自分を配合するのは最終手段かつ博打だった。それに呼べなかったら配合しても勝てなかった実力差だったからな」
「若、まだ終わりじゃない」
『七元徳』がゆっくりと立ち上がる。
その眼には、まだまだ闘志が宿っており……この戦いが終わらないことを意味していた。
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