第23話 『魔物の王』
――『黄天の秤の間』
「はぁ……はぁ……まるで大人と赤子の喧嘩だな」
「先ほどまでの『大罪』の魔物と、私の天使たちのような差ですね」
『七元徳』の『魔名』を見せてもらい、じっくり見ているフリして『七元徳』に『
『
そして現在、ボロボロになりながらも一命はとりとめており、『七元徳』に遊ばれている状態である。
とにかく気合で少ない魔力を充填するしかない。
「ふぅ……遊んでる余裕みせていいのか?」
「アッサリ殺しては私の気が治まりません。好き放題した報いを受けるべきです」
「日頃の行いが悪すぎたか……」
「因果応報と言いますから」
「嬲り越した記憶は無いんだけど……」
完全に歯が立たない。
面白いくらいにボコボコにされている。とんでもなく手加減してもらっているおかげで、単騎最強候補魔王と俺の『大罪』の力の差……何がどう壊されるのかよく理解出来た。
色々やってきた分、俺が泣き叫んで許しを請うまで嬲るつもりなんだろう。
一応奥の手が無いわけじゃないけど、失敗した瞬間にゲームオーバーなので、かけに出るしかない状況。
「凄いな……本当に助けが来ないもんだな」
「『大罪』の規格外たちでも難しいでしょう。もし来れたとしても時間がかかりますよ。これは女神の権能の1つですからね」
「なるほど……俺も必殺技をやるしか無いってことか」
「それは楽しみですが、本当にあるのですか?」
「試したことないけど、一応出来るつもりではいるな」
「搦め手で戦う『大罪』が何を魅せてくれるか気になりますが、魔力溜めを悠長にしていると必殺技ごと殺してしまいそうです」
そろそろ殺しますよ宣言をいただいた。
実はここに転移させられて5分少々くらいしか経過してないような感じだったんだが、割と短時間でご満足いただけたようだ。
その余裕な顔を崩すためには必殺技が成功しなくちゃいけない。
確実に後悔させてやる……転移させた直後に即殺しなかったことをあの世で後悔させてやらないとな。
「最後に質問良いか?」
「どうぞ」
「魔王って『魔物』の王……つまりは俺たちは魔物にカテゴリーされた存在だと思うか?」
「貴方は人間と同じ肉体なので疑問に思うのかもしれませんが、私たちは間違いなく魔物に属している者です。あまり気持ちの良い話ではありませんが……」
「俺もこの世界に降り立った時に魔物カテゴリーの存在になったってことか」
「それがどうかしましたか?」
「確信と覚悟が決まった。さすが天使の長様……本当に助かる」
「今溜めている魔力は先ほど見た『停滞』させる魔力のはずですが、スキルを止めれても10秒も防げませんよ?」
「まぁやってみなきゃッ!?」
――ボトッ
無駄話が過ぎたのか、『七元徳』から鋭い殺気を感じた時には、俺の左腕の感覚は無くなっており、やってきたのは……のた打ち回りたくなるような痛み。
しかし、こんな状況だからこそなのか……思った以上に頭がクリアになり冷静に物事を考えようと頭が回っている。
回っているだけで痛みで正常じゃなさそうなんだけどな……。
優しく微笑む『七元徳』の動きを見ながら、地面に転がっている左腕を拾い上げる。
「なかなか苦痛に満ちた顔をしていますよ」
「左腕が千切れた衝撃に絶賛感動中なんだよ」
「その軽口が招いた痛みであることを学んだ方が良いかと思います」
「無駄口と軽口厳禁ね。俺の性格上難しそうだな」
――ブワッ!!
充填していた『
数十秒間は俺も『七元徳』も互いに攻撃を届かせることは難しい状況を作りだすことが出来た。
『七元徳』の顔を見てみると、それがどうしたって顔をしているので、解除後に即殺すれば良いくらいに思っているんだろう。
俺は左腕を落とさないように気を付けながら、先ほど『七元徳』に渡したモノと同じ『大罪』の『魔名』、それに先ほど受け取った『七元徳』の『魔名』、そして『魔眼』の『魔名』と、俺の左腕を自分の前に浮かせる。
「な、何をしているのですか?」
『七元徳』の疑問に満ちた質問も時間が無いので無視。
成功を祈ってやるしかない。とにかく『
最後にダンジョンコアを呼び出す。
きっと来てくれるだろうと信じてる。
『確認:配合対象を選択してください』
「やっぱり来たなッ! 記憶取り戻したの最近だけど、楽しかったぞ俺の人間生活。そして頑張ろう魔物生活ッ!」
1.魔名カード 『大罪』 ランクEX
2.魔名カード 『七元徳』 ランクEX
3.魔名カード 『魔眼』 ランクS
4.聖魔物 『大罪の魔王ソウイチ』の左腕 ランク???
記憶を取り戻した俺的には、まだまだ人間感覚な魔王生活。
魔物の王であり、俺自身も魔物だと言われてもピンとこず……とりあえず魔王だけど人間の気持ちでやってきたが、これで完全に自ら人であることをやめる。
昔から人間っぽいと言われてきたが、これで人間らしさすら失ってしまうのだろうか?
画面をタッチすると、配合物たちが俺の身体に吸い込まれていく、
何度も見たことのある光が俺の身体から溢れ出す……と同時に激痛が俺の身体を駆け巡る。
(身体の内から爆発しそうな魔力を抑えきれないッ!?)
『確認:超変異が起こりました。配合を続けます』
――ゴウッ!!!
「『停滞』の力を全力で撒き……自らを配合する。魔王自身が配合なんて聞いたことがありませんし……まさか可能だったなんて」
「不安だったから一応確認したんだ。魔王は『魔物』なのかって」
激しい痛みと眩い光が治まり、正面で驚いている『七元徳』にいつもの軽口を言い放ってみる。
自分に感じる凄まじい『力』と、『七元徳』からも感じる凄まじい『力』。
やっと同じ土俵に立つことができたってことだ。
「分の悪い賭けは大成功……後は全力でぶつかるだけだな」
「確かに先ほどまでとは比べ物にならない力を手にしたようですが……私を舐めないでください」
『大罪の魔王』と『七元徳の魔王』
命をかけたタイマンで……この魔王戦争に決着をつけてやる‼
と思ったが、まだ『七元徳』のほうが強そうなので、どうしようか考えなければならなさそうだ。
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