第25話 『明けの明星』
――ドドドドドッ!
魔王の頂点……その一角である者同士の戦い。
それがまさか『魔銃』と『大弓』による遠距離戦になるなんて思ってもいなかった。
俺は自らを配合した結果得たメインウェポンが『
配合して外見的には腕と服装が少し変わったくらいで、動きに支障が無いのだが、戦いのセンスが無さ過ぎて絶望している。
「銃弾が当たらんッ!!」
「逃げてばかりでは狙いが定まりませんよッ!」
『七元徳』の圧倒的手数に苦戦し、ただでさえ銃の扱いが素人の俺の攻撃は当たることなく、そして俺のややこしい能力による攻防のバランスに対し、攻め手にかけている『七元徳』という拮抗した状態。
互いに遠距離のメインウェポンに、自身の周囲に展開できる自立型の遠距離スキルなので、互いに弾幕バトルになり、互いにダメージを喰らわないことに重きを置いた結果の戦況である。
『大罪』能力持ち魔物への圧倒的なバフと、状態異常を付与させてからの展開がメインの俺と、『美徳』能力持ちの天使への圧倒的バフと、鉄壁の守りと遠距離の手数がメインの『七元徳』。
どちらも決定打の無い展開。
――ドシャァァァァァァンッ!!
「くそッ! スキルを試す隙も無いのかよ!」
「戦えない魔王だったとは思えない身のこなしですが、時間の問題ですよッ!」
『罪の魔眼』で視認したことで、『七元徳』の状態異常耐性は最低値まで落ちているので、1発クリーンヒットさせれば戦況は一気に傾くのだが、あまりにも守りの性能が高すぎる。
『聖天奏機』の手数と『天上の聖弓』の1撃の威力に少しずつラインが崩されているので、このままだと俺がやられるのも確かに時間の問題だが、そう簡単に負けるような者じゃないってのを教えてやらなきゃいけない。
何が面倒かって、スキル名すら詠唱しないせいで『七元徳』がどんな手段で鉄壁の守りを展開しているか理解ができていないってことだ。
「『美徳』のスキルは完全把握されてるから使えないし……まずは上から崩すかッ!」
―バァンッ!
「目線で撃つところがバレバレですよ」
「……そういうテクニックもあるのか」
とりあえず飛んでいる『七元徳』の頭ぶち抜くつもりで撃ってみたが、当たるどころか丁寧にダメなところを指摘されてしまった。
だが、『七元徳』の頭に当たらず空高く進んでしまった弾丸があることに意味があるから失敗ではない。
俺は弾丸にこめていた魔力を解き放つ。
――パリンッ!
「『
弾丸が内なる魔力で爆発を起こし、そこから地上へ降り注ぐのは大量のガチャカプセルたち。
それぞれの『大罪』の魔力が付与されたカプセルが『七元徳』目掛けて飛来していく。速さは無いけれど、数が多いのでどれか1つでも直撃すれば、そこから崩していける可能性が高くなるスキルだ。
天より降り注ぐカプセル群を前に、『七元徳』は少し冷めた表情で淡々とスキルを放つ。
「『
――カンカンカンッ
「ズルすぎだろ」
降り注ぐ『
『
困った顔をしているだろう俺を見て、満足げに『七元徳』は余裕たっぷりな感じで問いかけてくる。
「この壁は私が指定した条件に当てはまるモノしか通過できませんが、条件はわかりますか?」
「自分の能力教えて大丈夫か?」
「全部教えている訳ではありませんし、そこまで困った顔を見られるならやぶさかではありません」
「良い性格してるよ」
「お互い様ですね」
条件を満たしていない全てを拒絶する鉄壁のスキル『
俺に最高の主人公補正があれば、覚醒したら敵をボコボコにできたはずなのだが、残念なことに絶賛大苦戦だ。
『
どうにか条件をクリアして『七元徳』の守りを突破するのが正しい道なのかもしれないが、そんなことをしていたら体力がもたないので、どうにか裏道を見つけて突破したいところだが……。
「防御型と状態異常型の不毛な戦いになってきてるな」
「『
「はッ!?」
――ドシャッ!!
急に正面に巨大な拳が出現して殴り飛ばされる。
気絶するんじゃないかと思う激痛、あまりに急な攻撃でまったく反応することもできずに直撃をもらってしまった。
吹き飛ばされながら、追撃がきてないことだけ確認し地面に転がる。
「しゃべった後、一々考え事をするフェーズに入る癖はやめたほうがいいですよ?」
「……この世界に来て……初めてこんな血出してるかも……」
さっきの左腕みたいに身体のどこかが欠損してないことを感覚で確かめながら起き上がる。
完全に不意をつかれた一撃で瀕死まで追い詰められるとは思わなかった。普通のスキルじゃなくて、確実に条件で威力が激増するタイプのモノだろう。
弓を構えてないから、そこまでの攻撃はこないと、どっかで思い込んでいた俺の落ち度だから仕方ない。
「それにしても……考える癖を今更修正しろってのは難しいな」
「次は確実に死にますよ?」
「同じ技は2度は受けるつもりは……ないな」
――バァン! バァン!
とにかく『
足を止めれば打ち抜かれるなら、とにかく止まらずに攻撃を続けるのが今は得策。
魔力は無限大にあるが、体力的な問題があるので最悪、一か八かの『
「コアを呼び出して自らを配合したときは驚きましたが、そこがピークだったようですね」
「……俺もコア呼び出せなかったらどうしようかと思ってたよ。……ん?」
コアは元々『罪の牢獄』にあったのに……この空間に呼び出すことができた。
『七元徳』の話では、デザイアやポラールの力をもってしてでも、外部からこの場所に来るのは難しいほどの空間なのに、コアはあんなにも簡単に呼び出すことができた。
これは試す価値がありそうだ。
「大逆転の一手になってくれよ」
――バァン!
俺は地面に1発の弾丸を撃ち込んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます